--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1220 (2017.02.17)

Q. さあやさんからの疑問

 ローカルテレビのCMで気になることがあります。
 ここ数年、弁護士(?)のCMが多くなっている気がするのです。最初は「弁護士のCMなんて珍しいな」なんて思っていたのですが、最近では珍しくも何ともありません。ラジオのCMだともっと頻度が高いかもしれません。
 そのCMの内容は借金の返済がどうたら、過払い金がどうたらというのがほとんどです。
弁護士のCMが増えているのには、何か私の知らない事情があるのでしょうか? 教えてください。

そういうCM、何度か見聞きしたことがあります。詳しい事情をご存じの方、ぜひ!


A. やまおさんから

 弁護士のCMが増えているのは、世の中、もめ事やトラブルが多いからです。
 特に、お金のトラブルが増えているということです。

A. ミオパパさんから

 2006年まで、個人貸付に「グレーゾーン金利」というものがありました。これは当時の上限金利29.2%とする出資法と利息制限法の上限金利の違いによる金利差のことです。
 2006年に行われた裁判によって、グレーゾーン金利で発生した利息分は無効と判断されました。
 この後、出資法の改正が行われ、上限金利が利息制限法とほぼ同じになりました。これによりグレーゾーン金利で発生した利息分を返済している場合は、債務者の「過払い金」として、返還請求することが可能になりました。
 貸金業者のグレーゾーン金利での儲けは凄まじく、2001年、最大手の消費者金融業者の経常利益は2300億円を計上し、日本全業種のなかで9位にランクされました。
 また、消費者金融業者だけでなく、クレジット会社や信販会社もこぞって、キャッシング事業を展開し、おそらく大手クレジット会社でも当時の利益の半分から7割は個人貸付によるものであったと思います。
 法律的に過払い金の返還請求が可能になったとはいえ、個人が法人を相手に過払い金の返還を要求することは心理的にも、時間的にも困難です。
 たとえば、貸金業者は最初の契約時に利息制限法所定の制限利率を超える利率の利息を受領できるように旧貸金業法43条所定の要件を満たすように契約をしていました。
 これを「見なし弁済」といい、制限利率を超えても有効な利息の弁済があったものと見なすという合法な制度でした(現在は法律の改正により認められていません)。これを盾に過払い金の返還請求を拒否する業者もありました。 貸金業者への過払い金の返還請求が可能になったことや、個人が過払い金の返還請求を行うことが困難なことにビジネスチャンスを見いだしたのが法律事務所です。個人に代わって、過払い金の返還請求を法律事務所が代行するわけです。
 法律事務所は過払い金の返還請求をする人から着手金として無料か、1社あたり1万円から4万円、解決報酬金として1社あたり2万円前後、過払金報酬金として回収に成功した過払い金から20%程度を受取ります。
 過払い金の返還額は消費者金融大手4社だけで数千億円とみられていていますから、法律事務所が受け取る報酬も大変なものです。
 しかし、法律事務所は過払い金の返還請求をする人がいなければ、仕事になりませんので、テレビなどのメディアを利用して、「過払い返還請求しましょう」とCMを流しているわけです。これが、ご質問の「弁護士のCMが増えて
いる事情」への回答になるかと思います。
 話が少し変わりますが、司法試験は長年、日本の最難関資格といわれ、それに合格した弁護士は知的で華やかな職業に思えますが、近年は弁護士の人数が増えすぎて、弁護士の年収が激減しています。
 したがって、過払い金の返還請求は法律事務所にとっても渡りに舟という業務だったといえます。
 しかし、貸金業者の側から見れば「グレーゾーン金利」というち出の小づちを奪われ、利益が出たとして法人税を納めてしまった後に過払い金の返還請求を受けたわけです。だからどこも立ち行かなくなり、大手は銀行傘下に収まる
ことになりました。最後まで独立を保とうした最大手も、あえなく倒産してしまいました。