Q. ショウゾウさんからの疑問
毎朝BSで放送している『にっぽん縦断
こころ旅』という番組を楽しみに見ています。
番組の中では火野正平さんが自転車で日本中を走り回るのですが、時間の関係で自転車をバスや電車、船に乗せて移動することもあります。
私はこの番組で「輪行」という言葉を初めて知りました。そして、違和感を感じました。
「駐輪場」といえば、「自転車置き場」のことです。「輪」とは「自転車」を意味しているはずです。とすれば、「輪行」とは「自転車で行く」ことだと思うのですが、番組では「自転車を他の交通機関に乗せて移動すること」として使っているようです。
「輪行」という言葉のこの使い方は正しいのでしょうか? また、正しいとすれば、自転車以外の交通機関を使用しているのにどうして「輪行」というのでしょうか?
★この番組、ほのぼのしていていいですね。
では、「自転車で移動すること」を何ていうのかな?
A. 没食子酸さんから
「○行」は「○を使って行く」ではなく、「○のための旅」という意味でしょう。
「吟行」が「吟じるための旅行」であるのと同じように、「輪行」は自転車「を使って」旅行するという意味ではなく、自転車「を目的として」旅行する
ということだと思います。
A. ごんたさんから
「輪行」とは……、
・「自転車を他の交通機関に乗せて移動する」
ことではなく、
・「自転車といっしょに他の交通機関に乗って移動する」
と考えるのです。そうすれば使い方が正しいことを理解していただけると思います。
自転車を道具(=荷物)としてではなく、同行者とみることがその違いです。
バスや列車の場合だと、自転車を折り畳んだり、分解したりして小さくコンパクトにまとめた上に専用のバッグに入れて持ち込み、別料金を支払う必要があったのですが、最近はそのままの状態で持ち込んだり、料金を取らない路線もあるようです。
A. ヤコピさんから
もともと、「輪行」とは、競輪選手が次の競技会場に移動する方法の一つでした。
自転車を輸送して自分は別に会場に向かう方法に対して、選手が自転車と一緒に会場に向かう方法が「輪行」です。
その際、全行程を自転車で走るだけでなく、途中に、自転車を同乗させて船や列車を利用することもありますが、それでも、やはり自転車とともに会場に向かうので、移動方法は「輪行」であることに変わりはありません。
そして、本来は自転車は列車には乗せられないものですが、例外として、競輪選手が「輪行」に列車を利用する場合にかぎり、自転車を完全に袋に収納することで、車内への携行が許されており、このときの袋を「輪行袋」と呼ぶようになりました。
・「輪行袋」
「輪行」の際、自転車を車内に携行するための袋で、「輪行」しない場合には必要なし
行為の主体が競輪選手に限定されていれば、上記「輪行袋」の説明は妥当で、日本語としての違和感はないと思います。
やがてこの競輪選手だけの特例は特例でなくなり、一般のサイクリストにも認められるようになりますが、しかし、サイクリストが行為の主体になると、上記の説明がおかしなものになってしまいます。
サイクリストにとっては、全行程が「輪行」であり、するもしないもないのですが、既に「輪行袋」という名称は定着していて、販売業者もJRも「輪行」するには「輪行袋」が必要などと説明するので、いつしか、「輪行」は、
「輪行袋」が必要となる行為 =
列車内に自転車を持ち込むこと
となってしまいました。
JR四国:列車内への自転車の持ち込みについて
http://www.jr-shikoku.co.jp/02_information/kippu_info/kippu_sonota/cycle_jirei.pdf
サイクリストの間では、この使い方で正しいのですが、日本語の観点からは、質問者様の違和感はもっともだと思います。「携行袋」とでも呼んでおけばよかったのかもしれませんね。
★なるほど、元々は競輪用語だったのですね!
ウィキペディアには、以下のようにありました。
――競輪の選手が競輪場まで自走してレースに参加することを、自転車で行く=「輪行」と称していたことに由来する。
|