--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1244 (2017.09.22)

Q. もっち〜さんからの疑問

 私は、野球のルールが全然わからないということではありません。野球中継を見ていて、特に困ることはありません。
 しかし、あの「振り逃げ」というのがよくわかりません。バッターがバットを振って三振したタイミングで、キャッチャーがボールをキャッチできなかったら、バッターは1塁に向かって進むことができます。それはわかっています。私がわからないのは、その根拠です。
 私は、「振り逃げ」というのは、バッターランナーが1塁へ「盗塁」しているのだと認識しています。私の認識が間違っているのでしょうか?
「振り逃げ」がバッターランナーによる「盗塁」なら、どうしてスイングして三振したときにしか「振り逃げ」できないのでしょうか? 見逃し三振のとき、キャッチャーがボールを後逸したときなど、なぜ、1塁に向かってはいけないのでしょうか?
 もっといえば、どうして三振のときでないとだめなのでしょうか? キャッチャーがボールを確保できなかったときなら、いつでも走ってOKのような気がします。
 どなたか、「振り逃げ」というシステムがある根拠を教えてください。

私は、「振り逃げ」をしたことがありません。


A. 和宏さんから

 振り逃げについては以下の規則が根拠になっているようです。
「公認野球規則 5.05 打者が走者となる場合」の(a)の(2)に次のように書かれています。

  (A) 走者が一塁にいないとき、
  (B) 走者が一塁にいても2アウトのとき、
  捕手が第3ストライクと宣告された投球を捕らえなかった場合。

 補足すると「投球を捕らえる」とは、まだ地面についていない投球をミットか手で捕まえることです。したがって、バウントしたボールを捕まえても振り逃げを試みることはできます(通常はその場でバッターにタッチしてアウトにしてます。試合ではよく見られる場面です)。
 またバットを振る振らないは関係ないです。振らなかったときは何というのですかね?

A. 宇美浜りんさんから

 まず「振り逃げ」の基本を確認すると……、
「1塁にランナーがいない、または2アウトのときに(理由は後述)、キャッチャーが3つめのストライクを正確に取れなかったときにバッターは1塁に進める。ただしフォアボールのような無条件ではなく、自力で1塁に移動しセーフになる必要があり失敗したらアウトになる」ということです。

1.バッターが盗塁しているという解釈でいいのか
 位置づけはよく分かっていないようです。正式な野球用語ではなく俗称にすぎません。
 まだ日本が江戸時代末期だったころのアメリカの野球で、当時は現代でいう「三振」の概念がなく、今でいう「振り逃げ」に近い行為でタッチアウトを取られてはじめてアウトになっていたとも言われています。
 効率のよい試合運びのためわかりやすいルールを作っていき(そのなかに「キャッチャーが3つめのストライクを正確に取ったらその時点でアウトになる」もありました。現在の「三振」によるアウトです)、その中で生き残ったルールのようです。

2.どうしてスイングして三振したときのみ振り逃げ? 見逃し三振のときはいけないの?
 きわめて少ないだけで、見逃しでも振り逃げになることはあるようです。
 ただ、バッターが「打てるストライク」を見逃すことは少なく、意図的に見逃したときはボールになることが多いので、ほとんどの場合は結果として振り逃げにはならないだけ。
 打つのをあきらめて見逃したときは、見逃し三振からの振り逃げになることもありえます。

3.どうして三振のときでないとだめなの? 捕手がボールを取り損ねたときならいつでもOKではないのはなぜ?
 その場合、わざと振り逃げをさせて失敗を狙う可能性があります。取り損ねたとはいえキャッチャーのすぐ近くにボールがある、バッターにとってタッチアウトのリスクは打つときより大きく、守備側は有利なはず。
 しかし、打たずに進塁するのは異常なことであり、キャッチャーがボールを取ろうとしないのも異常なこと。互いに本来すべき仕事を怠けてるのですから。振り逃げありきの作戦を立てるべきではない。やはり「打って進塁が原則、振り逃げはあくまで特別な状況で許される例外的なもの」なのではないでしょうか。
 しかし3ストライクのときは、タッチアウトするより捕球で三振からのアウトにするほうが楽なのでわざと狙うことはないだろう、ということで認められているのでしょう。
 なお、1塁にランナーがいる状態で振り逃げをさせると簡単にダブルプレーを狙えるため、守備側がわざと振り逃げさせる可能性があり、それをさせないよう「1塁にランナーがいないこと、もしくはすでにツーアウトであること」という条件がつけられました。

4.振り逃げというシステムがある根拠は?
「キャッチャーはボールを取るのが仕事、それを失敗したもしくは怠けたことへの罰則として、進塁 のチャンスが与えられる」という考えがあるようです。サッカーにおけるペナルティーキックも、反則に対して相手が得点するチャンスが与えられます。
 さらに、振り逃げのチャンスは「キャッチャーがボールを取り損ねてから、バッターボックスのある円形の敷地からバッターが外に出るまで」です。外へ出た時点で進塁をあきらめたことになります。ということは「勝利をあきらめていないバッターに最後のチャンスを与える」という解釈もできます。
 この2つをあわせて考えると
「与えられた仕事をしないものをたしなめ、仕事の達成を最後まであきらめない者に激励をあたえる」という精神があるのではないでしょうか。

 最後に、振り逃げは解釈が難しく、プロ野球でも「今の状況で振り逃げが成立するか」でもめることもありました。1960年の東映vs大毎では1時間も試合が中断し、67年の阪神vs大洋では没収試合になっています(いずれも振り逃げした側の勝利でした)。プロでさえこうですから、ふだん野球をしない人にはよく分からないのも無理はないと思います。