--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1258 (2018.02.16)

Q. たかおさんからの疑問

 いつも楽しく読んでいます。「お」に関する疑問です。
 「お茶」「お客」「お尻」など、いろいろなものに「お」をつけます。同様に動物にも「お」を付けて呼ぶことがあります。
 しかし、「お猿」や「お馬」と呼んでも、他の動物に「お」をつけて呼ぶことはありません。かろうじて、綱吉の頃に「お犬様」と呼んでいたらしいですけど、本当にそれ以外に知りません。
 「お」を付ける動物は、どうして、猿と馬だけ特別なのでしょうか?

たしかに! 「お牛」も「お猫」も聞きませんね。


A. やまおさんから

 仏教の世界では、猿と馬は霊格の高い動物であり、食べない方がいいとされています。
 ここから猿と馬に「お」を付けるようになったのではと推測します。

A. 大森さんから

 猿と馬が日本人にとって「神聖な動物」だからだと聞いたことがあります。
 私は「神聖な動物」という考え方はよく理解できませんが、そこは譲ってそういう考え方があるとしても、なぜ猿と馬だけが神聖なのかがよくわかりません。
 しかし、たしかに、猿と馬以外に「お」を付けると強い違和感があります。この感覚は不思議でなりません。

A. Hoshiyanさんから

「お馬」や「お猿」の「お」は、敬語中の相手に敬意を示す尊敬語の接頭辞です。 馬や猿に「お」がつくのは日本では、それらが神聖な動物とされてきたからではないかと思います。
「神馬」や「天馬」という言葉があるように、馬は神が人間世界にやってくる際の乗り物として、神聖視されてきました。そうしたことから日本では古くから祈願のために馬を神社に奉納する風習がありました。この風習は現在でも続
いており、願い事を成就させるために絵馬を神社に奉納するのは、その名残です。実際に伊勢神宮、神田明神、住吉大社、日光東照宮など馬を飼育している神社は多数あります。
 駒形神社の祭神は、馬の神として日本書紀に登場する「保食神(うけもちのかみ)」であることが少なくありません。この保食神は死後、その屍の頭から馬が生まれたということで、観音信仰と結びついて馬頭観音とも同一視されているようです。
 もともと保食神は牧畜のほか、穀物などの農産物や蚕をつかさどる神であり、「産業の神」と見なされました。そうしたことから、こうした神社は分祀されながら身近な村の鎮守となったと考えられます。
 かつて、馬は関東や東北では、家族の一員のように扱われたことから、親は自分が神聖と考える馬を子どもに「お馬」と教えたことが容易に想像できます。
 一方の猿ですが、猿は馬の守り神であるという信仰は古くから存在しました。猿は馬の病を治したり、馬の世話をするなどと言われます。 こうした信仰はインドから中国を経て日本に伝わったようですが、日本に渡来すると、陰陽五行説と結びつき、馬は火、猿は水に相当するので、猿は(火災や病気から)馬を守ると説明されたようです。古くは厩に猿を飼ったり、猿の頭骨を吊るしたりして、馬の無事を願う「厩猿信仰」もありました。
 大道芸の猿回しは正月に厩の前で猿を舞わせて、馬の無事を祈願したことが起源です。また、日光東照宮の有名な三猿も、その神馬を守護するため「神厩舎」と呼ばれる厩の屋根の下に彫られたものです。
 猿は、このように馬の守り神であるとともに、時代が下ると猿そのものを神とするという信仰も生まれました。したがって、猿も神聖なものとみなされ「お猿」と呼ばれたのだと思います。他の動物にはこうした背景がないことから「お」を付けて呼ぶ動物は馬と猿だけなのでしょう。