--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1307(2019.10.18)

Q. はればれさんからの疑問

 ロダンの『考える人』は、とてもよく知られた銅像(ブロンズ像)です。
 私の思い違いではないと思うのですが、私は『考える人』を複数の箇所で見
ている記憶があるのです。しかも、日本国内で!
 これって、ロダンが複数の『考える人』を作ったということなのですか?
そっくりの像を複数作るってできるのですか?
 それとも、オリジナルを元に複製しているのでしょうか? そうだとしたら、
どうやって複製しているのですか?

うゎ〜、思いつかなかった疑問です。私も知りたい!


A. たつおさんから

 簡単です。
 ロダンのような彫刻家は、元になる1体の像だけを造るのです。この像は、木を彫ってもかまいません。粘土で作ってもかまいません。
 それができあがったら、石膏(じゃない場合もある)で像の型を取ります。型に銅を流し込めば、「銅像」のできあがりです。
 このようにして、同じような銅像が何体もあるというわけです。

A. Hoshiyanさんから

 フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの「考える人」は誰もが知っているブロンズ彫刻として、おそらく世界一有名な作品ではないでしょうか。しかし、『考える人』は、もともと単独の作品ではなく、『地獄の門』という作品の頂上に置かれているひとつのモチーフです。  
 この『地獄の門』は、ロダンが装飾美術博物館の門を制作するにあたり、イタリアの詩人であるダンテ・アリギエーリの『神曲』地獄篇という叙事詩に着想を得て、作られた大きなブロンズ彫刻です。
 雑学本などでは、『考える人』を地獄に落ちた者たちを裁判官が上から見おろしている様子を表現しているおり、「何も考えていない」と紹介されることもありますが、地獄の門の上で熟考するロダン本人を表しているなど、いくつかの説があります。  
 しかし、私はロダン自身があのモチーフを「詩人」と名づけていることから、思考するダンテを表そうとしたものであるという説を支持しています。  
 その『地獄の門』から「詩人」を独立させ『考える人』と命名したのは、ロダンの没後に、この作品を鋳造した鋳造職人のリュディエであるといわれています。  
 いささか前置が長くなってしまいましたが、『考える人』が複数存在する理由をご説明致します。  
『考える人』は世界各国に30体以上存在するといわれ、日本には7体あります。上野の国立西洋美術館と京都の国立近代美術館などは、どちらも屋外に展示されているので、「(大切に扱われない)レプリカなんだろう」と勘違してしますが、歴(れっき)とした本物といえます。
 なぜなら、ブロンズ彫刻の制作工程を大雑把に説明しますと、彫刻家が粘土などで原型を作り、その原型を石膏などで型取って、それに鋳造所の熟練の職人が金属を型に流してブロンズ像を制作しているからです。
 ということは、彫刻家は複数作品を作るための原型作家ともいえるわけで、ブロンズ彫刻自体は制作数を管理された(浮世絵の)版画制作のようなものです。したがって、ロダンの作った原型が壊れるまで、制作しようと思えばいくつでもブロンズ彫刻を制作することができることになります。
 しかし、ロダンの『考える人』を例に取れば、フランス国立ロダン美術館が管理し、フランス政府が法律で規制して今後、新しく12体までしか制作できないと定めているそうです。  
 通常のブロンズ彫刻家の場合、彫刻家本人が予めいくつ作るか決めておき、本人やしかるべき関係者、機関などが鋳造ナンバーを振って管理しています。なかには、フランス人のブロンズ彫刻家フランソワ・ポンポンのように遺言で、自分の死後に鋳造することを禁止していることもあります。
 ブロンズ鋳造には、職人の高い技術が要求されます。版画でいえば、彫刻された版木に色付けをして、紙に摺りあげて、作品を具現化する「摺師」にあたります。ですから、たいていの彫刻家には、常時、制作チームを組む鋳造所が定まっており、ロダンはアレクシスルーディエ鋳造所と組むことが常だったそうです。こうして、出来上がった作品を彫刻家がチェックし、気に入らない箇所があれば修正して、はじめて「エディション」と呼ばれる正規の作品となります。
 一方、彫刻家の死後に作られた像は「死後鋳造」と呼ばれ、本人のチェックを受けていない分、正規の「エディション」よりは価値が低いとされます。
 日本にある『考える人』7体のうち6体は「エディション」ですが、静岡県立美術館が所蔵する『考える人』は、この「死後鋳造」にあたります。

とてもよくわかりました。ありがとうございます。