最近は「Eスポーツ」などという違和感のあるネーミングが登場しました。しかし、この手の違和感があるものはもっと前からあります。そう、言わずと知れた「モータースポーツ」です。
スポーツと名乗れるものかどうかはさておき、もっと気になるのは「モーター」です。
確かに最近は電気自動車も見かけるようになりました。しかし、競技に使われている自動車の動力は、電気で動くモーターではなく、燃料で動くエンジンですよね。
それではなぜ「エンジンスポーツ」ではなく、「モータースポーツ」なのでしょうか? 「モータースポーツ」という言葉には「モーター」にも「スポーツ」にも抵抗を感じます。
★こういうのは、もしかしたら、「モーター」に広義・狭義の別がある場合があるのでは?
ガソリンエンジンが動力でも、自動車が
motorcar なので、自動車を使うスポーツは、motor
sports です。
まず、「モーター」という言葉の意味ですが、語源は、“moto”(動かす)+“r”で「動かすもの」で、原動機そのものや、原動機を備えた装置によく使われます。
原動機のエネルギー源に関わらず、たとえば、
原動機が付いた二輪車(オートバイ)……motorcycle
原動機が付いたボート……motorboat
そして、もともと台車という意味の
car も、原動機が付くと、motorcar(自動車)となります。
・自動車の展示会:motor
show
・駐車場:motor pool
・社会の様式が自動車化すること:mortarization
のように、自動車をmotorで表現することはよくあるし、そもそも、自動車の製造会社からして、○○motor/motors
という名称が多いです。
・GM:General
Motors、
・BMW:Bayerische Motoren Werke AG
・日産自動車株式会社:Nissan
Motor Co., Ltd
・トヨタ自動車株式会社:Toyota
Motor Corporation
・本田技研工業株式会社:Honda
Motor Co., Ltd
・三菱自動車工業株式会社:Mitsubishi
Motors Corporation
次に、それではなぜ、原動機がエネルギー源が電気ならば「モーター」、燃料ならば「エンジン」として使い分けられているかですが、それは、言葉の定義や概念による使い分けではなくて、動力源を表す言葉を省略したまま定着した結果です。
電動のモーターは、正確に言えば、electric
motor です。電動のタイプが多数なので、単に「モーター」と呼んでいるだけで、「モーター」という言葉が「電動」という意味を含むわけではありません。
また、エンジンも同様で、車その他に搭載される、燃料が動力源の原動機を呼ぶことが多いですが、「エンジン」が意味するものは、古くは、投石機を含む一連の城攻め装置(Siege
engine)から、現代の検索エンジンや翻訳エンジン、あるいは、電動エンジンにまで共通する、「機関、機構、処理装置」のような概念で、燃焼や燃料とは無関係です。
単に「モーター」「エンジン」と言われると、まず、動力源の異なる原動機が思い浮かぶので、その差こそ名称の定義だと思い込みがちですが、それは数の上からの偶然であって、本来は全く異なる概念です。