--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1330(2021.02.26)

Q. ひとピーさんからの疑問

 私が中学生の頃から、疑問に思っていることです。
 英語の単語で、what , who , when , where , why , which , whose は、「疑問詞」と呼ばれます。これらを見ていると、誰でも、疑問視は「wh-」から始まるという共通点に気がつくと思います。
 しかし、
how だけは、例外です。これだけは、「wh-」から始まりません。不思議です。どうしてですか?

Why?


A. ぱぱさんから

 現在使われている英語の歴史を遡ると、おおよそ5世紀から12世紀までの間にイングランド辺りで、使われていた古英語と呼ばれる言語に辿り着きます。
 この古英語のたとえば、「5W1H」のwhat、Who、when、where、why、how は(15世紀に活版印刷が発明されるまで、英語の綴りは適当だったので、正確ではないと思いますが)、 それぞれ、hwaet、hwa、hwaer、hwaet、hwuでした。
 正確な綴りは別としても、古英語の「hw--」と綴っていたものが、「wh--」のように「h」と「w」がひっくり返って綴られるようになったことが分かります。
 それがどのような理由で、そうなったのかは定まった説はないのですが、12世紀ごろにフランス語の綴り方の影響を受けたという説や、「wh--」の方が見た感じが良かったと説明されるなど、いくつもの説があります。
 ご質問の「なぜ how だけ、wh-- で始まらないのか?」の理由は、この綴りの入れ替わり現象から説明することができます。
 まず第一に how だけが、「hw--」ファミリーとは別の hwu という独立した単語だったようなので、「hw--」ファミリーと同じ運命を辿らなくても何ら不思議ではありません。
 さらにいうと、この hwu は15世紀頃になると、「w」が抜け落ちて、「hu」と綴られるようになっていたのです。つまり、そもそもが入れ替わり対象となる「w」がなくて、hwひっくり現象の影響を受けなかったといわれています。
 その後、その「hu」が「how」になった経緯までは知りませんが、やはりどこの言語であっても、それは生き物で時代とともに変化してゆくということでしょう。

A. Issieさんから

 日本語の指示詞には「こそあど」の体系があって、疑問詞は「ど−」で始まるものが多いけれども(古語では「いづ−」ですね)、そこに突然「なに」や「だれ」(古語では「たれ」)が現れて、その体系を乱すものが少なからずある。必ずしもその「体系」とやらが全てに通用する訳でもないとは、どの言語にもあることなのではないかと思います。あるいは遙かな昔の「祖語」の時代には体系が成り立っていたのかも知れないが、その後の数千年の歴史で差が開いてしまったのかも。
 英語を含めたインド・ヨーロッパ語族の場合、再建されている祖語までさかのぼれば疑問詞の多くは kw- のような音で始まるものであったようですね。なのでラテン語やその子孫のイタリア語やフランス語、スペイン語などでは疑問詞の多くは qu- で始まります。そして現代英語では wh- 。
 私は英語の専門家ではないのですが、取り敢えず手元の英語辞書に掲載されている “OE”(古英語)の形を調べてみると

   what ← hwaet
   who ← hwa
   when ← hwanne
   which ← hwilc
   where ← hwaer
   why ← hwi
   how ← hu
(古英語の綴りでは長音符(マクロン)が“hwa”や“hwi”、“hu”の母音字の上に乗っていたり ae が合字であったりするのですが,ここでは表記できないので省略します)

 いづれも “hw-” で始まりますね。“how” の元の形の“hu” は母音が u なのでそう綴る訳で、子音はほかの疑問詞と同様の hw- 系列に属するものとみなしてよいのだと思います。
 でもその後、現代英語に至るまでの過程で、ほかの疑問詞は wh- の綴りと発音(古英語の時代と同じではないけれど)を保っているけれども、“hu”はその後の発音の変化が反映されて “how” になった。
 結果として現代英語では “how” だけが疑問詞の系列の中で「例外」に見えるようになった……と、そういうことなのではないかと思います。