--- 素朴な疑問集 ---
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疑問No.1015 (2012.12.11)

Q. やまおさんからの疑問

「スコップ」や「シャベル」の日本語がありません。
 多分、日本でも、これらの外来語が入ってくるまでに、土を掘る作業をしていたでしょう。まさか、手で土を掘っていたとは思えません。
 なぜ、「スコップ」や「シャベル」の日本語がないのでしょうか?

広辞苑で調べてみましたら、「掬鋤(すくいぐわ)」とありました。
  そんな言葉、私は聞いたことがありません。
  スコップとシャベルについては、以前にも疑問がありましたね。

  
素朴な疑問 No.940 スコップとシャベル、それらの大小関係は?


A. moon-jellyさんから

 足を掛けて掘るタイプや重機に付いている物を「スコップ」や「シャベル」と呼びますが、園芸で使う片手で持つタイプは「移植ごて」と言います。若い人達には全く通じませんが……。
 多分「移植ごて」は幼稚園や保育園でも使うので、若い先生たちが外来語に変換していたせいだと思います。

「掬鋤(すくいぐわ)」にしろ、「移植ごて」にしろ、単なる「鋤(くわ)」「こて」じゃないんですよね。2次的表現ではなく1次的表現でぴたっとくるのはないのかなぁ?

A. 賢さんから

 一応、日本語訳としては「移植ごて」「踏み鋤」という単語があるにはありますが、あまり一般的ではありません。むしろ、「スコップ」「シャベル」自体が既に日本語と言えるでしょう。
 そもそも、外国由来の道具に日本語訳がないこと自体は、特に不思議ではありません。 たとえば「personal computer」は、日本語でも「パーソナルコンピュータ」(略して「パソコン」とは言いますが)と呼んでいませんか? 動物の「gorilla」だって、「ゴリラ」が日本語です。いかにも日本語風の訳語は一般的に使われていませんよね。
 それまで存在しなかった物体が名前と一緒に紹介されたとき、新しい単語を作らず、外国で使われている名前をそのまま使うのはよくあることです。
 日本由来の土を掘る道具としては、やはり「鋤」でしょう。
 ですが、用途が同じ「鋤」があるからといって、形状の違う「シャベル」や「スコップ」に「鋤」という日本語をあてるのは不自然でしょう。食べる道具だからといって「フォーク」を「箸」と訳すことがないのと同じです。

A. ごんたさんから

「掬鋤(すくいぐわ)」というのは、私も初めて聞きました。ネットで検索して出てきた画像を見ると「なるほど!」と思いました、農作業で使う鍬(くわ)の一種なんですね。方法は違えど土を掘り起こし、移動する道具なので同じ鍬の仲間としてそう呼んだのでしょう。
 大きい方が「掬鋤」なら、小さいほうは何?ということになりますが、これも探せばいろいろ見つかると思います。
 現在で通用している名称としては「移植ごて」というのがあり、昔から親がこう呼んでいたので私はこの名称に馴染んでいます。
 こて(鏝)というのは一種のへらのようなもので、園芸用の他にも壁塗りなどにつかう左官ごて、焼きごて(アイロン)やはんだごてなどの仲間があり、片手で持って使う道具の総称みたいなものだと思えばよいと思います。

ウィキペディアでは、「鏝(こて)」とは、「手で持って使用する先がとがった道具の総称」とありました。

A. 中嶋柏樹おさんから

「シャベル」や「スコップ」のことを、自衛隊や職業訓練校などでは「円匙(えんし,えんぴ)」と呼称しているようです。
 大円匙、小円匙、携行円匙と呼ばれ、携行円匙には折り畳めるものもあります。

A. きくちゃんから

 ミリタリーファンなら知っています。
 旧陸軍では「円匙(えんぴ)」という言葉を使っていました。陸上自衛隊もそのまま使っているようです。
 問題は、現在「スコップ」や「シャベル」と言われているものが、いつ頃から日本に存在したかです。
「スコップ」はオランダ語(「シャベル」は英語)であることから、安土桃山〜江戸時代にオランダとの交易で現物が持ち込まれたニオイがします。
 それまで、同種のものがなかったのなら、それを意味する日本語がなくても不思議ではありません。
 明治になって、旧陸軍は機械の部品など無理やり日本語にするのが好きだったようですので、「円匙」もその一つかもしれません。
 戦争中の「敵性語排斥」で、言いかえとして「円匙」が考案された可能性があるものの、私の感覚(実体験ではなく、いろいろな本を読んできて、という意味)では、もっと以前から「円匙」と言っていたように思えます。
 とりあえず、日本語では「円匙」です。

「円匙」ということは、「円い」「匙(さじ)」ですよね。
  わざわざ「円い」ということを示さねばならないということは、それまで日本で使われてきた「同様の目的を達成するための道具」は、平たかったということでしょうか? 誰がご存じの方、いませんか?

A. 子沢山さんから

 シャベルやスコップに当たる日本語は、「鋤(すき)」だと思います。
 鋤というと、先の部分(鋤先)が櫛状になったフォークのようなものが知られていると思いますが、実は先の部分の形はどうでもよく、平たい板状のものも鋤と言います。
 一般に、手で持つ柄に対して、先が一直線状、またはわずかに角度がある程度に付いているものを鋤、鋭角に大きく角度が変わって付いているものを鍬(くわ)と言います。
 先の鋤の例と同様、鍬も先が板状の平鍬もあれば、備中鍬のように先が櫛状になっているものもあります。
 また、石炭のだるまストーブなどに石炭をくべる際に使う、シャベル状のものは十能(じゅうのう)と言います。これは江戸時代の初期に考案されたもののようで、炭火を運んだり囲炉裏の火をかき起こしたりする際に使われたそうです。

おお、「十能」! 久々に聞きました!

A. きくちゃんから

 前回の回答の続きです。

 西洋のいわゆる「スコップ」が渡来する以前、日本では「土を掘る道具」として何が使われていたか調べたところ、春日市南奴国の丘歴史資料館のページに、「弥生時代のスコップ」と題して現在のスコップとほぼ同じ形の道具の写真があり「鋤(すき)」と説明してありました(牛馬に牽引させる犂(すき)は全く別物)
http://www.city.kasuga.fukuoka.jp/nakoku/nakokuouto/photo21.html

 この写真の「鋤」は土を掘る部分が先端は丸みを帯びているように見えますが、湾曲せずに平らなので、船をこぐ櫂のようです。土を掘る道具だとしても、この形態では、「スコップ」とか「シャベル」とは言いにくそうです。
 また、「匙・さじ」を調べると、「平安時代の匙は「貝殻状」をしていた」という記述がありました。つまり、現代の匙、スプーンと同じで、くぼんでいるということです。何に使うかを考えれば当然ですが。
 このことから、私の推理、想像は、日本でも古代から、土を掘る道具として「鋤(すき)」があった。その形態は、現在のスコップと酷似しているものの、土を掘る部分が湾曲しておらず、平らな板になっている。

 安土桃山〜江戸時代にオランダからスコップが持ち込まれたが、その形体が「鋤」とは似てはいても別物と考え(私が件の写真を見て「スコップ」とはいえないと感じたように)、スコップを「鋤」と呼ぶことはなく、また、広まることがなかったので、日本語の名称がつけられることもなく、オランダ語の「スコップ」がそのまま残った。

 軍用として、お手本であるフランス軍の装備をまねてスコップを採用し、(平らな形状の「鋤」よりも湾曲した「スコップ」の方が効率がいいこともあるでしょう)湾曲した形状が「匙」に似ているので「円い匙」、「円匙」と名づけた。
 本来の読みは「えん・し」であるが、「匙」を何と読むかわからなかった人が多く、右側に「ヒ」が入っているために適当に「ひ」と読んだことから「えん・ぴ」と読むようになった。