★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第二段 ●  風がぐるぐる回ったら

 毎年9月頃になると、日本を台風が襲う。ひどいときには、死傷者を出すことすらある。
 20年以上も昔、ある科学雑誌で、「台風の消滅作戦」、あるいは「ル−ト変更作戦」の話を読んだことがある。こうだ。太平洋上に台風が発生した場合、それが日本を襲う恐れのある大型のものであるなら、薬品を散布したり、爆薬をつかったりして、消滅またはル−ト変更をおこなうというプロジェクトだ。あの話は、一体どうなったんだろう。どこかに、吹き飛ばされてしまったか。20年も経って、技術もより進歩しているだろうに。もしかすると、その技術はもう既に完成されているのだが、関係諸方面からのクレ−ムがついて実行でき
ないとか。たとえば、ル−ト変更で、とばっちりを受けそうな地域住民からの声とか……。
 やはり、人間の手で気象を変えるのは、ちとむずかしいか。
 さて、
風向だ。あれは、どうやって測るのか。風向計というのがある。そんなことは、知っている。
 風というのは、いつもいつも、一定の方向から吹くわけではない。たった5秒間であっても、すこしは、吹いて来る方向にブレが生じていることが普通だ。例えば、北から風が吹いて来たり、北東から風が吹いて来たり、そういう場合には、風向を「平均」して、「北北東の風」と気象庁は発表しているのか。そういうことを悩んでいるのだ。「風向の正しい測り方」が知りたい。
 風向を平均するとなると、かなりやっかいだ。次のような場合は、どうなるのだろう。話を簡単にするために、風力はいつも一定と考えてもらいたい。
「その日は、風の方向が一定せず、風がぐるぐる回っているようだった。北風だと思ったら、次の瞬間には、南から吹いていた。あれ、また、北風だ」
 この話に、「風向の平均」を適用すると、風は一体どの方向から吹いたことになるのか。さあ、どうするか。中を取って、東風と発表するか。それとも、そんなことはどこ吹く風とするか。


【メモ】

「南風」と書いて、「はえ」。フグの水揚げや卸し売りで知られる南風泊漁港は、下関市にある。ここには、全国のトラフグの80%以上が集まるそうだ。

◆5月上旬に吹くことがある風で、「青嵐」と呼ばれるのがある。これも、南風。

◆「西北風」と書いて「あなじ」。

◆「東風」は「こち」と読む。「梅東風(うめごち)」というのは、ウメの花が咲く早春のころに吹く東風のこと。「ひむがし」、「あがり」も東風。

◆冬に関東地方一帯に吹く乾燥した風は、「からっ風」。

◆北海道・東北地方で、夏の初めの頃に吹き、冷害の原因にもなる北東の冷たい風は、「やませ」。

◆東地中海の北岸に吹く高温多湿の風を、
「シロッコ」という。

◆春先にエジプト地方に吹く、砂あらしを伴った暑い南風を、「ハムシ−ン」という。

◆ユ−ゴスラビアのアドリア海岸に吹く、山の斜面を吹き降りてくる乾燥した冷たい風を、「ボラ」という。

◆海風と陸風が交代する朝夕に、風が全く吹かない状態がある。これを、「凪(なぎ)」という。

◆南北両半球の約20度から60度の範囲の上空を、西から東に吹く風を、
「偏西風」という。大きく蛇行しながら、地球を巡っている。

◆貿易風は、赤道の北では北東から、赤道の南では南東から吹く風。1年を通して、ほとんど方向が変わらないので、「恒信風」とも呼ばれる。

「ボイス・バロットの法則」というのがある。これは、暴風の中心を探知するための法則だ。人が風を背に受けて立つとき、低気圧の中心は北半球で左手のやや前方、南半球では右手のやや前方にある。

◆風によって、砂が砂丘の表面に描く模様は
「風紋」。風紋に最も適しているのは、風速5〜6mの風。風が弱すぎると風紋は発生しなし、強すぎると風紋は壊れてしまうことになる。

◆「風解」というのは、結晶水を持つ結晶が空気にさらされたとき、結晶水を失って崩れ粉末になること。

◆「万物は地・水・火・風の4つの元素からなり、愛や憎しみによって結合・分離する」
 と説いたのは、古代ギリシャの哲学者、
エンペドクレス(BC493ごろ〜BC433ごろ)。どうも他の3つに比べて、風は「軽い」気がするのだが……。

◆荊軻(?〜BC227)は、中国の戦国時代の刺客。
「風は蕭蕭として易水寒し、壮士ひとたび去ってまた還らず」
 と詠って、秦の始皇帝の暗殺に向かったが、失敗して殺された。

◆「人は誰もただ一人旅に出て……」で始まるのは、『風』。この曲を歌っていたグル−プは、はしだのりひことシュ−ベルツ。

◆『北風』は、槇原敬之のヒット曲。『南風』は、太田裕美。これを英語で、『サザン・ウィンド』だったら、中森明菜。

◆高層ビルの谷間に吹く強いビル風によって、女性のスカ−トがまくれあがるのは
「モンロー効果」。もちろんこの「モンロー」は、マリリン・モンロー(1926〜1962)のこと。

◆「逆風」は向かい風、「順風」は
追い風
 衣服にたきしめた香(こう)のかおりを吹き送る風のことも「追い風」という。とても美しいな言葉だ。また、「追い風に乗る」なんて言葉もあって、どちらかというと、向かい風よりも追い風の方が人気が高いと思うのだが、飛行機の離着陸によいのは向い風だ。
 陸上競技には、記録が公認されない「追い風参考記録」というものがある。秒速2mを越える風が吹いた場合に適用される。せっかくいい記録が出ても、追い風参考記録になってしまうこともある。
 ホームランには追い風参考はない。だから、風をうまく利用することも大切になる。ちなみに、甲子園球場で有名な浜風はレフト方向へ吹く。また、童謡『たきび』で有名な北風は「ぴいぷう」と吹く。

◆さて、記憶力問題。あなたの家の
扇風機の羽は、右回りか左回りか? わからなかったらさっそく回してください。大抵の扇風機は、右回りに羽が回っている。
 理由が分からなかったので、いくつかのメーカーに尋ねてみたところ、どこからも同じような答えが返ってきた。
「特に理由はありません」
 こういうことだ。そもそも、モーターの回転で「正回転」といわれているものが右回転なのだ。だから、換気扇も船のスクリューも右に回るのがふつうだ。もちろん逆回転の扇風機を作ることも可能だが、そうなるとそれに付随して他の部品も作り替える必要があり、何のメリットも生まれてこない。
 では、モーターの正回転はなぜ右回りなのか?
「時計の回転の方向を踏襲したのでしょう」
 というお返事をいただいたが、詳しいことは分からないそうだ。

◆風に色がついているわけがないのだが、「金風」といえば秋風のこと。「金」は、五行説で秋や西をさすからだ。

◆「手風琴」って何かわかるだろうか? 「手」で「風」を送る鞴のような楽器なんだけど……。そうそう、アコ−ディオンだ!
 次に、「風鎮」をご存じだろうか? 紙が風で飛ばないように押さえる重し?
 あれは「文鎮」。掛け軸の下の軸の両端に、重しが吊してあるでしょう。あれが、風鎮。
 もう一つ、「松風」とは? 茶道の用語で、釜の湯の煮えたぎる音を「松風」というのだそうだ。

◆堀辰雄の『風立ちぬ』の舞台は、軽井沢。

◆「どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹き飛ばせ……」
 で始まるのは、宮沢賢治の
『風の又三郎』。主人公、又三郎の本名は、高田三郎。「風の又三郎」は東北地方の妖怪で、新潟県などの「風の三郎様」とともに、風の神としてまつられている。

◆アニメ『いなかっぺ大将』の主人公は、風大左ェ門。彼のライバルは、西一。西一には、西二(ふたつ)という名前の弟がいたなぁ。

◆『風神雷神図屏風』は、都の建仁寺にある。作者は、江戸初期の画家、俵屋宗達(生没年未詳)。

『赤富士』は、葛飾北斎(1760〜1849)の『富嶽三十六景』の中の一作品。えっ、風に関係がないって? いえいえ、この絵の正式な名称は『凱風快晴』。「凱風」とは、南からのやわらいだ風のこと。

◆風の便りに聞いたのだが、卑劣な人は、風上におけないそうな。


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