● 第四段 ● 7の倍数の見分け方
偶数・奇数といえば、知らない人はいまい。でも、0が偶数なのか、奇数なのかと問われると、即答できます?
■ 偶数 ■
2の倍数。整数をmで表したとき、2mで表すことのできる数。
これが、偶数の定義だ。m=0のとき、2m=0であるから、0は立派な偶数である。
小学6年生への問題で、
「3の倍数を小さいものから4つ書きなさい」
などというのがある。小学校では負の数は扱っていないから、正解は「0、3、6、9」である。0が入るところがミソ。0は、すべての整数の倍数である。
「1234は、2の倍数?」
この問題を答えるためには、一の位だけに注目すればよい。他の位の数は、関係がない。一の位の数が0、2、4、6、8、つまり2の倍数ならば、元の数も2の倍数になる。
他の1桁の数の倍数についても、素早く判断する方法を紹介しよう。
まず、5の倍数。5の倍数も、一の位で見分けられる。一の位の数が、0か5であるなら、5の倍数だ。
次に、3の倍数。中学生になると、3の倍数の見分け方を知っているという生徒がいる。この方法は、なかなか面白い。各位の数の和を求めて、それが3の倍数なら元の数も3の倍数だというわけだ。例をあげよう。
6543の場合 6+5+4+2=18
18は3の倍数だから、6543は3の倍数である。
5678の場合 5+6+7+8=26
26は3で割り切れないから、5678は3の倍数ではない。
9の倍数の場合も同様だ。各位の数の和が9の倍数になっていればよい。
次に、4の倍数。判断のポイントは十の位と一の位の下2桁。100が4の倍数だから、百の位から上は、無視することができるのだ。つまり、下2桁が4の倍数なら、4の倍数ということになる。
たとえば、5678の場合、下2桁の「78」が4の倍数ではないから、これは4
の倍数ではない。
同様に、8の倍数も判断できる。1000が8の倍数だから、千の位から上は無視できる。判断のポイントは下3桁。下3桁が8の倍数なら、元の数は8の倍数である。
この考えを進めていけば、16の倍数、32の倍数も判断できるはずだ。できるというだけで、そんな場面はあまり登場しないと思われるが……。
6の倍数は、6が2と3の最小公倍数であることを利用する。つまり、2の倍数でもあり、3の倍数でもあるという数を見つければよい。2の倍数の見つけ方と3の倍数の見つけ方を合体させればよい。
最後に、7の倍数の場合。これは手強い。何かいい方法はないかと悩んでいたら、数学が得意な友人の杉野君が教えてくれた。3桁の数の場合と4桁以上の数の場合に分けて考えるそうだ。
まずは、3桁の数の場合。百の位の数をa、十の位の数をb、一の位の数をcと表す。これが7の倍数かどうかを調べるには、
2a+10b+c
が、7の倍数になっているかどうかを調べるといい。
532という数の場合では、
2×5+32=42
42は7の倍数だから、532も7の倍数ということになる。どうしてそうなるのかは、中学数学の問題。ヒントとして、
98=7×14
をあげておこう。
次に4桁以上の数の場合。この場合、与えられた数を千の位以上のグル−プと百の位以下のグル−プに分ける。なぜ、このように分けるのか、これもヒントとして、
1001=7×143
をあげておこう。
654227を例にする。
(1) 千の位以上のグル−プと百の位以下のグル−プに分ける。例の場合は、
「654」と「227」。
(2) 654−227=427
(3) この427が7の倍数なら、もとの数も7の倍数だ。
ここで、先に説明した3桁の数の場合の判別方法を用いる。
2×4+27=35
(4) 35は7の倍数なので、もとの数も7の倍数というのが分かる。
7桁以上の数の場合は、(2)での引き算の結果が4桁以上になることがあるが、その場合は、3桁以下になるまで同様のことを続ければよい。
しかし、7の倍数が見分けられると何の役に立つのか? それが問題だ。
【メモ】
◆奇数を英語では、odd number。偶数は、even number。
◆問題。1年間に偶数の日と奇数の日とでは、どちらが多いか?
これは、ちょっと考えてみればすぐにわかる。30日まである月だと、奇数日も偶数日も同じ日数だけあることになる。1年のうちには、31日まである月が7ヶ月あるわけだから、奇数の日の方が多くなる。
◆「2より大きなすべての偶数は、2個の素数の和である」
という命題は、「ゴールドバッハの予想」と呼ばれている。まだこの命題の真偽が証明されていない。だから、「予想」なんだけど……。
◆婦人服のサイズは、5、7、9、11、13……と、奇数で表されている。これは、アメリカの婦人服のサイズの表示を、日本が20年ほど前に「輸入」したもの。なぜ、アメリカで奇数のサイズ表示が使われていたのかは、よく分かっていないそうだ。ちなみに、日本で7号といえば、Sサイズ。SSが5号、Mが9号、Lが11号となっている。
◆さて、7の倍数の見分け方について、すっきりしない人のために、もうすこし種明かし。
まずは、3桁の数の場合。ヒントにあったように、98が7の倍数であることを利用する。ここから、100を7で割ると2あまり、200だったら4あまることがわかる。つまり、百の位の数がaだとすると、2aあまることになる。これを下の2桁と合わせて、判断すればいいわけだ。十の位の数をb、一の位の数をcとすると、
2a+(10b+c)
で判断することになる。
◆次に、4桁以上の数の場合。ヒントにあったように、1001が7の倍数であることを利用すると、たとえば654654が7の倍数であることはすぐにわかる。
654654=654×1001=654×7×143
つまり、千の位以上の3桁と百の位以下の3桁が一致していればその時点で7の倍数なのだ。
では、本文の例にもあった654227ならどうするか? 繰り返してないぞ! このときは、654654が7で割り切れるということを利用するのだ。654227と654654との差を求めて(差は必ず3桁以下になるはずだ!)、それが7の倍数になっているかどうか調べればよい。だから、(2)で、
654−227=427
の計算を行っていたのだ。わかったかな?
◆「7」ということで、すこしだけ……。
英語でbig dipper(大きなひしゃく)と呼ばれる北斗七星があるのは、おおぐま座。北極星をはさみ、カシオペア座と向い合っている星座だ。その北極星は、北斗七星のひしゃくのますの外側の2つの星αとβを結び、その線を5倍ほど延長すると見つかる。この方法は小学校でならったが、このことから、こ
の2つの星は「ポインターズ(指示星)」と呼ばれているそうだ。
また、春の星空で見られる「春の大曲線」にも、北斗七星が一役買っている。ひしゃくの柄の部分、うしかい座のアークトゥルス、乙女座のスピカを結ぶ線がそれだ。
◆北斗七星の柄の先端から2番目の星の名前は、ミザール。ミザールのそばにはアルコルという星があり、昔アラビアでは、両方の星を見分けられるかどうかを、兵士の目の検査に用いていたそうだ。
◆ちなみに、いて座にもひしゃくの形に並んでいる6つの星があり、中国では「南斗六星」と呼んでいた。西洋では、ミルキー・ウェイ(乳の道、天の川のこと)のミルクをすくうスプーンと見ているそうな。