★雑木話★
ぞうきばなし

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  ● 第七段 ●  波に乗ってる?

に乗る」という言葉がある。世間の動きにうまく合うこと、調子に乗ることをいう。サ−ファ−と呼ばれる人たちは、まさに波に乗っている。最近は、わざわざ波を発生させるプ−ルまで登場して、人気を博しているようだ。これも「波に乗る」商売か。
 稲田君が言う。
「波というのはね、水面に発生するんだ。それはいいんだけど、どうも、波が水の流れだと思ってしまっている人が多くてね……」
「違うの?」
「違うよ。水が流れているんじゃなくて、水が波を伝えているんだ」
「その違いがよくわからないけど……」
「水そのものは、波の方向に進んでいるじゃないんだよ。水の流れは、そりゃ、『海流』って言うんだよ」
「そうか……」
「海を見なよ。どんな大きな波も、沖合いの海水が岸までやってくるわけじゃないよ。水は波を伝えているだけなんだ。浮き輪をつけて泳ぐ女の子を、すこし大きな波が襲っても、女の子は浜辺まではやってこないだろ」
「それ、女の子じゃないとダメ?」
「じゃあ、ボールでもいいよ。波間に浮かんでるボ−ルは、波に乗って上下に揺れてはいるけど、浜辺まではやってこないだろ」
「おお、なるほど。泳げない私にもなんとなく理解できるぞ」
「まだ、なんとなくかい? じゃあ、こう考えてみたらどう?」
「どう考えるの?」
「地震だよ。地震も波だろ?」
「それは、習ったことがある。P波とかS波とか……」
「そうそう、地震というのは、波が地中を伝わっていく現象だ。でも、波が伝わるだけで、土地までは移動してないだろう」
「そりゃそうだ。揺れてはいるけどね」
「波を伝える媒体が、水と土との違いはあるが、原理は同じだよ」
 そういうことらしい。
 さて、大きな地震が起こると津波が発生する場合がある。津波の伝わる速度は深いところほど速くなるそうだ。水深2000mでは、およそ時速500km。飛行機なみのスピードだ。水深100mでは、時速110km。これは、すこし無茶して走る自動車なみだ。
「津波なんて恐くないさ」
 と、地震のときに海岸付近にいると、この津波の意外な速さに負けて、波に飲み込まれてしまうことになる。注意。


【メモ】

津波は英語で、tsunami。

◆津波の速度は、海の深さの平方根に比例する。

◆気象庁は全国の海岸を18に区分し、津波予報を出している。波の高さが10cm程度なら、津波注意報。2〜3m以上なら、津波警報。

◆アマゾン川では、「
ポロロッカ」と呼ばれる奇妙な現象が起こる。満潮のときに、海から川へ高波が逆流することがあるのだ。見てみたいというほど、なまやさしいものではないらしい。この現象で多くの人が命を落としている。

◆7月下旬から8月始めにかけてよく起こる、大きなうねりを伴う波を、一般に「土用波」という。

◆高速運転中の車のタイヤが、空気圧が少なくなって波打つ状態を、「
スタンディング・ウェ−ブ現象」という。こうなると、非常に危ない。空気圧は、絶えずチェックしておこう。

◆海岸によく置いてある物で、4本足のコンクリ−トブロックがある。あれが、「
テトラポット」。波の力を弱める働きがある。「テトラ」とは、「4」を表す。昔、牛乳が四面体の容器に入れて売られていた(今でもあるのかな?)。あの容器は、「テトラパック」。

◆経済用語にも、波は登場する。景気の善し悪しが、ある一定の周期で変動するという考え方だ。
キチンの波」は、在庫投資の変動が引き起こす景気の循環。周期は、3〜4年。
「ジュグラ−の波」は、設備投資の変動が生む景気の循環。周期は、約10年。
「クズネッツの波」は、建設活動の変動が起こす周期約20年の景気循環。
「コンドラチェフの波」は、周期約50年の景気循環。戦争、人口の増減、資源の開発、技術革新などの原因がある。

Yシャツのすそは、波形になっている。これは、その昔、男性が下着を付けていなかったなごりだそうだ。下着が登場するのは、17世紀終わり頃の話。この波形には、サインカ−ブが利用されている。

◆1904年、連合艦隊司令長官・東郷平八郎は、対ロシア・バルチック艦隊との日本海海戦で、今では有名になっている電文を発した。その冒頭は、「天気晴朗なれど波高し」。

◆「岩を砕く波のような」と歌われているのは、「僕の父親」。これは、『四季の歌』の歌詞。彼はまた、「夏を愛する人」でもある。

◆食品で、「卯の花」といえば、おから。「波の花」といえば、塩のこと。

◆漢字で「小波」と書くと、「さざなみ」と読む。

◆「なみなみならぬ努力のただ賜(たまもの)」などと言うが、この「なみなみ」は「波々」ではなく「並々」。

◆桑田佳祐の『波乗りジョニー』は、2001年の夏にオリコン・シングルヒットチャートの1位を記録した。これは、単なる1位ではなく、彼が45歳であるということに意味がある。そう、1位を記録した最高齢なのだ。
 現在の最高齢1位は、秋元順子『愛のままで…』の61歳7ヶ月。その後更新されているようでしたら、教えてください。

◆波のようなマーク「
」を、どうやってワープロで打つか? 「なみ」で変換しても出ない。「から」と打って変換キーを叩けば、候補の中に「〜」がある。
 また、「どう」と打って変換キーを叩けば、候補の中に「々」や「〃」がある。知っておくと便利。

◆「々」は、分解すると「ノ」と「マ」。だから、「のま」と打って変換すれば「々」が現れる――というワープロがあるそうな。残念ながら、私のワープロはそうはなっていない。

◆「波」から「は」が生まれた。


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