★雑木話★
ぞうきばなし

トップページへ

前の段へ   ★雑木話★のリストへ   次の段へ


  ● 第八段 ●  羊飼いのゴルフ

 岩手県には、岩手山という山がある。その山の麓に、有名な
小岩井農場がある。1891年に創設された農場で、創始者である3人の名前、小野・岩崎・井上の頭文字をとって名前がつけられている。そうそう、この岩崎は岩崎弥之助のことで、彼は三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎の弟である。

■ 
岩崎弥太郎 ■
1834〜85、土佐藩出身。1870年、藩が運営していた大阪西長堀商会を譲り受け、土佐開成商社(すぐに九十九(つくも)商会と改称)を創設。翌1871年には、彼の私的な企業である海運業「三川(みつかわ)商会)」へと拡大される。社名が1873年三菱商会、1875年三菱汽船会社と改称される中で、74年の佐賀の乱・台湾への出兵、77年の西南戦争など、政府の輸送業務を独占して、国内では最大の汽船会社に成長した。多大な資本を蓄積し、他分野へ事業を拡張、三菱財閥の基礎を築く。

 ここは、日本最大の民間農場だ。遊園地ではない。ジェットコ−スタ−があるわけでもない。広々として、緑をいっぱい感じることができる。牛もいる。羊もいる。馬もいる。観光客もたくさんいた。
 そんな園内に、こんな看板があった。紹介しておこう。

  飼いのゴルフについて

 ゴルフのル−ルについては、羊飼いが杖でウサギの穴に石ころを入れたこ
とに始まるという話があります。
 イギリスでは、めん羊を放牧する場合、羊飼いは杖を持ち、牧羊犬をお供に羊を追っていました。杖は先が傘の柄のようにカギ状になっていて、羊のうしろ足にひっかけてつかまえる道具だったのです。
  この羊飼いの話は物語としてはなかなか面白いのですが、羊飼いにそんな余裕があったかどうかは疑問です。
  羊飼いのゴルフ 参加料 1人 200円

 だが、この「羊飼いのゴルフ」なるものが、現在のゴルフとどう違うのかは体験してこなかった。200円を惜しんでしまった。その200円で、ヨ−グルトを食べた。うまかった。


【メモ】

◆テレビなどでよく羊の毛をバリカンのようなもので刈っているシーンを見るが、少しくらい残しておいてあげたらと思うくらいに、丸刈りにされている。羊たちはあんなに毛を刈られて寒くないのだろうか? 羊の気持ちを聞いてみないと正確にはわからないが、大丈夫のようだ。
 ふつう、動物の毛は、季節に合わせて生えかわる。これは、羊も同様。ただし、羊毛をとる目的で育てられているメリノー種は、毛が生えかわらないのだ。冬の間に生える柔らかい羊毛を確保するために、毛が抜けないように改良された品種なのだ。だから、適当な時期がやってきたら、毛を刈ってやらないと、体調を崩してしまう。
 人間だって、春になればセーターを脱ぐ。羊も同じ。そのタイミングで、毛を刈るのがよい。これが遅れると、汗が毛にたまってしまい、羊の健康によくないのだ。逆に、早すぎると、鼻水を垂らす羊も出てしまう。が、羊は比較的寒さには強いそうだ。

◆毛織物などに使う羊の毛は、肩の部分の毛が最もよいとされている。とはいっても、人間は彼らを丸刈りにする。羊は一糸まとわぬ姿にされても、冬を迎える準備を整えるために、秋には毛が生えそろうのだそうだ。

◆羊毛を輸出するために農地を放牧地にしたことから、「羊が人間を食い殺す」といったのは、イギリスの思想家、
トマス・モア
■ トマス・モア ■
1478〜1535、イギリスの政治家・人文主義者。国王ヘンリー7世が王女の結婚のために課税承認を求めた際、当時下院議員だったモアはこれに反対。国王がモアの父を投獄したため、こうしょくから身をひいた。ヘンリー7世の死後、再び活動を始め、ロンドンの市政にたずさわる。このころ、架空の理想社会を描いた小説『ユートピア』(1516年)を書き、当時のイギリスの政治、社会を徹底的に風刺、批判した。1529年には大法官となったが、イギリス国王ヘンリ8世の離婚に最後まで反対し、処刑された。

◆「青年よ、大志を抱け」の言葉で有名な
クラ−ク博士(1826〜1886)の銅像が、札幌の羊ヶ丘にある。のんびりとした羊の群れに会うことができる。
■ クラーク ■
William Smith Clark 1826〜86、アメリカの科学者、教育者。マサチューセッツ州の医師の家に生まれる。1876年、明治政府の招きで来日し、札幌農学校の教頭となる。キリスト教精神に基づく全人教育、実験農場での実際的教育で、内村鑑三(1861〜1930)、新渡戸稲造(1862〜1933)ら多くの学生に影響をおよぼした。1877年4月に帰国するとき、学生へ残した「青年よ、大志をいだけ」は有名である。

◆札幌市の南西には、
羊蹄山という山もある。標高1893mの火山だ。その美しい山容から「蝦夷富士」とも呼ばれている山だが、羊の蹄とどういう関係があるのだろう。
 この山の麓にあるふきだし公園では、1日8万トンのナチュラルウォ−タ−が湧き出ている。訪れる人の多くが手にタンクを持っている。うまいのだろうな、ここの水は。
 環境庁は、「羊蹄のふきだし湧水」を名水百選の一つに指定している。

◆第1回のオリンピックは、1896年アテネで開かれた。この大会のマラソンで優勝したスピリドン・ルイスは、ギリシャの羊飼いだった。

◆スイス民謡
『おおブレネリ』に登場する、ブレネリの職業も、羊飼いだ。この歌に登場する少女の名前は、「ブレネ」。「リ」は、「〜ちゃん」に当たる。「オ」は、呼びかけ。

◆警察犬などに多く採用されている
シェパ−ドは、もともと「羊飼い」という意味である。
 シェパードは19世紀末に確立された歴史の新しい品種で、ドイツの退役軍人シュテファニッツが現在の基礎を作った。もっとも知能の発達した犬種の一つで、「羊飼い」という名前を持ちながら、警察犬、警備犬、軍用犬、盲導犬として大活躍している。

◆羊そのものを主人公にした映画はあまりないと思うが、映画『ベイブ』は、牧羊犬ならぬ牧羊豚のお話。
 ハリソン・フォ−ド(1942〜)主演の映画に『ブレ−ド・ランナ−』があるが、原作のタイトルは『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』。このタイトルから内容を推し量っても、たぶん全然違うと思う。
 映画『羊たちの沈黙』で、ジョディ・フォスタ−(1962〜)はアカデミ−主演女優賞を受賞している。『告発の行方』に続いて2度目、しかも20代で2度だからすごい。

◆フランクフルト・ソ−セ−ジは豚の小腸に肉を詰めたもの。ウィンナ・ソ−セ−ジは肉を羊の小腸に肉を詰めたもの。その他、羊の腸は、バイオリンの弦、テニスラケットのガットにも使われている。

◆トルコ料理のシシカバブで使われている肉は、羊の肉。これをタマネギやレモン汁で下味をつけ、野菜と一緒に串刺しにして焼いた料理だ。

◆「羊の刻」といえば、午後2時頃。「羊の方角」といえば、南南西。

◆漢字で「羊歯」と書くと、これは「シダ」。

◆中国では、古代、ヒツジは山の神とされ、吉兆とされていた。だから、漢字の「羊」には、これ一字だけで「めでたい」という意味がある。そのめでたいとされる「羊」が「大」きくまるまると肥えていると、それはそれは非常によいことで、「
」しいとなる。

◆ほかにも、「善」は「羊」+「言」で、「めでたい言葉」という意味。「義」は「羊」+「我」だから、「我を美しくすること」「自分がきちんと立派であること」をいっている。また、「我」は「舞」を表し「神前で行う舞」「礼にかなった行い」を表すという説、「我」は「まさかり」を表し「羊を切るときの敬虔な心情」を表しているという説もある。

◆やっかい者のことを英語では、black sheep(黒い羊)という。「羊頭狗肉」という言葉もある。店頭には羊の頭を並べながら、客には犬の肉を売るような、みせかけのごまかしのことをいう。

◆人気の動物占いでは、私は、羊だった。


[感想が届いています]   


[このページの先頭に戻る]

前の段へ   ★雑木話★のリストへ   次の段へ