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ぞうきばなし

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 ● 第十六段 ●  「錯角」の「錯」って?

 中学数学では、図形の領域で、同位角と錯角を学習する。ともに、平面上で2直線と1直線が交わるときにできる角だ。同位角が等しければ、また、錯角が等しければ、2直線は平行になる。
同位角」というのは「同じ位置にある角」のことだろうから理解しやすいのだが、「錯角」ってどういうことなんだろうと以前から思っていた。思っていたのならすぐに調べればいいのに、今になった。
錯角」というのは、言葉で説明するとなると本当にむずかしい。まず、2直線と1直線が交わってできる角のうち、2直線の内側にある4つの角に注目する。このうち、1直線をはさんで、しかも異なる頂点を持つ2つの角を錯角という。英語では、alternate angle。つまり、「互い違いの角」だ。「てれこの角」と言ってもいい。

          /      /
        a / d   e /h
    ---------/---------/-----------
       b / c   f/ g     
        /    /       

∠aと∠e、∠bと∠f、∠cと∠g、∠dと∠hが同位角

∠cと∠e、∠dと∠fが錯角

「錯」という漢字について調べてみると、以下のような意味があった。まず、この字を「サク」と読むと、
(1)めっきする
(2)砥石
(3)やすり
(4)みがく
(5)まじる、まじわる
(6)乱れる、乱す
(7)かわるがわる、互いに
(8)たがう
(9)誤る、まちがえる

「ソ」と読むと、
(10)置く(間におく)
(11)酢

「セキ」と読む場合は、
(12)セリウム

 セリウムなどという意味があるとは、全く知らなかった。が、この際関係ない。
「錯角」の「錯」の意味にぴったりとはまるのは、(7)だろうな。alternate angle と同じだ。「目の錯覚」という場合の「錯」は、(9)の意味かな。
 また、錯角といえば2直線の外側には存在しないわけだが、これは(10)の考え方が適用されるのだろうか。本当は、どうなんだろう。


【メモ】

同側内角というのもある。これも、平面上で2直線と1直線が交わるときにできる角だ。
「同側」というのは、1直線に関して同じ側にあるということ。「内角」というのは、2直線にはさまれているということ。つまり、先の図でいえば、∠cと∠f、∠dと∠eが同側内角である。
 同側内角の和が2直角(180度)ならば、2直線は平行になる。
 便利な用語なのに、最近の中学の教科書には載っていない。

セリウム、Cerium、原子番号58、元素記号「Ce」、原子量140.12。
 最初に発見されたランタノイドである。希土類元素の一つ。鉄灰色の金属で、錫よりかたく、亜鉛より柔らかい。合金に利用される。発見者は、ベルセーリウス(1814、スウェーデン)。1801年に発見された最初の小惑星「セレス」に由来している。

◆原子番号57のランタンから、71のルテチウムまでの15の元素を総称して
ランタノイドという。周期律表では、下の方で横に並んでいる。性質がよく似ているので、単離が困難。

◆「てれこ」が歌舞伎の用語としても使われているということは、以前に述べた。そこで、歌舞伎の台本について、すこし調べてみた。

 歌舞伎や浄瑠璃で、公卿、僧侶、武士らの支配階級から題材をとった作品を「
時代物」という。特に、徳川時代の大名・旗本のお家騒動を扱ったものを「お家物」という。
 ただし、江戸時代の武士を扱うことは禁止されていたので、時代を鎌倉に移すなどして脚本が作られた。

◆浄瑠璃や歌舞伎で、当時の著名な噂話などを題材とし、恋愛・義理・人情の葛藤を写実的に描いた作品を総称して、「
世話物」という。

◆江戸時代後期に、『白浪五人男』『三人吉三廓初買(さんにんきちざくるわのはつかい)』などの世話物を著したのは、河竹黙阿弥。
『東海道四谷怪談』は、四世鶴屋南北の作品。

◆人形浄瑠璃から、歌舞伎に移入された作品を「
丸本物」という。

◆歌舞伎用語で、「色模様」「濡れ場」といったら、ラブシーンのこと。悲しい場面は、「
愁嘆場(しゅうたんば)」。

◆歌舞伎
十八番とは、天保年間に七世市川団十郎が制定した市川家の当たり狂言。
『不破(ふわ)』
『鳴神(なるかみ)』
『暫(しばらく)』
『不動』
『嫐(うわなり)』
『象引(ぞうひき)』
『勧進帳』
『助六』
『押戻し』
『外郎売り』
『矢の根』
『関羽』
『景清(かげきよ)』
『七つ面』
『毛抜』
『解脱』
『蛇柳(じゃやなぎ)』
『鎌髭(かまひげ)』

◆歌舞伎十八番について、4・5冊調べてみたが、どれも先の順番に台本が並んでいる。何の順番なのか?

◆九世市川団十郎は、父の七世が選定した歌舞伎十八番にならって、自分の得意狂言を集めた。これが、新歌舞伎十八番。十八番といいながら、35の演目がある。

◆『道成寺』や『鳴神』では、幕開きに坊主姿の役者が登場する。
「聞いたか、聞いたか?」
「聞いたぞ、聞いたぞ」
 と、言い合いながら、客にストーリーを知らせておく。彼らを、「
聞いたか坊主」という。

◆きちんと筋を立てずに、なれあいですませた歌舞伎の台詞を「
なあなあ」という。


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