★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第十五段 ●  赤ん坊が生まれた

 長男が生まれて5年がたった。月日がたつのは、早いものだ。
 よく、お父さんに似てるだの、お母さんに似てるだの、おじいちゃんに似てるだの、おばあちゃんに似てるだのというが、生まれ立ての赤ちゃんはしわくちゃで、誰に似ているのかはよく分からない。強いていえば、父・母に似ているというよりも、ボールに似ている。本当だ。
 流行の「立ち会い分娩」だった。いや〜、すごかった。もったいないから、ここには書かないぞ。
 妊婦を助手席に乗せて病院へ向かう最中に、ふと空をみた。ぽっかりと月が浮かんでいた。満月だった(ような気がする)。
 そういえば、満月や新月の日には赤ちゃんが生まれることが多いと聞いたことがある。実際の統計を見たことがないが、相関関係はあるのだろうか。
 妊婦が宝くじを買うと当たると聞いた。本当だろうか。

 そこで、思い出した話。

 月と日と雷が同じ宿屋にとまりました。
 朝、雷が目をさまして見ると、月と日が居りません。
 宿の者にきくと、「もうとうにお立ちになりました」と言います。
 雷はかんしんして、「あヽ、月日の立つのは早いものだ。自分は夕立にしよう」
             (第三期国定教科書『尋常小学国語読本』巻6より)

【メモ】

◆moonは、普通名詞だ。the moonで「月」。だから、the moons of Jupiter(木星の衛星)という言い方ができる。他にも面白いイディオムがある。

  once in a blue moon ……極めてまれに
  cry for the moon ……全く不可能なことを希望する。

 そういえば、「望」という漢字には「月」がある。

◆中秋の名月は、harvest moon。

◆JRの特別切符「
フルムーン夫婦グリーンパス」を利用できるのは、年齢の合計が88歳以上の夫婦。どうして88歳なんだろう。奥さんが16歳で、旦那が72歳っていうのもOKだな。

◆小説
『月と6ペンス』は、サマセット・モームの作品。ゴーギャンの伝記から暗示を受けて書かれたという。主人公はストリックランド。『月と10セント』を書いたのは、北杜夫。

◆『月に吠える』は、萩原朔太郎の詩集。口語自由詩を完成した、近代詩史上画期的な詩集だ。

◆中島敦の名作『山月記』で、主人公は虎に変身する。『明月記』は、藤原定家の日記。彼が19歳から74歳までを書き綴ったものだ。

◆『荒城の月』の作曲者は、滝廉太郎。これは有名。だが、作詩者はあまり知られていない。土井晩翠だ。
 2000年の紅白では、錦織健さんが歌ってた。

◆ベートーベンのピアノソナタ第14番嬰ハ短調作品27の2といえば、『月光』。

◆ポール・アンカのヒット曲に『ダイアナ』がある。ダイアナとは、ローマ神話の月の神。ギリシャ神話ではアルテミス。

◆「月にかわっておしおきよ!」
 のセリフで人気の
セーラームーン。変身する少女は、月野うさぎ。登場する2匹の猫は、白猫がアルテミスで黒猫がルナ。

◆円月殺法。柴田練三郎が生み出した眠狂四郎の必殺技だ。

◆チョンマゲ頭で、髪を剃り落とした前頭部を「月代(さかやき)」という。

◆夜が明けたというのに、まだ空に月が残っている。これが、「有り明の月」。

◆月が登場する有名な和歌を、どうぞ。
「やすらはで寝なましものを小夜更けて傾くまでの月を見しかな」……赤染衛門
「この世をばわが世と思う望月の虧(か)けたる事も無しと思ヘば」……藤原道長
「ねがはくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」……西行
「月みればちぢに物こそかなしけれ わが身ひとつの秋にはあらねど」……大江千里
「名月や池をめぐりて夜もすがら」……松尾芭蕉
「菜の花や月は東に日は西に」……与謝蕪村
「名月をとってくれろと泣く子かな」……小林一茶

◆唐の詩人賈島(かとう)が、「僧ハ推ス月下ノ門」と「僧ハ敲ク月下ノ門」のどちらの句を選ぶかで迷っていた――これが、有名な故事成語「
推敲」の由来だ。

◆坂本龍馬の像があることで有名な、高知県の桂浜。『よさこい節』の中で月の名所と歌われている。

◆童謡『月の砂漠』には、金と銀の物が2種類歌われている。一つは瓶(かめ)、もう一つは鞍。

◆童謡『雨降りお月さん』に出て来るのは、唐傘。『茶つみ』に歌われているのは、すげの笠。

◆月山の標高は1984m。出羽三山の中で、いちばん高い山だ。

◆日本の月山やハワイのマウナ・ケアのように、底面積が広く、傾斜が10度以下の楯状火山のを、「アスピーテ」という。ドイツ語だ。

◆「教皇は太陽の如く、皇帝は月の如きものである」
 と演説したのは、インノセント3世。ヨーロッパにおける教皇権の絶頂期を築いた教皇だ。

◆ウサギの肉の別名は、なんと、「月夜」。

◆満月の
月齢は15。だから、十五夜という。
  月齢0‥‥朔(さく)、新月
  月齢3‥‥三日月
  月齢7か8‥‥上の弓張り
  月齢15‥‥望月、満月
  月齢16‥‥十六夜(いざよい)
  月齢17‥‥立待月
  月齢18‥‥居待月
  月齢19‥‥寝待月、臥待月(ふしまちづき)
  月齢20‥‥更待月(ふけまちづき)
  月齢23‥‥下の弓張り

◆「半月切り」をさらに半分に切ると、いちょう切り。野菜の切り方の話だ。

◆引き違い窓などついている半月形の締め金具を
クレセントという。


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