● 第四十七段 ● トイレにある回転体
トイレに入って考えた。
「トイレットペーパーって、回転体なんだ。」■ 回転体 ■
ある平面図形を、その平面上の1直線を軸として回転させたときにできる立体。このときの軸を、回転の軸という。
トイレットペーパーにナイフで切れ目を入れる。
正確に言おう。回転の軸に平行に、トイレットペーパーの外側から、内側の筒に向かって切れ目を入れる。竹輪を開くようにすると言ったら通じるか。こうすると、トイレットペーパーは、円形を維持できなくて、台形になる。こんな感じだ。A______B ←内側の円周
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C  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄D ←外側の円周
「台形なら、面積を求めることができるじゃないか!」
台形の面積を求める公式は、
(上底+下底)×高さ÷2
この場合の上底は内側の円周の長さ、下底は外側の円周の長さ。内側の円の半径をr、外側の円の半径をRとすると、台形の面積は、(2πr+2πR)×(R−r)÷2
=(πr+πR)(R−r)
=π(R+r)(R−r)
なんだか、きれいな式になった。
「あれ、この台形って、もともとはドーナツ型だったんだ。ということは、ドーナツ型の面積が、台形の面積の求め方で求められるわけ?」
確かめてみよう。ドーナツ型の面積は、大きい方の円の面積から小さい方の円の面積を引けばいいわけだから、
πR^2−πr^2 ※「^2」は、2乗を表す
=π(R^2−r^2)
=π(R+r)(R−r)
「やっぱり、同じだ。」
もし、ドーナツの穴がつまっていたら、r=0になるから、面積はπR^2になる。
つまらないことを考えてしまった。水に流すことにしよう。
「いや、つまらなくないよ。これは、応用できそうだ」
稲田君に話したら、そう答えた。【メモ】
◆トイレットペーパーの幅は、JIS規格では114mm。
◆肌触りをふんわりとソフトにするために、紙に凹凸のある型を押し付けてあるトイレットペーパーがある。エンボス加工という。
◆トイレットペーパーの長さLが分かれば、1枚の紙の厚さdを計算で求めることができる。
ドーナツ型のトイレットペーパーをすこしずつ引き出していくと、最後には非常に細長〜い長方形になる。この長方形の面積とドーナツ型の面積が同じなのだから、
dL=π(R+r)(R−r)
d=π(R+r)(R−r)/L
ものさしを持って、もう一度トイレへ。
R=5.6、r=2.3、L=6000(単位cm)
だった。L=6000 というのは、さすがに測れない。パッケージに表示されていたので分かった。あとで何社か調べてみたが、60mという長さが主流だった。
d=π×(5.6+2.3)×(5.6−2.3)/6000
d=π×7.9×3.3/6000
d=0.0136‥‥ (cm)
ほぉ、かなり薄いんだ。では、2枚重ねのロールだと、1枚の紙の厚さはどれくらいになるか。これは、読者への問題。
◆日本で、ナイフなどの刃物を最も多く生産しているのは、岐阜県。
◆「車軸を流す」といえば、このときの天気は雨。「馬の背を分ける」のも雨。
◆フィギュアスケートで、体の中心線を軸として、こまのように回転する演技は、「スピン」。バスケットボールで、ボールを持ち片足を軸に方向転換するのは、「ピボット」。
◆スキーにも回転競技がある。2本の旗を使ってコース上に、ゲートが作られる。ゲートの数は、コースによって異なってくるが、男子なら55〜75、女子なら45〜60だ。赤旗で作られたゲート、青旗で作られたゲートを交互に滑り抜けて行く競技だ。ゲートの幅は4〜6m、設定のしかたは3種類。オープンゲート………最大傾斜線に対して直角に開いたゲート
クローズドゲート……最大傾斜線に対して平行に開いたゲート
オブリークゲート……最大傾斜線に対して斜めに開いたゲー「大回転」というのもあるが、これは、回転と滑降の中間と考えればよい。回転よりも大きなカーブを高速で滑り抜ける競技だ。
◆太陽から飛んでくる帯電粒子が地磁気につかまると、地球を中心にしたドーナツの形をした放射線帯を作るが、これを発見者の名前から、「バンアレン帯」という。地上約3600kmと20000kmのところにある。
「バレンタイン」と「バンアレン帯」を間違えるという内容の漫画を読んで、大笑いしたことがある。
◆「いや、つまらなくないよ。これは、応用できそうだ」
稲田君に話したら、そう答えた。
普通紙ファックスなら心配はいらないのだが、稲田君の家では、ロール紙のFAXを使用している。ロール紙では、用紙の端に赤い線が出てくると、残りがすくないことを示している。
でも、残りがすくないからといって、すぐに新品のロール紙と交換するのはもったいない気がする。最後の最後まで使いたいではないか!
赤い線が見えた段階であと何m残っているのか――これが計算できると、稲田君はいうのだ。
◆そこで、新しいファックスロール紙を使って測定してみた。半径を求めるのは、直径を測って、その長さを半分にすればよい。
新品のロール紙の長さ……L=30m
ロール紙の芯の半径……a=8.7mm
新品のロール紙の半径……b=24.5mm
赤いラインまでの半径……c=10mm
これだけデータがそろえば、赤ラインが出てからの残りの長さxmは、計算で求めることができる。次の式に値を代入して計算してほしい。
L(c^2−a^2)
x=――――――――
b^2−a^2
ちなみに、上記の式は、下記の式を変形したらできました。
(πb^2−πa^2):(πc^2−πa^2)=L:x
◆さあ、計算だ。
30×(100−75.69)
x=―――――――――≒1.4(m)
600.25−75.69
A4判の紙の長い辺の長さが297mmだから、4枚は可能だけど、5枚は無理という長さだ。B4判の長い辺は364mmだから、あと3枚は大丈夫、4枚は無理。覚えておくといいかもしれない。