★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第四十八段 ●  うさぎとがま

 その当時、日本にワニがいたのかどうか定かではないが、この場合のワニは、どうやらいわゆるワニではなくて、サメのことのようだ。山陰地方では、サメのことをワニと呼ぶことがあるのだ。おっと、有名な出雲神話『因幡の白兎』のお話。
 ワニをだまして隠岐島から本州まで海を渡ったウサギは、怒ったワニに赤裸にされてしまう。かわいそうに思った大国主命(おおくにぬしのみこと)が、ガマの穂綿にくるまることを教え、ウサギは救われる。後にウサギは、大国主命に恩返しをする――というお話。

■ 
蒲(ガマ) ■
ガマ科ガマ属の多年草。淡水地域の泥地に群生する。草丈は2mほどに生長する。円柱形の花穂が特徴。花穂は、茶褐色で長さは10〜20cm、幅は2cmほどになる。「穂黄」と呼ばれる花粉には、止血剤や鎮痛剤の効能があるといわれる。若芽は、「穂筍(ほじゅん)」と呼ばれ、食用になる。

 葉や茎を編むと、簾(すだれ)や筵(むしろ)などを作ることができる。そんなところからだろう。「ガマ」という名前は、「材料」という意味のある韓国語「カム」が転じたものだ(そうだ)。
 蒲の葉で編んだ座禅用の円座が、「蒲団」。だから、これはそんなに柔らかくない。しかも、丸い。「団」は、丸いことを意味している。これがいつの間にか、中に綿が入れられて、四角になって、面積が大きくなり、現在の布団になる。

   蒲団(葉・円形・座具)
      ↓ ↓
   布団(綿・方形・座具)
           ↓
   布団(綿・方形・寝具)

 こういう流れか。「寝具ではない」ということを強調するために、「座布団」なる言葉も生まれた。

 さて、ガマといえば、やはりその花穂が特徴。「狐のろうそく」と呼ぶ地方もある。これは、すばらしい名前だと思う。狐がガマの穂を手に持っている姿が目に浮かぶ。
蒲鉾」と呼ばれることもある。これは、ガマの穂が鉾に似ているから。もちろん食用の蒲鉾は、この「蒲鉾」が語源。タイやサメなどの白身の魚をすりつぶしたものを、竹の芯に塗りつけ、加熱したもの。
「あれ、それって竹輪じゃないの?」
というあなたは正しい。元々は、竹輪のことを蒲鉾といった。いつの頃からか、板付きの蒲鉾が登場し、「竹輪」は「竹輪」に、「蒲鉾」は「蒲鉾」になった。現在では、「蒲鉾」もすっかり板に付いてしまった。


【メモ】

◆毎年11月15日は、かまぼこの日。これは、かまぼこが初めて文献に登場したのが、1115年(永久3)だったから。これは、1983年に、日本蒲鉾協同組合(通称「ぜんかま」)が制定したものだ。
「かまぼこ博物館」というのもある。箱根登山電車の風祭駅を下りてすこし歩いたところだ。ここでは、かまぼこに関する知識を増やすことができる。また、職人さんの実演指導によるかまぼこや竹輪の手づくり体験教室も開かれている。近くに行くことがあれば、ぜひ見学しよう。

◆笹かまぼこは、仙台地方のものが有名だ。魚のすり身を木の葉のような形に成形し、それを串に刺して炉で焼き上げたものだ。

◆鳥取県の浜村温泉から東5kmのところに、
白兎海岸はある。海岸近くには、白兎神社もあり、「因幡の白兎」を祭っている。境内には、皮を剥がされた白兎が体を洗ったとされる「不増不滅の滝」がある。

◆鳥取県には、その名もズバリ、「因幡の白うさぎ」という饅頭がある。「因幡の白うさぎサブレ」もあるよ!

ワニを分類すると、クロコダイル科、アリゲーター科。クロコダイルには、「クロッカスを恐れるもの」という意味がある。

◆ナイル川などでは、ワニの背中の上を、ワニチドリという鳥が動き回っている。ワニの歯の間に残った食物のカスを食べるそうだが、本当かな。

アボカドは、皮がワニの皮に似ていることから「アリゲーター・ペア」、日本では「ワニナシ」呼ばれている。果肉は脂肪と蛋白質が多く、「森のバター」とも呼ばれている。わさび醤油で食べたりする。

◆「shed crocodile tears」で、「そら涙を流す」の意味。なぜか。
 ワニは、川にやってきた人に跳びかかり川に引きずり込んで食うが、前進を食い尽くすために、その頭に涙を落とし、涙の熱で髪を抜いてから食べる――と、16世紀の人アポストリオスは述べている。つまり、この涙は、人の死を悲しんで流しているのではないというのだ。また、人の頭には肉がない、なんて食に向かないのだと嘆いているという説もある。

◆日本にもワニがいる! 場所は、宮崎県の南部だ。都城盆地と日南海岸の間を南北に走っている山地が、鰐塚山地だ。

◆日本にもワニがいた! 今度は、地名ではない。本当に野生のワニがいたのだ。昭和40年、大阪府豊中市の大阪大学理学部構内で、ワニの化石が発見された。発見された山の名前から「マチカネワニ」と名付けられている。

◆人間の中にも、「ワニ」がいる。
■ 
王仁(わに) ■
生没年未詳。5世紀頃に来日した百済の博士。漢の高祖の子孫といわれる。『論語』や『千字文』を伝え、文筆・出納に従事し、西文氏(かわらのふみうじ)の祖となる。

◆ホッケは、そのほとんどが竹輪にされる。東北から北海道の海に分布するアイナメ科の海水魚だ。

ウサギを大別すると2つの科に分けられる。耳の長いウサギ科と耳が丸い小型のナキウサギ科。

◆童話『不思議の国のアリス』の中で、アリスと一緒に「お茶の会」に招かれた3人は、三月兎、眠り鼠、帽子屋。

◆童謡『うさぎとかめ』で、先に「もしもし」と呼びかけているのは、うさぎ。ゴールは、「むこうの小山のふもと」。
 この『うさぎとかめ』の話は、こんな童謡までできているのだから日本の昔話だと考えられがちだが、実は、イソップ童話にある話なのだ。1593年(文禄2)に天草で刊行された『伊曾保物語』にその最初の形が認められる。
 ちなみに、イソップ童話では、キツネが、スタートの合図を出している。

◆ほかにも、ウサギは様々な場面で活躍をしている。
 童謡『あわて床屋』では、カニのはさみの被害にあっている。
 童謡『山の音楽家』では、ピアノを弾いている。
 童話『カチカチ山』では、やけどをしたタヌキの背中に唐辛子と味噌を塗っている。
『鳥獣戯画』の冒頭では、サルと競争している。
 童話『不思議の国のアリス』の中では、白ウサギのあとを追って、アリスがウサギの穴に落ちている。

◆「猫に小判」と同じ意味のことわざに、「兎に祭文」というのがある。「兎の糞」とは、物事がぽつぽつ切れて長続きしないこと。

◆「兎の昼寝」ということわざもある。これは、もちろん、カメと競争したウサギがカメをあなどって途中で昼寝をしたために競争に負けてしまったという『うさぎとかめ』の童話に由来する。つまり、油断して失敗することをいう。
 似たような意味のことわざに、「鳶に油揚げを取られる」や「月夜に釜を抜かれる」がある。

◆小型テレビ用のV字型のアンテナを、英語では「ウサギの耳」という。Vサインの指の形は、中国ではウサギを示す。

◆かわいいウサギのキャラクター、ミッフィーを生んだのは、ディック・ブルーナ(1927〜)。ウサギのキャラクターといえば、ピーター・ラビットも忘れてはならない。こちらは、べアトリックス・ポター(1866〜1943)。
 ピーター・ラビットは、書籍のプリペイドカードである「図書カード」にもデザインされている。
 そうそう、読売ジャイアンツのマスコットもウサギだ。名前は、「ジャビット」。

◆人間が「ラビット」を演じる場合もある。中長距離走で、記録を作る選手のために牽引役として前を走る人のことをいう。
 2001年9月30日のベルリンマラソン、高橋尚子は2時間19分46秒の世界最高記録でゴールインしたが、このときはペースメーカーだけでなく、ガードランナーまでいた。
 で、ラビットはどんなふうに走るのか? そりゃ、脱兎の如く走るのでしょう。

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