★雑木話★
ぞうきばなし

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 ・ 第七十四段の一 ・  だから、ペンギンは、プルプルする

 ウミガメは、「塩類腺」という分泌腺をもっていると述べた。ここから、海水よりもずっと濃い液を排出しているので、海水を飲んでもなんともない。
 海に住む魚も海水を飲んでいるが、彼らの場合は、えらの部分にある「塩類細胞」という大型の細胞で、塩類の主成分であるナトリウムを排出している。だから、大丈夫。
では、人間が海水を飲んだらどうなるか?
「辛い!」
 そんなことを言っているのではない。飲料用として海水が使えるかということだ。もちろん、少しくらいなら我慢すれば飲める。しかし、海水だけで生きていくのは、到底無理だろう。では、一体、何がだめなのか?
 問題は、塩類濃度だ。
 海水や血液、尿の中には、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、塩素などの塩類が含まれている。海水と尿に含まれる塩類を比べてみると、カリウムをのぞいて、海水の方が尿の2倍くらい濃い。また、海水の塩類濃度は、血液のそれの3倍以上である。
 ということだ。人間が海水ばかりを飲んでいると、血液の塩類濃度が高くなってしまう。尿として排出しようとしても、限界を超えているのだ。
 血液というのは、いうまでもなく、体のあちこちに酸素と栄養を運んでいるのだが、この需要な仕事を行なうために、決まった範囲で一定の状態を維持するように作られている。この状態が大きく崩れると、生命に危険が及ぶことになる。だから、海水を大量に飲むのは、やめたほうがいい。
 海鳥も、塩類線を持っていると述べた。ペンギンも、海に入って魚を捕っているのだから、海鳥と考えてよいだろう。だから、ペンギンにも塩類腺はある。目の上あたりにある塩類腺で漉し取られた塩分は、体液とともにくちばしの中を通って、鼻孔から排出される。
 しかし、「鼻水だらだら状態」は、ペンギンとしても気持ちが悪い。人間なら、こんな場合、チーンと鼻をかむのだろうけど、ペンギンはそれもできないから、首をプルプルと振って、あたりに鼻水を飛ばすことになる。かなり悪いマナーだと思うが、仕方がない。
 水族館などで飼われているペンギンは、真水の中で生活していることが多いので、あまりプルプルする必要はないはずなのだが、それでも首を振っている。これは、プールや海で潜ったときのことを思い出せばわかるはずだ。再び水面上に顔を出したとき、人間でもきっとプルプルするでしょ! ペンギンも鼻に水がたまったままだと、気持ちが悪いのだ。


【メモ】

◆ナトリウムは空気に触れると、酸素や炭酸ガスと反応して、表面に白い膜ができてしまう。また、水に触れると、激しく反応して、水素を発生する。だから、ナトリウムの貯蔵には、石油が使われる。

◆固体のナトリウムの色は銀白色、密度は0.97g/cm^3。水と同じくらいの軽い金属だ。金属というわりには柔らかく、硬めのチーズくらいなので、ナイフでも簡単に切ることができる。

◆高速道路のトンネルで見かける黄燈色のランプには、ナトリウムの蒸気が封入されている。

◆ナトリウムを無色の炎の中に入れて熱すると、黄色を発する。

◆エンペラーペンギンをはじめ、キング、ジェンツー、アデリー、ヒゲ、ケープ、フンボルト、マゼラン、ガラパゴス、イワトビ、マカロニ、ハシブト、キマユ、マユダチ、ロイヤル、キンメ、コビト、シロヒレ。これが、ペンギン科の18種。

◆ペンギンは、北半球には生息していない。

◆南極圏に分布しているペンギンは、コウテイ、アデリー、ヒゲの3種。

◆最も大きいのは、エンペラーペンギン。体高が120cmを越えることもある。最も小さいのは、オーストラリアとニュージーランドにすむコビトペンギンで、体高は41cm以下である。

◆日本の動物園や水族館で最も多く飼われているのは、フンボルトペンギン。胸に1本の黒い線があるペンギンで、チリ北部からペルーの海岸にかけて生息している。

◆整髪料のCMキャラクターとして有名になったのが、イワトビペンギン。亜南極圏の島々に広く分布している。

◆■ オオウミガラス ■
大型の海鳥。全長約75cm。背面は黒く、腹面は白い。翼はひれ状で飛べず、海上や海中で生活。アイスランドやニューファンドランド付近の小島で繁殖していたが、羽毛をとるために乱獲され、1844年絶滅。 [講談社 日本語大辞典]

◆このオオウミガラスの説明を読むと、まるでペンギンだ。南極と北極、こんなに極端に離れているのに、よくもまあこれだけ似た海鳥がいるものだと思ったら、意外なことが分かった。
 じつは、この「ペンギン」という名前は、もともとオオウミガラスのものだったのだ。しかし、残念ながらオオウミガラスは絶滅。のちに南半球で、本家のペンギンにそっくりな鳥が発見され、そちらが「ペンギン」を襲名するすることになった。

◆オオウミガラスとペンギンが、血縁が薄いにもかかわらず、これだけそっくりな姿かたちになったのが、不思議でたまらない。このような状況を生物学では、「収斂(しゅうれん)」と呼んでいる。

◆映画『バットマン・リターンズ』に登場したバットマンの敵は、ペンギン。

◆『ピングー』は、ヨーロッパで大人気。オットマー・グッドマーが生み出した粘土でできたペンギンだ。

◆アニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』で、アラレちゃんが街を走るときの音は、「キーン」。アラレちゃんが住んでいる村は、ペンギン村。

◆『ドラえもん』のモデルになった動物は、猫。『オバケのQ太郎』のモデルになった動物は、ペンギン。

◆「ペンギンマーク」をご存じか? 車の免許を取って1年以上たってはいるが、現実には運転に自信のないドライバーが車につけるマークだ。警察庁が無料で配布している。
 このマークをつけている車には、「わかばマーク」以上の注意が必要かもしれない。

◆「辛」は、「シン」という漢字の音符として使われることがある。「新」や「親」を「シン」と読むのが、その例だ。

◆「辛い」と書けば、「からい」とも「つらい」とも読める。文脈から判断するしかない。
  (1) 今月は、辛い。
  (2) このカレーライスは、辛い。
  (3) 辛いカレーライスを食べるのは、辛い。


【参考文献】
・海の謎 おもしろ科学特捜班[編] (青春出版社)
・日本人の質問4 (NHK出版)
・世界大百科事典 (平凡社)


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