★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第八十一段 ●  ゴヨウだ! ゴヨウだ!

松の葉を使って、相撲をしたことがある。「相撲」と呼んではいたものの、あれを相撲と言っていいのかどうかよくわからない。というのは、普通、相撲は「押すもの」だが、松葉の相撲は「引くもの」だからだ。
 松葉は、1ヶ所から2本の細い針のような葉が出ている。V字形をしているわけだ。V字の股の部分が強そうな松葉を探す。どれも同じ様に見えるのだが、強弱があるところが面白い。
 お互いの松葉が絡むようにスタンバイ。タイミングを合わせて、双方から引っ張る。股が裂けなかった方が勝ち。お金のかからない遊びだった。地面が松葉だらけになるまで、続けたこともあった。
 子どもの頃、そんな遊びをしていたこともあって、マツというものは、1ヶ所から2本の針葉が出ているんだと思っていたが、それは浅い理解だった。
 マツ科マツ属を総称して「マツ」と呼んでいるのだが、これは大きく2つに分類される。二葉松類と五葉松類だ。つまり、針葉が2本のグループと5本のグループがあるのだ。 日本にある五葉松類は、ゴヨウマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウ、ヤクタネゴヨウの4種。ゴヨウマツなどは、マツの盆栽の中で最も多いものだそうだ。日陰でも育ち、生長ももゆるやかなので、小庭の植栽にも向いている植物だ。
 だったら、ゴヨウマツを植えて、ゴヨウマツの松葉で相撲をやってみたい。


【メモ】

◆ニ葉松類と五葉松類を針葉の数で分類するのは目安であって、詳しくはもう少し別なところで分類されている。だから、ニ葉松類にも針葉が3本、4本、5本、2〜5本の種があり、五葉松類にも2本、3本、あるいは1〜4本の種もある。
 複雑怪奇だ。

◆ハイマツは、「這松」。幹が普通地上をはう五葉松の一種で、日本では高山帯に見られる。

◆チョウセンゴヨウの種子は食用、油用になる。朝鮮半島ではそのための植林もされている。

◆ヤクタネゴヨウは、種子島と屋久島の特産。中国、台湾に分布するタカネゴヨウの変種だ。

◆日本にあるニ葉松類はアカマツ、クロマツ、リュウキュウマツの3種。

◆全体に柔らかい感じがあるので、「雌マツ」と呼ばれるのがアカマツ。枝や葉がアカマツより太いので、「雄マツ」と呼ばれるのがクロマツ。松島で見られるのは、ほとんどアカマツだけ。天橋立では、アカマツとクロマツが混生している。両種の混生するとこでは自然に交雑が行われ、見た目には区別がつかない個体が多くなる。このような天然雑種を「アカクロマツ」という。

◆北海道の「道の木」と沖縄県の「県の木」は、同じマツ科の木だ。北海道は、エゾマツ。沖縄県は、リュウキュウマツ。ただし、エゾマツは、マツ科トウヒ属に属する。

◆「日本三大松原」と呼ばれている場所がある。静岡県の三保の松原、福井県の気比(けひ)の松原、佐賀県の虹の松原。

◆松毬(マツカサ)は、マツの花なのか、種なのか、それとも果実なのか? 植物学上は「球果」と呼ばれる。どうやら、果実らしい。

◆松毬に似ているものを、2つ、3つ。
■ マツカサウオ ■
キンメダイ目マツカサウオ科の海産魚。全長15cmくらい。厚い大きなうろこでできた堅い甲に包まれ、うろこに隆起があるところからの命名。エビスウオ、ゲソク、イシガキウオなどの地方名を持つ。背びれにある5〜6本の棘(きょく)を、1本おきに左右互い違いに倒すことができる。腹びれにも棘があり、その基部をこすって音を出す。うきぶくろでも音が出せる。下あごの先端に近い腹面に発光器があり、この内部に共生する発光バクテリアにより発光する。特徴の多い魚なので、水族館で観覧用にされることが多い。

■ マツカサトカゲ ■
スキンク科のトカゲで、全身がきわめて堅い大きなうろこで覆われ、あたかも「松毬」のように重なっているので、この名がある。全長25〜30cm、オーストラリア南・東部に分布する。行動は鈍いが、皮骨板が発達し、角質の体鱗の中に多くの骨質の結節があるので、食べようとする動物も歯が立たない。防衛手段として、青色の下を出して脅かすことがある。卵胎生で、1〜3匹の子を生む。

■ ダグラス・マッカーサー ■
1880〜1964。陸軍軍人の家に生まれる。1903年、陸軍士官学校を主席で卒業。フィリピンに最初に赴任したのち、駐日アメリカ大使館武官の副官として来日するなど、極東の情勢に詳しい経歴をもつ軍人として陸軍の要職を歴任。37年に退役したが、41年に復帰、アメリカ極東陸軍の司令官として太平洋戦争に参加する。フィリピンで敗れて、オーストラリアに脱出し、“I shall return”とフィリピンに戻ることを誓った。44年に元帥となり、連合国軍最高司令官として45年8月30日日本に進駐した。GHQ(連合国軍総司令部)の指令を通して、日本の民主化、非軍事化などの政策を遂行した。朝鮮戦争の継続と拡大を主張したが、トルーマン大統領と対立し、51年に解任された。

◆マッカーサーは、厚木基地に降り立ったとき、コーンパイプをくわえていた。

◆「労兵は死なずただ消え去るのみ」は、彼が解任されたときの弁。

◆彼は、1828年のアムステルダム・オリンピック大会において、アメリカチームの団長を務めている。

◆北海道で最も多く収穫される「マツバウド」とも呼ばれる野菜は、アスパラガス。日本にもたらされたのは江戸時代。にもかかわらず、食卓に出回るようになったのは、1965年頃だそうだ。

◆地方によって、松葉ガニとか越前ガニとか呼ばれるカニは、ズワイガニ。

◆塗料の原料などに使われる、松やにからとった油が「テレピン油」。昔の照明道具に松明(たいまつ)があるが、これはよく燃えるようにと、松のヤニの多い部分を束ねて燃やしたもの。

◆「松の日」を発見した。5月8日だった。「ゴヨウマツ」の「ゴヨウ」で、5月8日なのかとも考えた。しかし、違っていた。
 「松の日」は、1989年、社団法人日本の松の緑を守る会が制定したもの。第1回「日本の松の緑を守る」全国大会が開催されたのが、1981年の5月8日で、これが最大の理由。また、この頃は、マツクイムシの防除が開始される重要な時期であり、松の緑が最も輝く時期でもある。


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