★雑木話★
ぞうきばなし

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 ・ 第八十一段の一 ・  「日本の名松100選」リスト

 正月、久しぶりに実家に帰ると、やはり松が飾られてあった。去年もそうだった。正月には松飾りが必要だ――なんて思わないけど、どうして「松」なんだ? 

 松は「待つ」から名付けられたという。何を待つのか? それは、もちろん、神が天から降りてくるのを待つのだ。だから、めでたい。
 松は、いつも青々としている。したがって、長寿を意味する。だから、めでたい。
松は、決して紅葉しない。したがって、「心変わりしない」「二心(ふたごころ)ない」ことを象徴する。だから、めでたい?

 ま、そんなことは別にして、主観的には、松は美しいと思う。もしかしたら、長い間日本人をやってきて、刷り込まれているのかもしれないが、やはり、松は美しいと思う。
 そんな美しい松が日本全国から100ヵ所選ばれて、「日本の名松(めいしょう)100選」として、1983年の5月に発表されている。
 さて、あなたはそこで誰をまつ?

[北海道]鶉河五葉松自生地(厚沢部町)/幌満五葉松自生地(様似町)/襟裳岬の黒松林(えりも町)/千本松並木(函館市)
[青森]法光寺の千本松(名川町)/関根の松(三戸町)/屏風山保安林の松(木造町〜車力町)
[岩手]華蔵寺の宝珠松(陸前高田市)/高田松原(陸前高田市)/薄衣の笠松(川崎村)
[宮城]松島の松(塩竃市、松島町、利府町、七ヶ浜町、鳴瀬町)
[秋田]能代海岸の黒松林(能代市)
[山形]高谷家の臥竜松(村山市)/中山の五葉松(鶴岡市)
[福島]古寺山の松並木(那須川市)/天神浜の赤松林(猪苗代町)/新舞子浜の黒松林(いわき市)
[茨城]大洗の松林(大洗町)/筑波山の松(筑波町)
[栃木]日光の姫小松(日光市)/太子の笠松(真岡市)
[群馬]萩原の大笠松(高崎市)/相生の松(桐生市)
[埼玉]永昌寺の大松(小川町)
[千葉]稲毛の松林(千葉市)/甚兵衛の森(成田市)
[東京]皇居外苑の黒松(千代田区)/善養寺の影向の松(江戸川区)/秋葉の黒松(太田区)
[神奈川]真鶴岬の黒松林(真鶴町)
[新潟]市庁の大松(新潟市)/村雨の松(両津市)/黒川の傘松(黒川村)
[富山]浜黒崎の松並木(富山市)
[石川]兼六園の松(金沢市)
[福井]気比の松原(敦賀市)/美浜の根上りの松群(美浜町)
[山梨]龍泉寺の万年松(山梨市)/※万休院の舞鶴松(武川村、枯死)/遠照寺の鶴亀松(須玉町)
[長野]笠取峠の松並木(立科町)/臥龍山の松林(須坂市)/高鳥谷神社の松並木(駒ヶ根市)
[静岡]三保の松原(清水市)/沼津の千本松原(沼津市)/久遠の松(藤枝市)
[愛知]御油の松並木(豊川市)/足利誓いの松(吉良町)
[岐阜]大船神社の松並木(矢作町)/濃尾の千本松原(海津町)
[三重]七里御浜の松林(熊野市〜新宮市)/照源寺の夫婦松(桑名市)
[滋賀]平松の美松(甲西町)/彦根城のいろは松(彦根市)
[京都]京都・東山の松(京都市)/京都御苑の松(京都市)/善峰寺の遊龍松(京都市)/天橋立の松(宮津市)
[大阪]浜寺公園の松(堺市〜高石市)
[奈良]奈良公園一円の松(奈良市)/法隆寺境内の松(斑鳩町)/大神神社の松(桜井市)
[和歌山]煙樹海岸の松林(美浜町〜御坊市)/満屋の姫小松(和歌山市)/光明寺の黒松(那賀町)
[兵庫]須磨浦公園の松(神戸市)/修法ヶ原の松(神戸市)/慶野松原(西淡町)
[鳥取]大山並木松(大山町)/西東の五葉松(境港市)/中ノ茶屋の一里松(鳥取市)
[島根]出雲平野の築地松(斐川町)/出雲大社の馬場の松(大社町)/春日神社の黒松群(布施村)
[岡山]後楽園の松(岡山市)/渋川海岸の松(玉野市)
[広島]法宣寺の天蓋松(福山市)/蓮光寺の蓮華松(広島市)
[山口]室積・虹ヶ浜海岸の松林(光市)
[徳島]鳴門の根上り松(鳴門市)/大里松原(海南町)
[香川]栗林公園の松(高松市)/中津万象園の松(丸亀市)/志度の岡野松(志度町)
[愛媛]大師松(北条市)
[高知]入野松原(大方町)
[福岡]さつき松原(玄海町)
[佐賀]虹の松原(唐津市〜浜玉町)
[長崎]野田浜の松林(加津佐町)/千々石海岸の松林(千々石町)/姫の松原(小値賀町)
[熊本]唐傘松(小国町)
[大分]奈多海岸の松林(杵築市)
[宮崎]赤松千本原(えびの市)/住吉海岸の松林(宮崎市)
[鹿児島]吹上浜の砂丘林(加世田市ほか5町)/阿久根大島の松林(阿久根市)
[沖縄]仲原馬場の松並木(今帰仁村)/念頭平松(伊平屋村)/久米の五枝の松(具志川村)

 ★昨今の市町村合併で、市町村名が変わっている場合があります。
  お気づきの場合は、ぜひ、お知らせください。
  また、ご利用にはご注意を!


【メモ】

◆正月の門松には、「来迎(らいごう)の松」、つまり神の依り代としての意味がある。はじめは松だけだったのが、室町時代に強い生命力を象徴する竹が参加する。さらに、寒さに耐えて美しく咲く梅が江戸時代に加わり、ここに「松竹梅」が完成した。

◆花札で、1月の札に描かれているのが松。この松と梅、桜をそろえたら、「赤短」と呼ばれる役。ちなみに「青短」は、紅葉、牡丹、菊。

◆「松」が使われている都市は、全国に16ヵ所。福島県の会津若松市、二本松市、千葉県の松戸市、埼玉県の東松山市、長野県の松本市、石川県の小松市、松任市、静岡県の浜松市、三重県の松阪市、大阪府の松原市、島根県の松江市、山口県の下松市、徳島県の小松島市、香川県の高松市、愛媛県の松山市、長崎県の松浦市。
(注)これも、昨今の市町村合併で、市町村名が変わっている場合があります。
  お気づきの場合は、ぜひ、お知らせください。
  また、ご利用にはご注意を!

◆次に、県の木に指定されている松のリスト。
  北海道‥‥エゾマツ
  群馬県‥‥クロマツ
  福井県‥‥マツ
  島根県‥‥クロマツ
  岡山県‥‥アカマツ
  山口県‥‥アカマツ
  愛媛県‥‥マツ
  沖縄県‥‥リュウキュウマツ

◆「市松模様」の「市松」は、人名に由来する。歌舞伎役者の佐野川市松だ。

◆秋の虫で、「チンチロリン」と鳴くのはマツムシ。童謡『虫の声』で、最初に出てくる虫だ。これに追いついてきたのが、ウマオイ。

◆谷崎潤一郎の『細雪』には、彼の夫人・松子がモデルとして登場している。

◆岩下俊作の小説『富島松五郎伝』は、『無法松の一生』というタイトルで映画化されている。

◆まんが『おそ松くん』に登場する六ツ子は、おそ松、一松、カラ松、チョロ松、トド松、十四松。彼らの苗字は、「松野」。

◆塗料の原料などに使われるテレビン油は、松やにからとった油だ。

◆天ぷらの「松葉あげ」は、素麺を揚げたもの。

◆ちょうど100代目の天皇が後小松天皇(位1382〜1412)。「後」がついているので、「小松天皇」がいたのかと調べてみたが、いなかった。

◆室町時代には、南北朝の分裂が起こっていたが、これが終結したときの天皇が、後小松天皇。また、とんちで有名な一休さんの父とされているのも、後小松天皇。

◆「海松」と書いて、「みる」と読む。『万葉集』の時代から食用として採集された海草だ。黒味がかった緑色をしており、ここからこのような色を、海松色(みるいろ)と呼んでいる。

◆『万葉集』にある大伴家持の歌。
八千草の花は移ろふ常磐(ときわ)なる松のさ枝をわれは結ばな

◆小倉百人一首の中の藤原定家の歌。
こぬ人を松帆の浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ

◆アメリカの自由の女神が、右手に持つのはたいまつ。左手に持っているのは、独立宣言書。

◆アメリカの第35代大統領J.F.ケネディは、1961年の大統領就任式で、
「たいまつは新しい合衆国民に引き継がれた」
と演説した。

◆松葉杖の材質は、松だとばかり思っていた。そうじゃなくて、松葉のように二股になっているから、このように呼ばれるのだ。

◆『待つわ』は、女性2人のグループ、あみんのデビュー曲。片方の岡村孝子は、その後ソロで活躍し、ジャイアンツの石井選手と結婚している。


【感謝】この段を書くにあたって、社団法人日本の松の緑を守る会から資料を提供していただきました。


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