★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第八十段 ●  土の中で17年

 ★雑木話★第四段の二で、17について扱ったが、もうすこし。
 セミの仲間に、「ジュウシチネンゼミ」というのがいる。何が「17年」なのかというと、このセミが出現する周期が17年なのだ。ジュウサンネンゼミもいて、これらは「周期ゼミ periodical cicada」と呼ばれる。
 17年型のセミは3種いて、ジュウシチネンゼミはその一種である。北アメリカのロッキー山脈より東側の平地に生息し、成虫は5月から6月になると地上に現れる。その数は驚くべきもので、木を覆い尽くし、地面は抜け殻で埋め尽くされるほどだ。
 名前にあるように、このセミは卵から成虫になるまでに17年かかる。すべての個体が正確に17年後に現れる。どうやって17年という長い年月を数えているのか、また、どうして17年もの長い幼虫期が必要なのかは、よく分かっていないそうだ。
 13、17……と来れば、あ、これは素数だと気づく。
 そこで、ジュウシチネンゼミが17年の幼虫期を過ごすメリットは、以下のようなものではないだろうかと考える。
 たとえば、ジュウシチネンゼミにとって、顔を会わすのもいやになるほどの天敵がいたとする。実際には、セミの一生で最も死亡率が高いのは、地中に潜る前の一齢幼虫のときである。植物の組織内(だいたいは枯れ枝の中)に産まれた卵は、1、2ヶ月または約10ヶ月で孵化し、幼虫は誰に教えられることなく地中に潜る。このときが最も危ないのだ。幼虫の多くはアリに捕食され、一齢時の死亡率は95%以上にもなる。ほとんどが食べられてしまうわけだ。だから、このアリのような捕食者の個体数が増えるような年と一齢幼虫の年が一致すると、目も当てられない結果になる。
 その天敵は、2年の周期で勢力が強くなるとする。ある年、ジュウシチネンゼミの一齢幼虫が、その天敵の全盛期にぶつかったとすれば、全滅に近い被害が出るだろう。しかし、17年後は天敵の全盛期にはぶつからないので、また個体数を増やすことができる。また、天敵が全盛期を迎える周期が3年でも、4年でも、5年、6年、7年でも、大打撃を受けるということからは逃れることができる。これは、17という数が、素数だからだ。
 だから、13年とか17年とか、こんなに長い幼虫の期間を送るということは、それだけ天敵の種類が多いということなのかな?

【メモ】

◆我々は、ジュウシチネンゼミに17年に一度しか会えないというわけではない。ジュウシチネンゼミには、13の年次グループがあることが知られている。また、13年型のセミには、5つの年次グループがある。また、素数だ。

◆11という素数の周期を持つセミはいない。なぜか。

◆17と聞いて思い出すのは、聖徳太子の「憲法十七条」。これが出されたのは、推古天皇12年(604)のこと。この憲法のオリジナルは残っていない。720年に完成した『日本書紀』の中に、憲法十七条が見られる。

◆十七に曰く、夫(そ)れ事独り断(さだ)むべからず。必ず衆(もろもろ)と論(あげつら)ふべし。……

◆なぜ十七条なのか? それには、わけがある。
 この世のすべてのものには、陰と陽の2つの面がある。これが、古代中国にあった「陰陽(おんみょう)道」という考え方だ。数にも陰陽があり、陰の最高の数が8、陽の最高の数が9。この2数を合わせると17になる。聖徳太子は、仏教や儒教について深く勉強していたので、陰陽道にも詳しかったに違いない。

◆17という数は、日本の法律の基本的な数となっている。禁中並公家諸法度も17条。御成敗式目は51ヵ条。これは、17×3=51。1536年、戦国大名の伊達稙宗(たねむね)が制定した『塵芥(じんかい)集』は、170条。

■ 禁中並公家諸法度 ■
1615年、大阪夏の陣の直後にに江戸幕府が出した朝廷、公家の統制法。全文漢文で17条から成る。天皇の職務を限定し、非政治的なものとみなし、その服装まで定めている。また、官位・紫衣(しえ)・上人(しょうにん)号などについても規定している。

■ 御成敗式目(貞永式目) ■
1232(貞永元)年、北条泰時が定めた鎌倉幕府の基本法律51ヵ条。日本最初の武家法。武家以外からは「関東式目」とも呼ばれた。御家人の権利義務や所領相続の規定が多い。歴史的には、武家法の基礎となり、室町幕府もこれを基本として引き継いだ。

◆■ 塩素(Chlorine) ■
ギリシャ語でchloros(黄緑色)から名付けられた元素。原子番号は17番、元素記号は「Cl」。原子量35.5。常温で刺激臭を持つ、黄緑色の気体。単体ではCl2として存在する。猛毒を持ち、酸化力が高い。化学的に活発で、ほとんどすべての金属と化合する。漂白剤や殺菌剤として使われる。1774年、スウェーデンのシェーレが発見した。


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