★雑木話★
ぞうきばなし

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  ・ 第八十四段の四 ・  ツバルのパンノキ
   (この段は、第八十四段の三からの続きです)

 調べものをしていて、「パンノキ」にぶつかった。カタカナで表記されているから、どのように読めばいいのかはっきりとはわからなかったのだが、第一印象は「パンの木」だった。

「『パンノキ』? パンみたいに柔らかい幹なのか、パンのような実がなるのか、はたまた『パーン』と大きな音が鳴るのか。う〜ん、調べてみなくては……」

 しかし、もっと先に別に調べていたものがあった。
 世界で4番目に小さな国、ツバルだ。
「ツバル共和国」とか「ツバル公国」というのではなく、正式名称が「ツバル」だ。日付変更線の近くの太平洋上に浮かぶ立憲君主国で、イギリス連邦に加盟している。総面積は26km^2というから、日本の小笠原諸島の父島の約1.1倍だ。人口は約1万人で、首都はフナフティ島にあるフナフティ。
 ツバル・ドルとオーストラリア・ドルが流通しているが、実は、国家歳入の3分の1以上がイギリスからの援助金である。というのは、ツバルを形成する9つの島は、標高が5mに満たないサンゴ環礁からなり、産業開発は期待できないからだ。国外で働く労働者からの送金、郵便切手の通信販売、コプラの輸出、これらがツバルの外貨獲得額の第1位から第3位である。
やせた土壌は耕作にも向かず、したがって、ツバルの農業といってもココヤシ・バナナ・パンノキなどを栽培する自給的なものにかぎられている。
 ここで、パンノキの登場だ。

■ パンノキ ■
ミクロネシアなどの熱帯太平洋の島々に生育するクワ科の常緑高木。オセアニアで広く主食となっているのでこの名がつけられた。果実は直径20〜30cmの球状で、重さは2〜4kgになる。表面は緑色で、熟すとやや黄色をおびる。表面にはとげ状の突起が並ぶ。この果実は、水気がなくぱさぱさしているが、焼くと柔らかくなり、ほのかな甘味がでる。果肉を干してひいたものはビスケット、パン、プディングの材料になる。材は建築やカヌーに、繊維の強い樹皮は布やロープに使われるほか、ミルク状の樹液は防水剤に利用される。和名の「パンノキ」は、英名のBreadfruitの訳。

 なるほど、役に立つ木なんだ。パンノキは日本へは昭和初期に渡来し、温室内で観葉植物として栽培されているということだから、もうどこかの植物園か何かで見ているのかもしれないが、記憶にない。ぜひ、しっかり見てみたいし、食べてみたい。


【メモ】

◆ツバルの人口は、バチカン市国についですくない。3番目にすくないのは、ナウル共和国。

◆ツバルの歴史をすこし。
 1568年、スペインの探検家が一部の島を訪れる。その後、世界からは忘れられた存在だったが、1764年、イギリス海軍将校で探検家のジョン・バイロンが島を訪れた。1877年イギリスの高等弁務官の施政下に置かれ、1892年にはギルバート諸島とともに保護領とされた。1974年の住民投票で、エリス諸島の住民がミクロネシア系住民が多いギルバート諸島からの分離を支持し、75年にイギリス保護領のままギルバート諸島から分離、ツバルと改称する。その後1978年10月1日に独立国家となった。

◆ギルバート諸島は、1979年にキリバスとして独立している。

◆ツバルの憲法は、独立とともに制定されている。名目上の国家元首はイギリス国王で、ツバルの市民権をもつ総督がその代理を務めている。任期4年の国会議院が12名いる。内閣の長は首相で、大臣は首相の助言によって総督が任命する。

◆コプラは、ココヤシの胚乳を刻んで乾燥させたもの。これを圧搾するとヤシ油が採取できる。

◆ツバルに唯一生息する野生生物は、ネズミ。

◆樟脳は、クスノキから得られる。アニメ『となりのトトロ』にも、大きなクスノキが登場する。

◆競技の優勝者に賞賛の意を表すため、月桂冠を与えるシーンをよく見かける。この月桂冠は、クスノキ科の月桂樹の枝葉で作られている。

◆ギリシャ神話では、音楽と詩の神アポロンに追いつめられた美しいニンフ、ダフネの化身とされるのがローレル(月桂樹)だ。

◆「森のバター」と呼ばれるアボカドも、クスノキ科の植物。

◆パリのシャンゼリゼ通りの並木で有名なマロニエは、トチノキ科の落葉高木。果実が栗(マロン)に似ていることから名前がついたとされている。日本名は、「セイヨウトチノキ」

◆秋を代表する果物の柿は、カキノキ科の植物。

◆秋に丸い実が鈴をかけたように見えるプラタナスは、その形状から「スズカケノキ」と呼ばれている。日本でいちばん多く植えられているプラタナスは、モミジバスズカケノキで、街路樹・公園樹としてよく見かける。

◆江戸時代、街道の一里塚に植えられた木が榎(えのき)。

◆榎本其角の句、「鐘ひとつ売れぬ日はなし江戸の春」。

◆バラ科の常緑高木に「博打の木(バクチノキ)」がある。

◆カエデ科の常緑高木に「眼薬の木(メグスリノキ)」がある。樹皮を煎じて洗眼薬にするところから名前が付けられた。「長者の木」とも呼ばれる。

◆オオギリ科の落葉高木に「ハンカチノキ」がある。満開のときに花びらが揺れると、白いハンカチがたなびいているように見えるところからの命名だ。「鳩の木」とも呼ばれる。

◆フトモモ科の常緑性低木に「ブラシノキ」がある。実物を見れば、なるほど「ブラシノキ」だと思うだろう。試験管を洗うブラシにそっくりだ。英名は、「ボトルブラシ」。

◆翌桧(あすなろ)が、明日こそなろうと思っていた木がヒノキ。

◆テレビドラマ『素顔のままで』『あすなろ白書』『愛していると言ってくれ』の脚本を手掛けたのは、北川悦吏子(えりこ)。

◆国会本会議での裁決で使われる青票と白票は、ヒノキでできている。国会議員のみなさんは、次に何になろうと思っているのだろうか?

◆驚き、桃の木、山椒の木。


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