● 第百八段 ● 寅年を考える
「寅年生まれなんですかぁ、今年は年男ですね」
なんて、自分の干支をばらすと、こんなことをいわれる。既にもう何回も言われてしまった。さらに、
「寅だと、性格はきつい方ですか?」
なんてことを言う人もいる。
「お〜、それじゃあなんねぇ、寅年に生まれた奴ぁ、みんな性格がきついのかい?」
って、怒るほどのことじゃないけど、どうしても頭をよぎってしまう。
そんなわけがない。だいたい、干支(えと)で人の性格なんて分類できるわけがない。性格をたった12に分類するのが馬鹿げている。人の性格は、十人十色、みんな違うんだ。同じ年に生まれたというだけで、性格が同じだったら、小学校や中学校には、おなじような生徒がわんさかいることになってしまう。気持ち悪い。
まだ、星占いの方がましか。これなら、クラスに12通りの性格が存在する。だめだ、だめだ、それでも、ある特定の生徒と同じ性格の奴が3・4人いることになる。こんな気持ち悪いことが起こる理由は、性格を分類するための要素が少なすぎるからだ。もっと細かく分類するために、すこし考えてみよう。
干支と星座の両方を使うというのはどうだ。これなら、12×12で、144通りの性格分類ができる。まだ、144だ。
いっそのこと、干支と日付を使ったらどうだろうか? 12×365で、4360通りだ。これで、かなりきめ細かな性格分類ができるはずだ。さらに生まれた日の曜日を用いれば、4360×7で、30660通り。さらにさらに、ABO式の血液型分類を加えれば、30660×4となり、122640通り。さて、世界の人口が68億人強だとして、自分と同じ性格の持ち主が何人いるか計算してみよう。122640で割ってみると、約55000人という計算になる。そんなにいるのか、やはり気持ち悪い。
結論は、干支や星座なんかで、性格がわかるはずがないということだ。やはり、十人十色なのだ。どこで生まれ、どんな環境で育ち、どんな人と交わったか――これらを数値化して分類すれば、たちどころに68億なんて数を越えてしまうだろう。ここまでやったら、本物なのだ。
それにしても、星座占いなどを読んでいると、当たってるなぁと思うことがある。どうしてなんだろう?
【メモ】
◆杉野君に話したなら、
「クラスに同じような性格の持ち主が3・4人存在するっていうのは、案外当たっているような気がするんですけど……。自分の学生時代を思い出しても、そうですよ」
と言われた。なるほど、まったく同じ性格ではないが、似たような性格ということなら、考えられるか。
◆「『大阪人は、○○だ』なんて、よく言われるじゃないですか、あれも地域分類による性格分析でしょ」
なるほど、そうだ。しかも、「大阪人は、歩くのが速い」なんてのは、非常に当たっている気がする。自分がそうだから……。
◆でも、やはり、干支や星座で性格を分類するってのが、わからない。「大阪人は、歩くのが速い」は、許せるのに……だ。
◆「天災は忘れた頃にやってくる」は、寺田寅彦の言葉。地球物理学などに業績を持つ、東大教授で、夏目漱石に師事していた。
◆1888年、日本の国産オルガン第1号を作ったのは、山葉寅楠(とらくす)。日本楽器製造(現ヤマハ)の創始者だ。
◆父は虎滋郎、母は玉緒、祖父は滋悟郎といえば、猪熊柔(いのくまやわら)。柔道マンガ『YAWARA!』のヒロインだ。
◆『怪傑ハリマオ』の「ハリマオ」とは、マレー語で、どんなトラの意味。
◆東京都港区の北端の地区は、「虎の門」と呼ばれる。江戸城外郭門の一つである虎の門に由来する。
◆■虎の門事件■
1923年(大正11)12月27日に起きた、当時の摂政裕仁(ひろひと)親王(昭和天皇)の暗殺未遂事件。無政府主義者である難波大助は、議会の開院式へ向かう摂政を、虎の門付近で狙撃するが失敗、死刑となった。
◆「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」は、中国の後漢の時代の武将、班超(はんちょう)の言葉。この反対の意味なら、「君子危うきに近寄らず」。
◆■ 班超 ■
32〜102、後漢の武将。73年に北匈奴の討伐に功を挙げ、以後30年間西域経営に活躍する。91年には、後漢の4代皇帝和帝より西域都護に任ぜられる。部下の甘英(かんえい)を大秦(たいしん)に派遣したことでも知られている。歴史家の班固(はんこ)は、彼の兄。
◆危険を冒すことを「虎の尾を踏む」という。フランスでは、「オオカミの耳をつかむ」というそうだ。『虎の尾を踏む男達』という映画を撮ったのは、黒澤明監督。
◆一つの災害を逃れても、さらにまたほかの災害に遭うことを「前門の虎、後門の狼」という。
◆「虎穴に……」や「前門の虎」などでもわかるの虎」などでもわかるが、どが、どうも虎は危険・災害の象徴とされている。ほかに、「虎を野に放つ」といった言葉もある。
◆虎が、勢いを象徴することもある。
「虎は千里往(い)って千里還(かえ)る」。勢いが盛んなこと、行動範囲が広いことの形容だ。
「時に遇えば鼠も虎と成る」。巧みに時流に乗り機会を得れば、大した実力や才能のない者でも勢いを得るという意味のことわざだ。
◆自信は満々、興味は津々、虎視(こし)は、耽耽(たんたん)。機会を狙っている様子を、トラの鋭い目に例えた四字熟語だ。
◆ものごとの勢いが盛んで途中で止められないこと、いきがかり上途中でやめにくい様子を、「騎虎(きこ)の勢い」という。あるなあ、そういうことって……。
◆「猟虎」とは、ラッコのこと。誰に対してもいうまま・されるままになる人のことを、「猟虎の皮」という。ラッコの毛は、なでつけるとどちらの方向にもなびくからだ。いるなあ、そういう人って……。
◆では、「虎落笛」ってなんでしょう?
ヒント1、英語ではギリシャ神話の風の神の名前を使って「エオロスの音」と呼ばれています。
ヒント2、冬の強い北風が竹垣や電線に当たって発する笛のような音のことです。
答えは「もがりぶえ」。えっ、知らない? 「虎が落とした笛」、それくらい鋭い音がするのです。
◆漢字の問題をもう一つ。「御虎子」って何でしょう?
ヒント1、どこに家庭にでもあるというものではありません。
ヒント2、これに座ります。
ヒント3、白鳥の形が一般的です。
そう、これは、「おまる」です。