★雑木話★
ぞうきばなし

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 ・ 第百十一段の二 ・  二十四節気「秋の部」
   (この段は、
第百十一段の一からの続きです) 

 季節を先取りするっていうのは、いいことなのかもしれない。
 毎年
立秋のころは、まだまだ暑い日が続いていて、お世辞にも秋という感じはしないのだが、気分だけでも涼しくなる。しかし、涼しいのは気分だけで、実際にはかなり暑いから、これを称して「残暑」という。喜んでいるのはセミぐらいだろうか。
 さて、1998年の立秋は8月8日だった。しかし、その前年の立秋は8月7日であった。日が異なっているのがわかる。以前にも述べたが、二十四節気は、先に決まった日があるのではなく、黄道上を冬至点を起点にして15度ずつ24等分しているわけだから、天文学的に決定しているわけだ。さらに、ほぼ4年に1度やってくるうるう年の関係もあって、その日付は微妙に動くことになる。
たとえば、国民の祝日でもある春分の日や秋分の日は、春分や秋分の瞬間、つまり、太陽の黄経が0゜、180゜となる時刻を含む日とされている。
 ちょっとやってみよう。
 太陽が秋分点(秋分の瞬間!)を通過してから再び秋分点を通過するまでには、平均して約365.2422日、つまり365日と5時間49分ほどかかる。この時間を順々に足し算していけば、日付の変化が読みとれるはずだ。今年(2001年)の秋分点通過時刻は、9月23日8時04分になる。ここをスタートとして考えてみよう。前年の9月23日というのは、年初から数えると266日目に当たるから、以降の春分点通過時刻は以下のようになる。

  2001年 =266日+ 8時04分          秋分の日 9月23日
        266日+ 8時04分+365日5時間49分
  2002年 =266日+13時53分          秋分の日 9月23日

 となり、来年の秋分の日も今年と同じ9月23日ということになる。その後どうなるかも計算してみよう。

        266日+13時53分+365日5時間49分
  2003年 =266日+19時42分          秋分の日 9月23日
        266日+19時42分+365日5時間49分
  2004年 =267日+ 1時31分          秋分の日 9月23日

 というように、2004年の秋分の日は267日目、1日ずれることになる。ただし、すこしことわっておく必要があるのは、2004年はうるう年だということ。2月29日がある分、日付が1日戻されることになり、結局9月23日が秋分の日だ。
 このように以降の年も計算していくことができるわけだが、実際の計算は、月の引力や金星など他の惑星の影響も受けるので、かなり複雑なものになる。したがって、正式な日付というものは、天文学的な計算により官報によって公表されることになる。それまでは、春分の日・秋分の日がいつかというのはわからないということだ。
 えっ、そんなむずかしい計算しなくても、休日だけ享受できればいいって?
 ごもっともです。


【メモ】
◆「国民の祝日に関する法律」の第2条[祝日の内容]には、秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」日と定められている。

◆では、さっそく二十四節気の「秋の部」。立秋や秋分は有名だから、その他の4つの解説を。

■ 
処暑(しょしょ) ■
太陽の黄経が150度に達するときで、新暦では8月23日ころにあたる。この「処」は「止まる」の意味で、「暑さがやむ」時期ということ。このころ、天地が澄み、稲が実り始める。

■ 
白露(はくろ) ■
太陽の黄経が165度に達するときで、新暦では9月8日ころにあたる。秋の気配が強くなり、白い露が結び始める頃。

■ 
寒露(かんろ) ■
太陽の黄経が195度に達するときで、新暦では10月8日ころにあたる。「寒露」とは、晩秋から初冬にかけて降りる露のこと。

■ 
霜降(そうこう) ■
太陽の黄経が210度に達するときで、新暦では10月23日ころにあたる。晩秋の晴天が続き、霜の降り始める時期。

◆寒露とは漢字が異なるが、「甘露」というのもある。これは、不老不死の薬。天子がよい政治を行うと天から降ってくるという甘い露だ。また、古代インドの伝説では、神々の飲み物をいう。

◆霜降とは漢字が異なるが、「桑港」も「そうこう」だ。これは、サンフランシスコの漢字表記。「糟糠の妻」といえば、貧しいときから苦労をともにしてきた妻のこと。

◆「
二百十日」という雑節もある。立春から数えて210日目、9月1日ころにあたる。この日が暦に取り入れられたのは、江戸中期の暦学者、渋川春海(はるみ)の研究による。
 ある漁師から立春後二百十日目、二百二十日目に毎年必ず暴風雨が来るということを聞き、春海が過去の記録を調べたところ、なるほどその傾向があったので、その事実を幕府に進言し、自分が編纂した貞享暦(じょうきょうれき)に記入したのだ。

■ 
渋川春海 ■
1639〜1715、江戸中期の天文暦学者。幕府碁所の安井家に生まれ、14歳で父の跡を継ぎ安井算哲(さんてつ)と名のる。晩年に渋川と改姓。勤務のかたわら、山崎闇斎(あんさい)に和漢の書をならい、松田順承らに暦学を学ぶ。天文観測器である渾天儀(こんてんぎ)を改良、天体を観測し、当時使われていた宣明(せんみょう)暦の誤差を指摘する。さらに、日本初の暦法を作り、これが1685年(貞享2)から貞享暦として施行される。彼はのちこれらの功績によって、幕府天文方に登用された。

◆涼(りょう)を呼ぶもの。
 かすかな風に鳴る風鈴。個人的には南部鉄で作られたものが好きだ。
 清涼飲料水。すっと汗がひく。飲んだ後の空き缶やペットボトルはきちんとゴミ箱へ。この「ペット」とは、「ポリエチレン・テレフタレート(PolyEthylene Terephthalate)」の略。
 涼子ちゃん。ファースト写真集『R』と『H』といえば、広末涼子の写真集。
 ヒグラシの声。「カナカナカナカナ……」とヒグラシが鳴くのを聞くと、夏も終わりだなと感じる。
「カネカネカネカネ……」と鳴くのは「ソノヒグラシ」。これも涼を呼ぶ。

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