★雑木話★
ぞうきばなし

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 ・ 第百十一段の一 ・  二十四節気「夏の部」
   (この段は、
第百十一段からの続きです)


■ 
太陰暦 ■
月の満ち欠けを周期とした暦。1ヶ月の長さが朔望月(さくぼうつき)(約29.53日)近くになるように設定される。イスラム暦は、太陰暦として有名である。

 ということだ。計算するとわかるが、

   29.53×12=354.36

 太陰暦の1年は、太陽暦の1年よりも約11日も短い。だから、太陰暦をずっと使い続けていると、1月に田植えをしたり、8月に雪が降ったりということも起こってくる。こんなことだと生活になじまないから、太陽暦とも関連させて、すこしずつ補正しながら太陰暦を使おうということになる。
「太陰暦をやめればいいじゃないか!」
 とは、すぐにはならない。何しろ、新月がその月の1日、上弦の半月なら7日、満月なら15日――月を見ればだいたいその日の日付がわかるというのは、非常に便利だ。だいたい、「月」の発想は、そこからきているのだから……。

■ 
太陰太陽暦 ■
 月の満ち欠けの期間をもとに、太陽の運行も考慮した暦。

 では、どのように考慮というのか?
 簡単に言うと、ズレが大きくなった時点で、「閏月(うるうづき)」を設けるのだ。
 ではでは、その「時点」とは、どうやって決定するのか。そこで登場するのが、「二十四節気」だ。
 
第百十一段で、「定気法」について述べた。黄道上を冬至点から始めて15度ずつ24等分するし、それにより二十四節気を決定するというものだ。
 その二十四節気は、大きく二つに分類されている。冬至から次の冬至までを12等分した区分点である「中気」、中気と中気の間を2等分した区分点である「節気」だ。だから、「二十四節気」というのは、12の中気と12の節気を合わせた名称ということになる。

 春(正月から3月まで)
  立春(正月節気)  雨水(正月中気)  啓蟄(2月節気)
  春分(2月中気)  清明(3月節気)  穀雨(3月中気)

 夏(4月から6月まで)
  立夏(4月節気)  小満(4月中気)  芒種(5月節気)
  夏至(5月中気)  小暑(6月節気)  大暑(6月中気)

 秋(7月から9月まで)
  立秋(7月節気)  処暑(7月中気)  白露(8月節気)
  秋分(8月中気)  寒露(9月節気)  霜降(9月中気)

 冬(10月から12月まで)
  立冬(10月節気)  小雪(10月中気)  大雪(11月節気)
  冬至(11月中気)  小寒(12月節気)  大寒(12月中気)

 で、先の計算の通り、太陰暦の1年は、太陽暦のそれよりも約11日短い。太陰暦のまま月が進んでいくと、やがて、中気を含まない月が出てくる。この月が、
閏月と呼ばれるもので、その前の月の名前に「閏」をつけて表される。たとえば、前の月が5月なら、「閏5月」という具合だ。
 つまり、太陰太陽暦では、その月に含まれる中気によって、「月」が決定されるのだ。夏至が含まれている月が「5月」で、雨水が含まれている月が「正月」ということになる。
 閏月がある年は、1年が13ヶ月あるということになる。サラリーマンは、年収が増えてうれしいかも!?


【メモ】

◆旧暦では、「立春は正月だ」という思い込みがあるが、これは間違っている。雨水が含まれている月が「正月」なのだから、場合によっては、立春が12月の後半になる場合がある。

◆「月数(よ)めばいまだ冬なりしかすがに 霞たなびく春立ちぬとか」
 万葉集に収められている大伴家持の歌だ。この年は、12月のうちに立春が来てしまった。立春が来たのだから春といえるし、12月なのだからまだ冬だし……、というユーモアのある歌だ。

◆2001年の場合、以下のようになっている。

 ・旧暦4月……小満(4月中気、新暦の5月21日)を含む月
  旧暦4月1日(新月)……新暦4月24日
  旧暦4月29日………………新暦5月22日

 ・旧暦5月……夏至(5月中気、新暦の6月21日)を含む月
  旧暦5月1日(新月)……新暦6月21日
  旧暦5月29日………………新暦7月20日

 こうなると新暦の5月23日から6月20日までは、中気を含んでいない「月」になる。つまり、これが「閏5月」となるわけだ。あ〜、ややこしい。

◆こんなにややこしいのだから、旧暦では、その年に閏月があるのかないのかなんてことは、一般の人には分かりようがなかった。だから、カレンダーが絶対に必要だった。

◆カレンダーについて、「知りたい内容」も今とは随分異なる。
 閏月の有無、閏月があるなら何月なのか、各月の大小(30日なのか、29日なのか)――このあたりが、旧暦カレンダーの重要事項だ。

◆では、さっそく二十四節気の「夏の部」を覚えていこう。立夏や夏至は有名だから、その他の4つの解説を。

■ 
小満(しょうまん) ■
太陽の黄経が60度に達するときで、新暦では5月21日ころにあたる。草木の実がひととおりの大きさに育つ時期。「小」は「ほぼ」「やや」の意味で、「小満」とは「ほぼ満足できる」ということ。

■ 
芒種(ぼうしゅ) ■
太陽の黄経が75度に達するときで、新暦では6月5日ころにあたる。「穀物の種をまくころ」という意味。「芒」とは、稲や麦などの実の外側の先にあるかたい毛のこと。

■ 
小暑(しょうしょ) ■
太陽の黄経が105度に達するときで、新暦では7月8日ころにあたる。梅雨が上がって、暑さが厳しくなる時期。

■ 
大暑(たいしょ) ■
太陽の黄経が120度に達するときで、新暦では7月23日ころにあたる。「暑さが最も厳しい時期」という意味。

◆二十四節気ではないが、「
半夏生(はんげしょう)」という雑節がある。夏至から数えて11日目にあたる日で、ドクダミ科の半夏(ハンゲ)が目を出す時期という意味だ。
 旧暦の時代、この日になると空から毒気が降ってくるということになっていて、毒にあたらないために、井戸にふたをしなければならない、野菜を採取してはいけない――と、されていた。

◆空から毒気が降ってくるなら、外出できないなぁ。

◆関西では半夏生の日に、「半夏蛸」といってタコを食べる風習がある。タコのように地面に吸い付いて、タコの足(腕)のように稲が広がってほしいという願いが込められている。

◆大阪、奈良で暮らしてきたが、個人的にはそんな風習は知らない。
 半夏生に関係ないけど、「蛸足配線はやめましょう」という言い伝えなら知っている。

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