★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第百六十段 ●  指関節曜日判定法

「何やってんの? じっと手のひらを見つめて……」
「やあ、稲田君。確認してるんだよ」
「手のひらを?」
「いや、そうじゃない。指の関節だよ」
「え? 指の関節を確認しているの?」
「いや、正確に言うと『指の関節で』……だね」
「指の関節で……、何を?」
「曜日を」
「今日は、金曜日だよ」
「そんなことくらい分かってるよ」
「分かってるなら、何やってるの?」
「だから、曜日を確認しているのさ」
「わかんないなぁ〜」
「あのね、杉野君にすごいことを教わったんだよ」
「何?」
「ずいぶん先の日の
曜日を確認する方法だよ」
「そんなのカレンダー見れば?」
「カレンダーが身近にないときもあるだろ!」
「いや、僕はたいてい手帳を持ってるから大丈夫」
「稲田君は、そうだろうけど……。そうじゃない人もいるから……」
「まあいいや、その方法とやらを教えてよ」
「なんだ。結局知りたいんじゃないか。あのさ、『今年の10月9日は何曜日でしょう?』なんて、突然聞かれたら答えられる?」
「カレンダーを見れば分かる」
「カレンダーがなかったらの話だよ」
「それはちょっと即答はむずかしいね」
「だろ。そのときに、指の関節を使って判定するんだ」
「ほお、それは興味深いね。どうするの?」
「それが少々覚えるのが大変なんだ」
「だったら、すぐには使えないじゃないか」
「いや、でも、慣れたら大丈夫だと思うよ。使う関節は左手の人差し指の3つ、中指の3つ、それに薬指のいちばん上の関節の7つだよ」
「なるほど、その7つの関節に曜日を対応させるわけだね」
「さすが、稲田君。理解が早いね」
「でも、そうだったら、何も左手にこだわることはないはずだね。右手でもいいでしょ」
「そうだね。でも、既にずっと左手で練習してきたんだから、左手ということにしておいてよ」
「まあ、いいでしょう。で、その続きは?」
「覚えることが2つあるんだ。一つは、『月の配置』。こんな感じになるんだ。よく覚えてよ」

 図1        +――+
           |  | +――+
      +――+ |  | |  |
      |  | 2,3,11+ |  |
      |  | |  | +4,7 + +――+
      +1,10+ |  | |  | |  |
      |  | +6―+ |  | |  |
      |  | |  | +――+ +――+
      +5―+ |  | |  | |  |
      |  | |  | |  | +――+
 +――+ |  |/+9,12+―+――+\|  |
 |  | +8―+           +――+
 |  | |                 |
 +――+ |                 |
 |  | |                 |
 |   \|                 |
 |                      |
  \                     |
   \                   /
    \                 /
     \―――――――――――――――/


「下手な絵だね」
「分かればいいんだよ、分かれば。こんな風にね、7つの関節に、月を配置いていくんだ」
「何だか、順番があるようで無いんだね」
「そうなんだ。だから覚えにくいんだ。でも、これは何とかして覚えてもらわないと……」
「カレンダー見た方が早くないか?」
「話を最後まで聞く気あるの?」
「ごめん、ごめん。で、それからどうするの?」
「もう一つ覚えておかないとできないことがあるんだ」
「何?」
「その年の元旦の曜日」
「おいおい。そんなの覚えてないだろ、普通は……」
「そうなんだ。でも、この『指関節曜日判定法』には、必須の条件なんだ」
「ふ〜ん。じゃあ、今年(2000年)の元旦は何曜日だったの?」
「土曜日」
「よく知ってるね」
「覚えたのさ」
「来年は?」
「来年は来年の風が吹く」
「何それ。で、今年の10月9日は何曜日なの?」
「えっと……、ちょっと、待ってよ。……日曜日だ!」
「違うね。月曜日だよ。今年はうるう年だよ」
「あ、そうか。でも、よく分かったね。カレンダーを見たの?」
「いいや。今教えてもらった方法で、『関節的に』判定したんだよ」
「まだ、最後まで教えてないのに……」


【メモ】

◆骨が折れるのは、骨折。
関節が抜けるのは、脱臼。

◆投げ技は、「スープレックス」。関節技は、「サブミッション」。

◆柔道で固め技といえば、押え技、絞め技、関節技の3種類。

◆「じっと手を……」といえば、
石川啄木
「はたらけど はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る」
 この歌は、彼の第1歌集『一握の砂』に掲載されている。

◆石川啄木の「啄木」とは、キツツキのこと。森鴎外の「鴎」は、カモメ。

◆『一握の砂』を書いたのは石川啄木。詩集『一握の玻璃(はり)』を書いたのは、西条八十。

◆石川啄木の歌集は2つある。『一握の砂』と『悲しき玩具』。

◆「
満を持す」という言葉がある。その時が来るのをじっと待っているという意味だが、このことばの語源は、弓。弓を十分に引き絞ったままの状態が「満」だ。

◆「日和見」もじっとうかがう様子を表している。もともとは「海の天気を見る」ことを意味している。

◆さて、2000年の10月9日の曜日を、どうやって判定するか? 順を追って説明しよう。
 本文にもあったように、2000年の元旦は土曜日。つまり、1月1日は土曜日ということだから、先に1月を配置した人差し指の第1関節に土曜日を配置する。あとの曜日は、次の図のように配置する。曜日の配置は、順序よく進むので、覚えやすい。

 図2        +――+
           |  | +――+
      +――+ |  | |  |
      |  | + 火 + |  |
      |  | |  | + 金 + +――+
      + 土 + |  | |  | |  |
      |  | + 水 + |  | |  |
      |  | |  | +――+ +――+
      + 日 + |  | |  | |  |
      |  | |  | |  | +――+
 +――+ |  |/+ 木 +―+――+\|  |
 |  | + 月 +           +――+
 |  | |                 |
 +――+ |                 |
 |  | |                 |
 |   \|                 |
 |                      |
  \                     |
   \                   /
    \                 /
     \―――――――――――――――/

◆10月9日の曜日の判定法。
 10月だから、10月に対応している人差し指の第1関節からスタートする。ここが10月の1日の曜日を示している。以下順番に、

  人差し指第1関節→人差し指第2関節→人差し指第3関節→中指第1関節→
  中指第2関節→中指第3関節→中指第3関節→薬指第1関節→……

 それぞれの関節を右手の指や、左手の親指で押さえながら「9日」になるまで数えていくわけだ。

◆すると、「9日」が人差し指の第2関節に対応することが分かる。この関節には、日曜日が配置されている。
 ただし、2000年はうるう年。3月1日以降の日を判定するときには、曜日を後ろに1日ずらすこと。そうすると、月曜日だと判定できる。

◆10月9日は月曜日なんだけど、今年に関していえば、この日は休みだ。体育の日です。ハッピーマンデーというやつですね。

◆「○月30日」なんかだと、関節を押さえる回数が多くて大変なんだけど、慣れたらそれなりに早くなる。

◆稲田君に指摘された。
「元旦の曜日を覚える必要なんてないじゃないか。たいていの場合は、今日の曜日くらい分かっているんだから……」
 なるほど、今日の曜日が分かれば、図2の曜日の配置はできあがる。とすれば、やはり、図1の月の配置を覚えることが必須条件なんだ。

◆もっと、稲田君に指摘された。
「なんのことはない。平年だったら、2月、3月、11月のカレンダーは曜日の配置が同じになるってことさ」
 そうだったのだ。9月の12月の曜日の配置も同じになる。カレンダーがあったら、確認してみたら?

【情報提供】
 以下の方から、情報を提供していただきました。ありがとうございます。
  ・権兵衛さん
  ・若芽さん   http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/8698/
  ・MIGさん  
http://www.sano.osaka.med.or.jp/ispchp/mig/index-j.htm

 また、今回の内容については、下記のURLに詳しい説明がありました。
  「手暦」ついて 
http://www.mahoroba.or.jp/~gonbe007/zatsu/koyomi.html#dogu
  gonbe007さんにご協力を頂きました。 
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/


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