● 第百七十一段 ● 視力検査のC
「はい。右目0.2、左目2.0です」
タイプミスではない。実際の視力だ。
中学生の頃は、両方とも2.0だったのだが、高校生の頃からやけに右目だけが衰えてきた。視力のことが話題になって、自分の視力を伝えることになると、どうしても周りの人を驚かせることになる。
テレビの見過ぎか? 今は週に1〜2時間程度しかテレビを見ないが、高校時代はテレビばかり見ていた。しかし、そのことが原因なら、両方の目の視力が落ちてくるはずだ。やはり、寝ころんだまま本を読むのがいけなかったのかなぁと思う。
視力検査といえば、「C」のような形がたくさん並んだ視力表。
「左。……右。ええと、右下」
分からないときは、一か八か、勘で答えることもあった。そんなずるいことをしているのは……、え? みんなやってる?
さて、0.2だとか、1.2だとか、視力検査のこの数値は、いったい何なのでしょう? 実は、今まで何も知らずに検査してました。数値が大きいほどよく見える……ことぐらいは知ってましたが……。
視力というのは、眼で2点を区別する能力のこと。区別できる2点間の最小距離を測って、それを「視角」で表します。そして、その視角の逆数に比例する値が「視力」とされています。
具体的には、視力の単位は、国際協定で決められています。
視力表に並んでいる「C」のような形を「ランドルト環」と言います。フランスの眼科医ランドルト(1846〜1926)にちなんで名付けられました。
視力表には、大小のランドルト環がたくさん並んでいますが、大事なのは環の大きさではなく、あの環の切れ目なのです。
あの輪の切れ目を探して、
「上? いや、下かな?」
とやるわけですが、輪の切れ目が分かるということは、輪の2つの端が区別できているということになります。
ランドルト環の切れ目が1.5mmのとき、これを5m離れた位置から見ると、ちょうどその視覚が1分(1度の60分の1)になります。このサイズの切れ目を見分ける能力(視力)が、1.0です。
切れ目がこの2倍の大きさ、つまり3mmになったとき初めて見分けられた場合は、視覚が2分ということになります。視力はこの逆数を使って表すということですから、1/2、つまり、0.5ということになります。
え〜と、誰かさんの視力が4.0だと話題になったことがありましたが、これはつまり20mの距離から1.5mmの切れ目を判別できるということになります。【メモ】
◆視力は、目覚めてから眠るまでの間に徐々に落ちていくそうな。だから、視力測定をするなら午前中がよい。
◆視力には2種類ある。「裸眼視力」と「矯正視力」だ。この区別についての説明は必要ないだろう。
◆小学校や中学校で、裸眼視力を測定する場合、最近はA、B、C、Dの4段階で記録されることが多いです。A:1.0 以上……教室での勉強に支障なし。
B:0.7〜0.9……教室での勉強に不便なことがある。
C:0.3〜0.6……教室での勉強に不便なことが多い。
D:0.2 以下……教室での勉強に不便あり。◆視力1.0に該当するランドルト環「C」のプロポーション。
身長…………………7.5mm
ウェスト……………1.5mm
切れ目部分の幅……1.5mm
◆先にも説明したように、視力0.5用のランドルト環の大きさは、1.0用の2倍。0.2用だと5倍。0.1用なら、なんと10倍の大きさ。
◆1.0用のランドルト環の切れ目を、半分の距離(2.5m)で見分けられた場合の視力は0.5。
◆この方法を利用すれば、視力表のいちばん上のランドルト環の向きがわからないときときでも、視力を測定することができる。
規定のラインから1m前に出て、たとえば、4mの位置から、0.1用のランドルト環の向きが判別できたときは、0.08ということになる。
◆視力表のランドルト環は、上から、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0。全部で12段。
◆ランドルト環の他に、ひらがな、カタカナ、数字、絵などが併記された視力表もある。
「あの、カタカナ、ロシアの有名な音楽家の名前になっているんだよ」
と、稲田君にだまされたことがあった。一瞬でも本当かなと思った自分が悔しい。でも、なんて書いてあるのか知らない。
◆人物などの評価を見損なうときには「狂い」、目上の人に認められて気に入られるときは「かなう」物ってな〜んだ?
それは、眼鏡。
◆このように視力を検査した結果、今度は眼鏡を作らねばならないということもあるでしょう。眼鏡屋さんは、そのとき、「ディオプトリ」や「度」などの単位を使ってあなたに説明するかもしれない。
「ディオプトリ(dioptorie)」は、眼鏡レンズの屈折率を表す単位(記号、D)。レンズの焦点距離をメートル単位で表したものの逆数だ。凸レンズなら正、凹レンズなら負の値になる。
たとえば、焦点距離が0.5メートルなら、2分の1メートルだから、ディオプトリはその逆数で2ということになる。
◆眼鏡のことで「度が強い」「度がきつい」とよくいうが、「度(p)」は、焦点距離をインチ(0.0254メートル)単位であらわしたもの。
ディオプトリとは、以下の関係がある。
1
D=――――
0.0254p
したがって、「度が強い」「度がきつい」というのは、ディオプトリの絶対値が大きいことをいう。
◆中央競馬の競馬学校を受験するには、左右とも最低0.8以上の裸眼視力が必要とされる。
◆運転免許証用に必要となる視力は、片眼で0.3、両眼で0.7以上とされている。
右目だけが0.2なので、これを満たしていないわけだが、なぜか免許更新のときには、大丈夫なんだなぁ。
眼鏡? 確かに、右目の視力は0.2なのだが、眼鏡なんて今までに作ってもらったことはない。これからもいやだなぁ。