● 第百七十四段 ● −196℃って、何の温度?
チューハイに、「−196℃」というがあります。
お酒はあまり飲まないのですが、夏の暑い時期にはチューハイを飲むことだってあるのです。また、この時期、「夏限定」チューハイが売り出されることもあり、ついつい手が伸びてしまうのです。
で、先日、手が伸びてしまったのが「−196℃」というチューハイでした。レモン、グレープフルーツ、ぶどうなどの果実を−196℃で瞬間凍結させた――とかなんか、缶にはかいてありました。それを細かく砕くか何かして、チューハイに混ぜ込んでいるのだろうなと想像しました。
そのときは、期間限定の和梨のチューハイを飲んでいました。飲みながら疑問が湧いてきました。
「−196℃って、何の温度なんだろう?」
近くで聞いていた小6の息子、脩(なお)が、反応した。
「そうか、−196℃じゃなくって、−200℃の方がスッキリするもんね」
「いやいや、より低い温度にするには、それだけお金がかかるだろうから、何かの理由で−196℃なんだと思うんだ」
「だったら、−195℃でもいいのにね」
「そうそう。それに、オレンジだって、レモンだって、和梨だって、みんな『−196℃』のシリーズなんだよ」
「わかった。ということは、果物によって温度を変えているわけじゃないんだ。『−196℃』が、きっと何か理由のある温度なんだ。こないだの78℃みたいに……」
「78℃? ああ、そうそう。こないだの78℃みたいに、何か理由があるはずなんだ」
「−196℃を、インターネットで調べたら?」
「そうだな。こういうことはたいてい会社のサイトには載っているはずだから……」
そばで、由希子が何か言いたそうな顔で、結局、この話には加わってこなかった。
「わかった?」
「わからん! −196℃で瞬間凍結して、それをパウダー状に微粉砕して、アルコールに直接浸すとは書いてあるんだけど、なぜ、−196℃なのか、−196℃が何の温度なのかについては書かれてないんだ」
【メモ】
◆−196℃が何の温度なのかということについては、おかしな方向から答えが見つかった。由希子が、
「液体窒素じゃないかな?」
と言い出したからだ。
脩の足の裏にタコができた。歩くと痛いようなので、医者に行っている。聞けば冷やして治すらしい。冷やすと言っても、氷くらいの温度ではなくて、−190℃くらいらしい。そこの先生は−193℃だとか、-195℃だとか、聞く度に違う温度を言っているが、だいたいそのあたりの温度だそうだ。由希子は、その話を思い出したらしい。私も、「おお! それだ」と思った。
どうやら、液体窒素で冷やしているらしい。液体窒素を綿につけて、それをタコに当てて、それこそ瞬間凍結させることで、治療しているのだろう。治療はかなり痛いと、脩が言っていた。
◆窒素の沸点を調べたら、当たりだった。−195.8℃、この温度を、「液体窒素温度」と呼ぶらしい。
そういえば、第7段の「原子番号7番の窒素」で扱ったのに、すっかり忘れていた。
◆本文中に78℃についての話題が出た。
先日、子ども達にソーセージ作りを体験させた。もちろん、私はそばでその様子を見聞きしていた。そのお店のショフが、丁寧に説明してくれた。羊の腸に肉を詰めて、それをソーセージくらいの長さでクルクルっと巻くと「節」ができる。見事なもんだ。
このソーセージをお湯に入れてボイルするのだが、そのとき言われたのが、「温度計をよく見て、絶対に78度以上にしないこと!」
「温度計が76℃をさしたら、火を止める。火を止めたからといっても、温度上昇はすぐには止まらない。余熱でまだ水温が上がる。だから、76℃くらいでとめること!」
へぇ、なるほど。それくらい気をつかうことなんだ。
◆でも、78℃超えたらいけないのかが、わからなかった。子どもたちが体験しているよこから、たまらず尋ねてしまった。そしたら、すぐに答えてくださった。
78℃を超えると、腸が溶けてしまうのだそうだ。つまり、腸の皮を作っている脂肪がとけてしまうのだそうだ。
なるほど、油は温度が低いと固まっているが、温度を上げると液体になる、そういうことか。
◆ドイツ語で豚肉という意味のSauと、香辛料のセージSageがくっついて、「ソーセージ Sausage」という言葉が生まれた――という話は有名ですが、他の説もあるらしい。
ラテン語の「塩漬け Salsus」という言葉が由来だとか、「塩水 Sauce」と「寝かす Age」の合成だとか……。
◆こどもたちは、ウィンナーソーセー作りを体験した。
ウィンナーに使われるのは、豚肉と牛肉を塩漬けしたもの。これに、香辛料を加えて練り合わせ、羊の腸に詰めた後、燻煙あるいはボイルしたらソーセージのできあがり。
「ウィンナー」というくらいだから、オーストリアのウィーンが発祥。
◆では、フランクフルトとは何か? ウィンナーと、どこがどうちがうのか、太さだけの違いなのか?
どうやら、日本では、JASによりソーセージの種類が定義されている。・直径20mm未満の物……ウィンナーソーセージ
・20mm以上36mm未満の物……フランクフルトソーセージ
・36mm以上の物……ボロニアソーセージなんだ、地名との関係はかなり薄れてしまってるんだ。
◆上記の定義とは別の定義もある。・羊の腸に詰めた物……ウィンナーソーセージ
・豚の腸に詰めた物……フランクフルトソーセージ
・牛の腸に詰めた物……ボロニアソーセージこっちの定義の方が、もともとらしい。だから、太さにかかわらず、羊の腸につめられていたら、それは、ウィンナーソーセージと呼ぶらしい。
◆魚肉ソーセージというのもあるが、あれは、厳密にはソーセージではない。ちくわやかまぼこに近い。
◆ソーセージがたくさん食べられるようになると、当然、腸が足りなくなる。1頭の羊の腸はかなり長いらしいが、それでも、やはり、足りなくなる。
そこで、今では、人工の腸で代用されている。人工腸の方が、本物よりも安いし、保存もしやすい。また、「78℃を越える温度でボイルしないように……」なんて、心配も要らない。
◆で、人工腸の方が主流になってきているので、さきほど述べたように、腸の種類による分類ではなく、単に太さによって、分類されているわけだ。
◆疑うわけではないのだが、家で、ネットで、78℃と脂肪の関係について調べてみた。本当に78℃を越えると腸の壁が破れてしまうのか?
しかし、そのあたりの説明がうまく見つけることができなかった。
ご存じの方は、お知らせください。
◆ボロニアソーセージというものを、食べたことがない。食べてみたい。