★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第百七十七段 ●  ビオラにしましょ!

11月、12月は、店先に春の花の苗がたくさん並ぶ、楽しい時期です。
 夏の花が終わって片付けた後、「レインボーステップ(玄関までの7段の階段を我が家ではそう呼んでます)」が寂しいと思ってかれこれ1ヶ月。この秋の時期にいい花の苗がいつも見つからず、困っていました。今年は、トルコキキョウを植えてみましたが、あまりぱっとしませんでした。

 店頭にビオラやパンジーが並び始めるとそわそわしてきます。昔は、これらの苗の出荷はもっと遅かったように思います。また、年々苗の品種改良が進み、たくさんの種類の苗が、売り出されるのでどれにしようかとても悩みます。値段も安いものから高いものまで幅が広くなったように思います。
 クリスマスの頃には、苗が植木鉢にしっかりと定着して元気にどんどん咲き始めます。お正月が終わる頃には、もう一回り大きな鉢に植えたほうがよかったかもと思うことがよくあります。

 ビオラとパンジーはどちらもスミレ科です。全体的に大きい花がパンジーで、小さいものがビオラです。最近は、中型ビオラもあって大きさだけでは、見分けることが難しくなってきました。
 私は、パンジーよりビオラを選びます。小花が大好きということもあるのですが、二つには決定的に違う点があります。ビオラは、花が咲き終わって、その花がらを摘んでもまた新しいつぼみがついて再び花をさかせるのです。パンジーにはそのようなことはないそうです。
 5月の終わりごろから、全体に花が咲き終わったように元気のなくなる時期があります。そこで、土から5cmぐらいのところで、思い切って茎を切ります。「切り戻し」といわれる作業です。その後肥料をあげ、日当たりのよいところに置いて、水やりをします。1ヶ月後ぐらいには、前回よりは小振りな花ですが、また咲き始め楽しませてくれます。
 夏の花がまだ植木鉢の中で少し小さく寂しげなときに、2度目のビオラがレインボーステップを華やかにしてくれます。
 花がら摘みは、私の大好きな作業です。次に咲くのを待っている花のために大切な一手間なのです。
 11月から、7月の初め頃まで我が家の玄関を素敵に演出してくれるビオラ、今年もそろそろ色とりどりの花を咲かせ始めました。

――――――――――――※ここまで、由希子の文章



【メモ】

◆花のビオラと楽器のビオラも、viola と書く。これらには、何か関係があるのか? 昔からの疑問だった。今回の由希子の文章に触発されて調べてみた。
 結論は、「関係あり」。花のビオラが先だ。
 楽器のビオラの胴の部分が、ビオラの花の形に似てるので、この名前が付いたとか。
 ラテン語の「vitulor(とても喜ぶ)」からとも名付けられたという節もあり。

◆ちなみに、バイオリンは「小さなビオラ」という意味。
    viola+ino(ino=小さな)

◆オーケストラを編成する弦楽器で、バイオリンとチェロの間の音域を担当する楽器がビオラ。
 ビオラより1オクターブ低いのがチェロ。

◆コントラバス、チェロ、バイオリン、ビオラの弦の数は、全て4本。

◆ピアノ三重奏に使用する楽器は、バイオリンとチェロとピアノ。

◆ギリシャ神話の最高神ゼウスは、ヘラという妻がいるのにもかかわらず、彼女の巫女であるイオを愛してしまいます。
 ヘラに逢い引きの場面を見つかりそうになったゼウスは、あわててイオを牛の姿に変えてしまいました。
 牛になってしまったイオは悲しみます。まわりは雑草ばかりで、食べる草さえありません。かわいそうに思ったゼウスは、スミレをたくさん生やしました(このとき、スミレは葉っぱだけで、花はなかった)。

◆ギリシャでは、スミレのことを「イオン」と呼ぶそうな。

◆しかし、ヘラは鋭い。この牛がイオだと見破ります。
 ヘラはイオを星にしてしまいます(ゼウスが星に変えたという話もある)。
 ゼウスは、イオを忘れないために、彼女の瞳と同じ色である「紫」を、スミレの花の色にしたのでした、
 violaはラテン語で「紫」という意味。
 ということで、ビオラの話から、2009年の干支である牛につながったのでした。

◆そうか! 星にされたイオが、「おうし座」なんだ――と一瞬考えたが、イオは女性なので「おうし」というのはおかしい。
 で、おうし座について調べてみたら、なんと、ゼウス自身が姿を変えたものだという神話が見つかった。

◆フェニキア王の娘エウロパが海辺で遊んでいると、どこからか白い牡牛が現れた。
「私の背中に乗ってごらん」
 そんなそぶりを感じたエルロパは、その誘いに応じ、牡牛の背中に。すると、牡牛は海の中へとどんどん入っていきます。エウロパは驚きますが、怖くて牡牛の角にしがみつくのがやっと。気がつくと、陸地は遠くに見えています。
 この牡牛は、ゼウスが姿を変えたものでした(ウシが好きなのね)。ゼウスはエルロパを自分の何番目かの妻にするつもりで連れ去ったのです(ゼウスは、本当に女の人が大好き)。
 牡牛は地中海を越えて、クレタ島にたどり着きます。そこで、二人は結婚します。
 ということで、エウロパは、「ヨーロッパ」の語源となりました。
 また、夜空のおうし座は、ゼウスが変身した牡牛の姿だといわれています。おうし座では、牛の姿が上半身しか描かれていないのですが、これは、下半身が海水面下にあり見えないためだとのことです。

◆「スミレ」は、花の形が大工道具の「墨入れ」に似てるからとか。

◆唱歌『春の小川』で岸に咲いているのは、スミレとレンゲ。

◆英語で“forget-me-not”といえば「忘れな草」。“kiss-me-quick”といえば「三色スミレ」。

◆イエス・キリストがはりつけにされたとき、十字架の影が落ちた場所に咲いた花が、スミレだといわれている。

◆「パンジー」という名前は、「考える」という意味のフランス語「パンセ」にちなんでいる。

◆鉢植えの花として人気があるセントポーリアは、キリマンジャロの原始林に咲く小さな花。「アフリカスミレ」とも呼ばれているが、スミレの仲間ではない。
 この花を発見したドイツの男爵の名前が付けられている。

◆宝塚歌劇団の生徒たちが、東京公演のときに泊まる宿舎が、すみれ会館。宝塚歌劇団の劇団員の寮の名前が、すみれ寮。

◆アニメ『ちびまる子ちゃん』で、まる子ちゃんのお母さんの名前が「さくらすみれ」。

◆魔法使いのサリーちゃんのお友達といえば、よし子ちゃんとすみれちゃん。

◆『すみれ色の涙』は、ジャッキー吉川とブルーコメッツの『こころの虹』(1968年)のB面に収録されていた。
 岩崎宏美がリメイクしてヒットしたのが1981年。。

◆『すみれSeptember Love』は、1982年に一風堂が歌いヒットさせた。1997年にリバイバルヒットさせたのは、SHAZNA(シャズナ)。
 SHAZNAは、2009年3月に活動を終了する予定。

◆「懐かしいにおいがした すみれの花時計」で始まる歌は、大黒摩季の『ら・ら・ら』。

◆『四季の歌』の中では、「春を愛する人は」、スミレの花のような人だと歌われている。

◆スミレが紫色だということについては、別の神話がある。
 ギリシア神話の美・恋愛・豊穣の女神といえば、アフロディテ。あるとき彼女が息子のキューピッドに尋ねました(やめとけばいいのに……)。
「お母さんとこのスミレ、どっちがきれい?」
 空気を読めないキューピッドは「スミレの方がきれいだ」と答えてしまいます。アフロディテは、かんかんに怒りました。その腹いせにスミレの花を叩きつけました(こわ〜)。
 すると、真っ白だったスミレの花が、紫色に変わってしまいました。このときからスミレの花は紫なのだそうです。

◆山路来て 何やらゆかし すみれ草……松尾芭蕉。


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