★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第百八十三段 ●  「生ビール」とは?

 私は家でも、外でも、お酒はあまり飲まない。
 家だと梅酒をすこし飲む程度だ。缶チューハイを飲むこともある。甘〜いワインなら飲める。渋いのや酸っぱいのはだめ。

「夏なら、ビールくらい飲むでしょう?」
と聞かれることもあるが、いや、飲まない。お酒の席なら飲むこともあるが、家で自分の選択でビールを飲むことは、まずない。

 だから、お中元などでビールが送られてくると困る。「秋味」が春まで冷蔵庫の中で冬眠したり、「冬物語」が2度目の冬を迎えたりする。
 そうなってはビールとしてもかわいそうなので、最近は、実家へプレゼントすることにしている。

 ま、そんな程度だから、お酒に関する知識はかなり乏しい。

 お酒の席だと、なぜだかかわからないけど、「とりあえずビール」ということが多い。ビールを飲めないわけではないので、おつきあいする。
 でもさあ、どこのビール会社だっていいじゃないの! 生ビールじゃなくたって、いいじゃないの! と思うのだが、こだわる方はこだわる。

 で、先日、はっと気がついた。「生ビール」ってなんだ?
 これだけよく聞く言葉なのに、どういうものなのか、知らないぞ。ビールは生でなきゃ、とおっしゃる方は、当然ご存じなのだろうが、私は知らない。

「生ビール」とは、何か? 調べることにした。

 ビールに含まれるアルコール分は、酵母が糖分から作り出したものだ。ここまで、OK。
 しかし、完成したビールに酵母が残っていると、いつまでもいつまでも活動を続けて、せっかくのよいバランスを崩してしまうことになる。
 どうすればいいか?

 方法は3つある。

 1つめ。
 ビールは鮮度が命。できたてのビールを飲めばよい。ドイツでは「うまいビールを飲みたければ、工場の煙突が見える範囲で飲め」という言葉が残っているそうだ。
 ビールって「熟成」って関係ないんだね。

 2つめ。
 酵母をやっつける。あるいは、活動を止めればよい。
 パスツールって方をご存じだと思う。彼は、ビールを60℃〜70℃で一定の時間(20〜30分)熱処理すると、酵母の活動を止めることができることを発見した。

 3つめ
 酵母を取り除けばよい。濾過するわけだ。
 酵母の大きさはおよそ0.01mm。小さいぞ! その小さいのを珪藻土やきめの細かな布を利用して、酵母を除去する。こうすれば熱を加えなくても、酵母を取り除くことができる。


 もうお分かりかと思うが、(日本では)熱処理をしないビールが「生ビール」だ。ビール工場から遠くに住んでいる人たちのために、3つめの方法が採用されているわけだ。
 特別な高度な技術を使っている分、値段も高くなる。

 きっと、生ビールはおいしいのだろう。その違いがわかるようになりたいような。どうでもいいような。


【メモ】
◆熱処理の方法を発見した人のことを、すこし。
■ルイ・パスツール
 1822〜1895、フランスの化学者、微生物学者で、近代的微生物学、生化学、免疫学の開拓者。酒石酸の旋光性や発酵の研究を行い、乳酸菌・酪酸菌を発見、発酵や腐敗が微生物によって起ることを明らかにし、自然発生説を否定、また低温殺菌法を考案。炭疽菌や狂犬病のワクチンを発明。

◆パスツールに関しては、「白鳥の頸」と呼ばれるフラスコが有名だ。
 フラスコの中にスープを入れて、放置しておくと腐敗する。
 そこで、「白鳥の頸」と呼ばれるフラスコを考案。この中にスープを入れてしっかりと煮沸すると、このスープは腐敗しない。
 このフラスコは、フラスコに細く曲がったガラス管を取り付けたもの。スープを煮沸すると水蒸気が外に逃げていく。温度が下がると空気はフラスコ内に入ってくるが、曲がった部分に貯まっている水が邪魔になって、微生物が入り込めない。したがって、フラスコ内は無菌状態になる。
 その後、ガラス管を根本から折ると、微生物が入り込み、腐敗が始まる。こうして、パスツールは生物の自然発生説を否定した。1862年のことだ。

◆パスツール殺菌法も有名だ。
 滅菌するには、高温で長時間かけて加熱すればよいのだが、そうすると加熱によりワインやビールのせっかくの風味や香りが失われてしまう。そこで、彼は実験を繰り返し、低温でも殺菌が可能なことを発見。

◆牛乳パックなどに「パスチャライズ」の文字を発見することがある。低温殺菌されたということだ。

◆本文で述べたように、生ビールについては、

  「1つめ」の生ビール……酵母菌の入った生ビール
  「3つめ」の生ビール……酵母菌を除去した生ビール

の2種類が考えられる。この件で1960年代後半に何を持って「生」とするのか『生ビール論争』が勃発した。
 1979年、公正取引委員会は、「生ビール」を「熱処理をしないビールのすべて」と定義したことで決着した。

◆では、逆に、生ビールではないビールをなんと呼ぶのか?
「熱処理ビール」とか、「火入れビール」などと呼ぶそうだ。「パスチャライズドビール」と呼んでもいいんじゃないの?

◆お店で、「熱処理ビールくださ〜い」と頼んでみよう!
 きっとお店の人は困るだろう。
 現在、流通しているビールのほとんどが生ビールだそうだ。「ほとんど」というのは、99%くらいらしい。こりゃ、もうちょっとで「すべて」だな。

◆FUNKEY MONKEY BABYS が紅白でも歌った『ヒーロー』の歌詞の中に、

  第3のビールで乾杯しよう

というのがあります。
 お恥ずかしながら、この曲で初めて「第3のビール」という呼び方があることを知りました。
 いえいえ、想像はつくんですよ。税金の関係でしょ。でも、しっかりとわかっているわけではありませんから、調べてみました。
 俗に「第3のビール」と呼ばれているものは、ビールメーカーは「新ジャンル」と称しています。

 ビール……麦芽使用率66.7%以上のもの
 発泡酒……麦芽使用率66.7%未満であるか
      政令で定められていない原料を使用しているもの
 新ジャンル(第3のビール)
  その他の醸造酒……原料が麦芽以外(大豆やえんどう)のもの
  リキュール……発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜたもの

 酒税法の分類が異なることにより、税金のかけられ方が変わってくる。第3のビールが安いのは、税金が安いから。
 でもさあ、麦を使用せずにビールっぽい味を出すなんて、これって、すごいことなんじゃないの?

◆現在、我が家には冷蔵庫に「麦とホップ」が1缶あった。もしかしたら、あるのではないかと思ったら、やっぱり存在していた。一体、いつのだろう?
 手にとって見てみたら、「リキュール」と表示されていた。

◆ビールを飲まない人間が、ビールについて調べて書いていても、どこかで失敗が起こる。だから、これくらいにしておこう。
 乾杯!


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