★雑木話★
ぞうきばなし

トップページへ

前の段へ   ★雑木話★のリストへ   次の段へ


 ● 第百八十二段 ●  カラットした話を……

 近畿地方も、梅雨に入った。今こうしてキーボードを打っている外で、雨が降っている。ジメジメした時期、カラットした話を……。

 ダイヤモンドなどの宝石の質量を表すとき、「グラム」なんて単位を使うと、小数ばかり出てくることになります。これは、ちょっと扱いづらいのです。そこで、昔から「Karat カラット」という単位が使われています。みなさんも、一度くらいは聞いたことぐらいはあるでしょう。
 変遷はあるのですが、1907年のメートル条約の会議で、1カラットは200mg(0.2g)と決められました。

 さて、「カラット」とは何か?

 宝石のような小さいけれど価値が高い物の質量を量る際には、大雑把な値(あたい)で表されては困ります。その質量を細かなところまで表してほしいものです。したがって、質量を量る際の分銅として、重さのそろった小さな「何か」が求められます。

 みなさんなら何を使いますか? 日本人なら、お米かな?

 古代人は、大麦、小麦、マメなどを用いました。「デイゴ」というマメ科の落葉高木の種はアラビア語で「quirrat」。同じくマメ科の常緑高木で「イナゴマメ」の種子は、ギリシャ語で「keration」。このどちらかが「カラット」の語源だと言われています。
 ま、いずれにしても、0.2g程度の小さなマメを分銅として、宝石類の質量を量っていたわけです。

 ここで、話題をカラット(がらっと)変えます。
 金の純度といえば、古代ギリシアの数学者、技術者アルキメデスを思い出します。王様から、
「この王冠は純金製か? それとも銀が混ざっているか?」
と尋ねられたアルキメデスは、風呂の中でその解決法を発見。
「エウレカ(わかった)!」
と叫びながら、裸のままで町を走り回ったという話。

 さて、金の純度は、純金の場合、「24K」と表されます。「24金」とか「24ケイ」などと読まれます。24 分率で表すということなんです。
 ちょっと計算が面倒ですが、「18K」と表示があったら、それは金が重量で全体の18/24、つまり、75%含まれているということを示しています。

 純度が100%の金を、なぜ24Kと表すのか? 24とは、何なのか?

 本当によく尋ねられるのです。紙面の都合があって、拙著『単位171の新知識』には書けなかったことなので、ここに書いておきましょう。
 じつは、この「K」は、「カラット」です。24Kということは、デイゴだか、イナゴマメだか、24個分の重さということなのです。

   24×0.2g=4.8g

 では、金の純度を表す基準となった、24カラット(4.8g)の重さのものは一体何だったのしょう? 『世界ふしぎ発見!』にはもってこいの問題ですね。

 すぐに答えを書くのは惜しいので、答えは【メモ】の中で!


【メモ】

◆「数学のノーベル賞」といわれる「フィールズ賞」。受賞者に渡されるメダルには、表面にアルキメデスの横顔が描かれている。

◆アルキメデスについては、★雑木話★第七十二段「氷山とアルキメデス」で詳しく書いた。そっちを読んでくださいね。

◆南アフリカ共和国のキンバリーは、ダイヤモンドの産出地として有名。

◆ダイヤモンドは、日本語で「金剛石」。

◆ダイヤモンドを購入する際、お店の人から「4C」の説明を受けたことはないですか?
 4Cは、ダイヤモンドの品質を決める4つの観点。カラット、カット、カラー、クラリティ(透明度)。もちろん、それぞれの頭文字をとって、4C。

◆ダイヤモンドの「ブリリアントカット」といえば、58面体。

◆宝石に「鑑定書」がつくのは、ある1種類の宝石に限られている。ダイヤモンドだけ。他の宝石の場合は、「鑑別書」。

◆モースの硬度計で、ダイヤモンドは硬度10とされる。

■ モース硬度 ■
 ドイツの地質学者・鉱物学者フリードリヒ・モース(1773〜1839)が1812年に考案した主に鉱物に対する硬さの尺度の1つ。
硬さの尺度として、1から10までの整数値を考え、それぞれに対応する標準物質を設定する。

◆では、モース硬度の「標準物質」を列挙しよう。
  硬さ1……滑石
  硬さ2……石膏
  硬さ3……方解石
  硬さ4……蛍石
  硬さ5……燐灰石
  硬さ6……正長石
  硬さ7……石英
  硬さ8……トパーズ
  硬さ9……コランダム
  硬さ10……ダイヤモンド

◆「硬さ」というと、「衝撃に強いか?」、つまり、「強い力を加えても割れないか?」ということを考えがちだが、モース硬度の「硬さ」とは、「引っ掻いたときに傷が付くかどうか?」ということ。

◆「カラット」は、国際単位系の単位ではない。また、併用してもよいともされていない。
 ま、しかし、日本の計量法では、宝石の質量の場合だけは許してあげましょう……ということにしている。

◆以前、『探偵! ナイトスクープ』という番組で、ダイヤモンドを燃やした火で松茸を焼いて食べたいという無茶な依頼が届いたことがある。本当にダイヤモンドの火で松茸を焼いていた。
 もちろん使われたダイヤモンドは人工ダイヤだが、それにしても豪勢だな〜。

◆ダイヤモンドが燃えるとき、出る気体は二酸化炭素。

◆空気中の細かい氷の結晶が太陽の光できらきら輝く現象は、「ダイヤモンドダスト」。
◆プロ野球のダイヤモンド。1周は360フィート。

◆俗に「セクシーダイヤモンド」と呼ばれる体の部位は、ふくらはぎ。

◆伊豆七島の神津島は、宝石のように美しい浜を持つことから、「ダイヤモンド・アイランド」の別名がある。

◆ハワイ諸島のオアフ島には、「ダイヤモンドヘッド」という火山がある。ここでダイヤモンドだが見つかったわけではない。
 オアフ観光局のサイトによれば、1700年頃に山を訪れた西欧の探究家や商人達が、噴火口付近でダイヤモンドを見つけた(じつは、それは方解石)! ということから、この名前が付いたとのこと。

◆ハワイアンの名曲『カイマナ・ヒラ』。カイマナ・ヒラは、山の名前。ダイヤモンドヘッドの別名だ。

◆アメリカ、イギリスでは、活字の大きさに宝石などの名前をつけることがあった。5.5ポイントの小さな活字を「ルビー」と呼んでいた。ふりがなのことを「ルビ」というのは、これが由来。
 ルビーより小さい、4.5ポイントの活字は、「ダイヤモンド」。

◆尾崎紅葉の『金色夜叉』で、お宮を心変わりさせたダイヤモンドは時価300円。

◆クリスマスイヴ、チルチルとミチルの部屋に魔法使いが現れた。ダイヤモンドがついた魔法の帽子をもらった2人は、旅に出ることになる。
 メーテルリンクの『青い鳥』だ。

◆『瞳はダイヤモンド』は、松田聖子の1983年のヒット曲。『Diamonds』は、プリンセス・プリンセスの1989年のヒット曲。両方とも、「ザ・ベストテン」1位を獲得している。
◆さあ、本文最後の問題の答えは……、金貨。古代ローマの金貨は、24カラットだった。そこから、金の純度が100%であることを「24K」と表すようになった。

◆Speech is silver, Silence is golden.「雄弁は銀、沈黙は金」。


[このページの先頭に戻る]