★雑木話★
ぞうきばなし

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 ・ 第九段の二 ・  白銀は、まねるよ
   (この段は、第九段の一からの続きです)

 A0判の紙の大きさは、841mm×1189mm。これを長い方の辺で半分に折った大きさが、A1判。それをさらに半分にしたら、A2判。さらにさらに半分に折って、A3判。そして、A0判、A1判、A2判、A3判、……は、お互いがすべて相似な長方形になっている。
 このようにうまくいくのは、縦と横の長さの比が特別に設定されているからだ。第9段の【メモ】では、その比を求めることを宿題にしたが、今回はその比を求めてみよう。下の図を見てほしい。

       ax
   +―――+―――+
   |       |       x
   |       |   +―――――+
  x|       |   |      |
   |       | ax/2|     |
   |       |   |     |
   +―――+―――+   +―――――+

 左の長方形の横の辺の長さが、縦の辺の長さのa倍(a>1)であるとする。その横辺を半分に折ってできたのが、右で長方形ある。この2つの長方形の縦横の比が同じになればいいのだから、

      a
   1:a=――:1
      2

 内項の積と外項の積は等しくなるから、

    a^2
   ―――=1 (「^2」は、2乗を表す)
     2

a^2=2

 a>0 だから、

   a=√2

 つまり、縦横の辺の比は、1:√2 なのだ。小数を使って表せば、1:1.414 くらいということになる。A判、B判などの紙の「半分にしても相似状態」という性質は、この縦横の比率に秘密があったのだ。
 さて、1:√2 といえば、これは、正方形の1辺と対角線の比にあたる。

     a
   +――――+
   |\   |
   | \b |
  a|  \ |
   |   \| a:b=1:√2
   +――――+

 小学校でも習う簡単な図形に、この比は潜んでいたのだ。そこで、このような特別な意味を持つ比 1:√2 を「白銀比(はくぎんひ)」、縦横の辺の比が白銀比である長方形を「白銀長方形」と呼ぶことがある。
 少し発展させて考えてみよう。今度は下の図のように、3つに折る。折ってできた長方形が、もとの長方形と相似になるようにするには、縦横の辺の比をどうすればいいか。先と同じ様な式を立ててみよう。1:√3 になるはずだ。

       ax
   +――+――+――+
   |        |
   |        |      x
  x|        |   +―――――+
   |        |   |     |
   |        | ax/3|     |
   |        |   |     |
   +――+――+――+   +―――――+

 実は、この 1:√3 というのは、白銀長方形の1辺と対角線の比になっている。ちょっと面白いと思いません?


【メモ】

◆「半分にしても相似状態」である図形は、白銀長方形だけではない。三角形の仲間にも存在する。それは、直角二等辺三角形。どのように折るのかは、それくらいは、自分で考えること。

◆で、ほかにもあるのかと考えてみたが、五角形から先には、発見できそうにない。だから、この白銀長方形と直角二等辺三角形は、かなり特殊な図形だといえる。

◆√2 は、1.41421356……。「一夜一夜に人見頃」と暗記した。

◆従来のテレビの画面の縦横の比率は、3:4。ハイビジョンテレビは、9:16。

◆「銀」は、これ一字で「しろがね」と読む。「こがね」は、金。「くろがね」は、鉄。「あかがね」は、銅。「みやこがね」は、もち米の銘柄。「ひよこがね……」で始まる童謡は、『かわいいかくれんぼ』。

◆歌舞伎の小道具に、差金(さしがね)がある。客に見えないように、陰から蝶や鳥などを操る黒塗りの細い竹竿のことだ。

◆「銀(しろがね)も黄金も玉も何せむに まされる宝 子にかめもや」は、山上憶良の句。

◆小学校の低学年では、正方形のことを「ましかく」、長方形のことを「ながしかく」と呼んでいた。英語で正方形は (perfect) square、長方形は rectangle 。

◆マリー・アントワネットは、ハンカチの形が、円や長方形など、形が定まっていないことが気に入らなかった。そこで、
「ハンカチは、正方形にしなさい!」
と、言ったそうだ。その日であるとされる11月3日を、日本布製品工業組合連合会は、ハンカチの日に指定している。

◆■ マリー・アントワネット ■
1755〜93。オーストリアの女帝マリア・テレジアの娘。1770年に14歳で結婚し、フランス王ルイ16世の妃となる。派手好きで浪費家。反革命派心人の一人として、1793年10月16日、パリのコンコルド広場で、ギロチンに処せられた。

◆ブルボン家の皇太子とハプスブルク家の王女のこの結婚は、仏墺両国が結束するための政略結婚だった。

◆食糧不足に激高するパリ市民の様子を聞き、マリー・アントワネットは、
「パンがなければ、ケーキを食べればいいでしょう」
と言ったそうな。

◆「アントワネット・ペリー賞」というのがある。女優アントワネット・ペリーをしのんで1947年に制定された、ブロードウェー演劇の年間賞のことだ。一般には「トニー賞」と呼ばれている。

◆1辺が10mの正方形の土地の面積は、1a(アール)であ〜る。1辺が100mの正方形の土地なら、1ha(ヘクタール)にな〜る。

◆正方形の部屋の畳の並べ方。小さい方から、半畳、2畳、4畳半、8畳、12畳半、18畳、……。

◆先日、6畳の部屋の畳の表をすべて張り換えてもらった。畳の下からどんなものが現れるのか……。ゴキブリの死骸がゴロゴロ出てきたらどうしようと、少し恐怖だったが、数年前の新聞が出てきただけだった。畳を運び出したあとの部屋は、何だか間の抜けた気がした。
 数時間後、畳屋さんは、雨の中をやってきた。それからの作業の様子を見ていて、不思議に思ったとがある。
 畳屋さんは、できあがった6枚の畳を、きちんと元の位置に並べているのだ。そんなこと、どこが不思議なんだと思われるかもしれないが、畳の大きさはどれも同じ。どの畳をどこに置いたっていいじゃないの?
 しかし、これは、素人の発想。畳は、部屋の大きさに合わせて、縦横の長さが微妙に異なるので、元の位置にしか納まらないそうだ。同じ位置なら、方向を変えて納めるくらいはできるかもしれないけど。


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