★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第十三段 ●  「テレコ」ってやったことある?

テレコ」という言葉を知っておられるだろうか。テープレコーダーのことではない。新しいタイプのテレホンカードでもないし、女の子の名前でもない。
 よく使われる言葉ではないのかもしれない。そもそも、記憶違いかもしれない。何かを省略してできた言葉かもしれないし、もしかしたら、関西の方言かもしれない。
 この言葉に出会ったのは高校2年の夏。高校生の夏とえいば、アルバイト。ある清涼飲料の会社で、配達の仕事をした。
 缶コーヒーや缶ジュース、当時はまだビンのものも多く流通していたように思う。それらを専用の車に積み込み、各店舗に配達するのだ。とはいっても、高校生には車の運転はできない。車での移動中は助手席、店に着いたら荷物の運搬をするわけだ。
 暑かった。車には冷房が付いていないので、車内は40度近くあった……ような気がする。
「おい、缶コーラ3杯、缶コーヒー5杯、缶ジュース3杯、倉庫に運べ!」
 1杯というのは、1ケースのことだ。これもアルバイトしていて覚えた。言われた通りに、倉庫に運ぶ。それほど広い倉庫でもなかったので、全部で11ケースを縦に積んだ。すると、怒られた。
「あかん、何やってんね、テレコに積め!」
 新出単語だった。何だそれ? 英語か? ポケーとしていると、もう一度、
「テレコやっちゅうに……」

   [缶ジュース]↑上
   
[缶ジュース]
   
[缶ジュース]
   
[缶コーヒー]
   
[缶コーヒー]
   
[缶コーヒー]
   
[缶コーヒー]
   
[缶コーヒー]
   
[缶コーラ]
   
[缶コーラ]
   
[缶コーラ] ↓下
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄倉庫の床

 こういうことだ。缶コーラ3杯、缶コーヒー5杯、缶ジュース3杯を、しっかり分類して積んでしまったのだ。その方がいいと思ったからだ。これでは、いちばん下にあるコーラを取り出すためには、上の8杯をすべて取り除かなければならない。コーヒーを取り出すにしても、上のジュース3杯が邪魔だ。確かに怒られるだけの理由はあった。急いでいるときに、しかも狭い場所で、そんな仕事を店の人に強いるわけにはいかないのだ。
 バラバラに積めばよかったのである。この状態が「テレコ」だ。「物は整理整頓するのがよい」と教育され、自分でもそう思い込んできた頭にとって、それは大きなショックだった。
 その後「テレコ」という言葉を聞く機会がなかったのだが、思い切って調べてみた。最新の「広辞苑」には、意味がちゃんと載っていた。

■ てれこ ■
(1) 交互にすること。また、くいちがいになっていること。あべこべ。 (2) 歌舞伎脚本で、二つの異なる筋を一つの脚本にまとめ、交互に筋を進行させること。[広辞苑 第四版 岩波書店]

 乱数表のような数字の配置を「てれこ」というのだと勝手に理解していたが、そうではなかった。どうやら、単に2つのものを交互にならべることのようだ。「あべこべ」というと、そこには否定的な意味が感じられるが、「てれこ」には否定的な意味は弱い。(2)では、むしろ積極的だ。この手法は、映画などにも
よく使われている。

【メモ】

◆第2次大戦中、ユリの球根を黒焼きにしてコーヒーの代わりにしたという。

◆エスプレッソコーヒーの「
エスプレッソ」とは、「急速な」という意味。

◆列車時刻表で、コーヒーカップの記号で表されるのは、
ビュッフェ。もともとは食器戸棚という意味がある。

◆スプーンに角砂糖を1個のせ、ブランデーを注いで火をつけ、アルコールを燃やしてからコーヒーのなかに入れる。このカフェ・ロワイヤルっていうのを、小さい頃からやってみたいと思っていたが、まだやったことがない。

◆シナモン・スティックでかきまぜて飲むコーヒーは、カフェ・カプチーノ。あのコーヒーに浮いているクリームは、どう処理すればいいのだろう? スティックでかきまぜて、全部溶かすのか。それとも、スティックでクリームをすくって食べるのか。すくうとなると、あのスティックではどうもやりづらい。「コーヒー道」の師範という方がいれば、聞いてみたいものだ。

コーヒーは、アカネ科。原産地はエチオピア。
 原産地では早くから野生のものを利用していたのだが、これが6世紀ころアラビアに伝わって栽培化された。飲料としてのコーヒーがてヨーロッパに伝えられたのは15世紀以降のことだ。
 1995年の資料によれば、世界で生産されるコーヒー豆は、年間およそ560万t。生産高第1位の国は、ブラジル。世界のコーヒー豆のおよそ16.6%を生産している。続いて、コロンビア、メキシコ、インドネシア……となっている。

◆移民や現地人が、地主から土地・農具などを数年契約で借り、コーヒーなどを栽培する形のブラジルの農園を「
ファゼンダ」という。
 このファゼンダへは、多くの日本人も移民として働いている。
 最初のブラジルへの移民は、1908年、笠戸丸に乗った781人であった。その後、移民の数は増加を続け、戦争で途絶するまでに約19万人もの日本人が移住している。
 小説家の石川達三は1930年にブラジルに渡り,そのときの体験をもとに『蒼氓(そうぼう)』を発表し、1935年の第1回芥川賞を受賞している。

◆スポーツで「
ジュース」という言葉が使われるのは、テニス、バレーボール、卓球。綴りに注意しよう。飲むジュースは、juice。テニスのジュースは、deuce 。

◆日本初の缶ジュースは、1957年1月に発売された明治製菓の「明治天然オレンジジュース」。当時の常識としては「ジュースはビン詰め」だったので、業界の注目を浴び、品質の保存性と持ち運びの便利さによって、缶入り飲料が全国に普及する先駆けとなった。

◆環境保護のため、ジュースなどの缶のフタがついたまま残る方式の缶がある。「
ステイ・オン・タブ缶」と呼ばれている。昔は缶ジュースのリングプルを使って、飛ばしっこをして遊んだものだが、最近はほとんどがこの方式なのでそれもできない。

◆ジュースや烏龍茶の缶には、250mlの細いタイプと350ml太いタイプ(「アメリカンサイズ」という)がある。「たくさん飲みたい」「すこしでかまわない」といった消費者の「要望」や、駅売りなどのように売場のスペースが狭いため大きいものは置きづらいなどいった「用途」に応じて、いくつかのサイズが作られているそうだ。
 買う方としては細くても太くても同じ120円なのだから、両方のタイプが同時に売られているときには、ついつい太い方を買ってしまうのだが、量が多すぎて最後まで飲めない場合が多い。
「量が違うのに同じ値段とは、不届き千万」
 といったクレームが来そうなものだが、不思議なことにほとんどないそうだ。両者のコストを比較しても、価格に反映できるないほどの差になるそうだ。

◆缶の上部が三段腹のようになっているものがある。これを「
ネックド・イン缶」という。飲む度に注意していたら、段々の部分が3段のものと4段のものとがあることに気がついた。3段のものを「トリプルネッキング triplenecking」、4段のものを「クォドネッキング quadnecking」というそうな。「ネッキング」だから、「三段腹」じゃなくて「三段首」だった。
 しかし、何のための三段首、四段首なのか? 簡単にいうと、材料の節約。段々にすることで、ふたの部分の面積を小さくすることができるのだ。 そんな節約をするくらいなら、内容を節約して、100円にできないのだろうか? 小銭を出すのがいつも面倒だ。


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