★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第二十三段 ●  ジャグルに挑戦!

 雨のシーズン、外で遊ぶことができないので、どうしても屋内での楽しみを探すことになる。
 小学校の頃には、「おじゃみ」と呼ばれる(すくなくとも私の住んでいた地域ではそう読んでいた)遊びをした。どちらかといえば、女の子が夢中になって遊んでいた室内ゲームだ。
 使う道具は、5個のお手玉。そのうちの1つの親玉を投げ上げ、そして受け取る。この間に残りの4個のお手玉をつかんだり、移動させたりする。その動作が完全でなかったり、落ちてくる親玉を受け取れなかったりしたら、次の人にプレイの番が移る。そういうゲーム。
 お手玉の中身は、あずきや米。感触は、あずきの方がよいと思う。甘い甘いあんこの素が入っていると考えるだけで、何だか幸せだった。
「おってんしゃん」というテクニックがある。親玉を投げる、その間に片手を広げて4つの子玉を一度叩く。このとき、必ず4つにふれてなくてはならない。次に、落ちてくる親玉を手の甲を使って打ち、もう一度上げる。再び落ちてくるところを、上から手をかぶせるようにしてつかむ。
 4つの子玉を叩くところで「おっ」、親玉を打つところで「てん」、つかむところで「しゃん」と歌う。だから、「おってんしゃん」。
「おててんしゃん」というのもある。これは、「おってんしゃん」がバージョンアップしたもので、一度叩くところを二度にしただけだ。
 このゲームをやったことがない人は、親玉を高く投げ上げた方が有利だという考えを持つかもしれない。その方が親玉を受け取るまでの時間が長くなるのだから、そう考えるのも当然だ。しかし、高く上げることによってデメリットも生まれるから、うまくなっている。
 高く上げると親玉が視界から消える。それを嫌って、親玉を目で追うと、今度は下にある子玉が視界から消える。両者が視界に入るという微妙な高さがある。
 こういうこともある。親玉を真上に上げることができれば、当然、真下に落ちてくる。これは、受け取る者としては楽である。しかし、高く上げようとするとどうしても手がブレる。そうなるとすこし斜めに投げ上げてしまうことになる。親玉の放物線を描いて移動するから、投げ上げたポイントとは別のポイントに落ちてくる。高く上げれば上げるほど、元のポイントから離れた位置に落ちてくる。したがって、「おってんしゃん」が完成しづらくなる。なかなか奥が深い。
 一般に「お手玉」とか「ジャグル」とか呼ばれているパフォーマンスがある。テレビのショーなどでは、ナイフや松明(たいまつ)を使っているので、かなりスリリングだ。家庭で行う場合は、みかんくらいがちょうどいい。
 片手で2個のジャグルをやってみよう。一つのみかんは必ず宙を舞っていることになる。そのお手玉を受けるまでに、手に残っているみかんを投げ上げないといけない。このことの繰返しがジャグルだ。
 投げ上げて受け取るまで、どれくらいの時間があるのだろう。試しに計算してみよう。ちょうど50cm投げ上げたとする。投げ上げてから最高点に達するまでの時間と、最高点から受け取るまでの時間は同じであるから、片方を求めて2倍すればよい。
 自由落下の距離sと時間tの関係は、よく知られた

      1   2
   s=――gt
      2

である。sはtの2乗に比例する。gはもちろん重力加速度である。
 この式にs=0.5を代入してtを求めると、約0.32秒が得られる。その2倍だから、求める時間は約0.64秒。1秒よりは短いが、0.64秒というのは、けっこう長いなという感じだ。早口の人なら、かなりしゃべることができる。これだけの時間があれば、手元に残っているみかんを投げ上げることくらい楽だと思うのだが、やってみるとこれがなかなかむずかしい。投げることはできても、受けることができない。みかんを手玉に取るのはむずかしい。
 こりゃだめだと思って距離を伸ばしてs=1にしても、再び手元に戻るまでの時間は約0.9秒。距離を倍にしたからといって、時間は倍にはならない。高く投げても得られる効果は薄いといえる。
 みかんでジャグルをすると、
「食べ物で遊んではいけません」
とよく叱られた。しかし、ジャグルしたあとのみかんはなぜか甘いのだ。本当だ。
 ※関連→
http://homepage1.nifty.com/tadahiko/GIMON/QA/QA099.HTML


【メモ】
◆大納言というあずきがある。大粒で、色が濃い。尾張が原産地なので、尾州家尾張大納言のしゃれで名付けられたと言われている。

◆大規模な遊園地には、「フリー・フォール」と呼ばれる乗り物がある。日本語にするとずばり、「自由落下」。

◆衛星放送受信にも用いられるパラボラアンテナの「
パラボラ」とは、「放物線」のことだ。
 放物線には焦点がある。電波が焦点で集まりやすいように設計されている。試しに、

        2
   y=ax
      
の焦点を求めてみよう。これは、高校生への問題。y軸に平行に入って来る光の反射を考えれば割りと求められやすい。

◆「パラボラ」で思い出したが、そういえば、「パラソル」も「パラシュート」もなんだか似たような形をしている。あの形が「パラ……」なんだ――と考えていいのかな?
 調べてみたら、以下のような感じだった。

  パラソル……イタリア語で「日よけ」の意味
  パラシュート……フランス語「落下を保護するもの」の意味

 そうか、そうか。防御したり、保護したりするのが「パラ」なんだ。やはり、あの何かを覆うようなあの形から派生しているんだろうな――と理解した。

◆そう考えると、「パラサイト(寄生生物)」の「パラ」も、何となく雰囲気が分かるなぁ。


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