● 第三十四段 ● 両親の「愛」に包まれて
先日、次男を初めて散髪した。生まれてからず〜と放っておいたのだが、1年と8ヶ月ほど経って、ようやく「長くなったな」と思うようになった。
散髪といっても、目にかかったり、耳にかかったりしている部分だけを切っただけだ。ワニの形をした幼児用の散髪の道具でパクパクと切ったのだが、まあまあうまくいった。
切った髪の毛はゴミ箱に捨てた。よく考えたら、彼にとっては初めてのカットだったので、「記念すべきこと」だったのかもしれない。何らかの形で残しておいてやればよかったかなとも思った。
そんなとき、こんな広告を見つけた。
「名筆匠による至芸の逸品。赤ちゃんの頭髪で手作りする、世界でたったひとつの貴重な筆です」
これは、すごいぞ。赤ちゃんの髪の毛で筆を作ると言うのだ。何でも商売になるもんだ。
材料として用いるのは、赤ちゃんの最初の産毛。4ヶ月から8ヶ月ぐらいで採毛できるらしい。しかし、すこし条件もある。まず、髪の長さは4cm以上、髪の毛を束ねてタバコの太さ以上になること。クセ毛でも心配はいらないらしい。
「うちの子は、髪の毛がかなり少ないのだけれど……」
でも、心配御無用。採毛量が極端にすくない場合は、両親の「愛」にお子様の髪を包み込む方法がある。
どうしよう。うちの場合は、父親の「愛」がかなり危ないのだが……。【メモ】
◆平安時代の「三筆」といえば、嵯峨天皇、橘逸勢、空海の3人。「三蹟」といえば、小野道風、藤原佐理、藤原行成の3人。
◆書道における4つの宝「文房四宝」とは、墨、筆、硯、紙。
◆筆の善し悪しを見分ける4つの条件。尖、斉、円、健。
◆「永」という漢字は、楷書を書くときの全ての文字に共通する8種類の運筆法を含むため、書道の練習によく使われる。
◆京の内裏にある「応天門」の書は空海のものとされている。が、「応」の字の「广(まだれ)」であるべきところが、「厂(がんだれ)」になっている。
「弘法にも筆の誤り」は、事実だった。
◆「弘法にも筆の誤り」と同じ意味の中国のことわざに、「麒麟のつまずき」というのがある。西洋では、ホメロスが登場する。"Even Homer sometimes nods."。
◆「一筆啓上、火の用心、お仙泣かすな、馬肥やせ」。
これは日本一短い手紙とされているが、これに登場するお仙は、男の子である。
◆ホオジロの鳴き声は、「一筆啓上仕候(つかまつりそうろう)」とか「源平ツツジ、白ツツジ」などと聞こえるらしい。「一筆啓上……」の方を、聞いてみたい。
◆手紙を書くのが苦手の人は、筆不精。手紙を書くのが好きな人は、筆豆。
◆しゃべることがうまい人は、「弁が立つ」。文章がうまい人は、「筆が立つ」。
◆眼鏡なしで見れば「肉眼」、マイクを通さないのは「肉声」。本人が書いた文字は、「肉筆」。
◆ガリガリと鉄筆で原紙を切るので「ガリ版」という。
◆ほんのわずかな不安や寂しさを表すのに使われる言葉、「一抹(いちまつ)」。もともとは「筆でひとなでする」という意味。
◆日本画に使う筆には、「則妙(そくみょう)」「隅取(くまどり)」「面相」などの種類がある。
◆オペラ『セビリアの理髪師』の初演は、1816年に行われた。原作は、ボーマルシェ。作曲したのは、『ウィリアム・テル』などの作品で有名なイタリアの作曲家は、ロッシーニ。オペラブッファの代表作の一つ。
◆■ オペラブッファ ■
18世紀に生まれた喜劇的なオペラ。神話や古代の英雄をテーマにした叙情的な悲劇「オペラ・セリア」の幕間(まくあい)劇として演じられた。庶民生活に題材をとり、風刺的なものが多い。
◆大相撲の髪結い師のことを、床山という。
◆「シニヨン」は、フランス語で「まげ」という意味がある。女性のヘアスタイルのひとつで、髪を丸くまとめるこという。「ソバージュ」は、フランス語で「野性的な」という意味。パーマをかけた髪に、自然に乱れた感じを出すのが特徴。
◆髪を留めるバネ式のヘアピンは、バレッタ。
◆ケラチン。髪の毛の主成文である蛋白質を総称してこういう。
◆俳句で「髪洗う」といえば、夏の季語。分かる分かる。
◆グリム童話『白雪姫』の髪の色は、黒。
◆「九十九髪(つくもがみ)」といえば、白髪のこと。「百」から「一」を取ると「白」くなるから。
◆鯉濃(こいこく)は、鯉の筒切りを長く煮込んだ濃厚な味噌汁。「食べた日は髪の毛がほつれない」などといわれる。
◆「髪を生やす」といえば、童髪(わらわがみ)を切って元服すること。「切る」が忌み言葉であるため、「生やす」を使う。
◆与謝野晶子の最初の歌集のタイトルが、『みだれ髪』。
◆ギリシャ神話の英雄アキレスの弱点は、かかと。『旧約聖書』に登場するサムソンの弱点は、髪の毛。
◆広島市と呉市の間に熊野町がある。ここの特産の熊野筆は有名だ。毛筆の全国シェアの5割以上を占めている。
紹介したような筆は「胎毛筆」と呼ばれているのだが、そういうわけで、熊野町「胎毛筆」の受注・生産にも力を入れているのだそうだ。
◆髪の毛がすくない場合は、中筆になったり、小筆になったり、それなりの対応がしてもらえるのだそうだ。。
筆の軸に子どもの名前と生年月日を彫って、箱に入れてくれて、5000円くらいからというところかな。
◆「胎毛筆」で実際に字を書くとなると……、あまり書き心地はよくないらしい。穂先に弾力がないからだ。
ま、あくまでも記念の筆。
受注生産となるので、少々値は張りますが、愛しいお子さんの記念の品としていかがでしょう。
あら、宣伝しちゃった。