● 第三十八段 ● ダブルの悲劇
ボウリングで2回続けてストライクを出すことを「ダブル」という。洋服にも「ダブル」がある。これは「ダブル・ブレスト」の略。ウィスキーの「ダブル」は、約60ml。
言うまでもないが、「ダブル」は、「2倍」、「2重」の意味。「ダブル」で始まる言葉は、山ほどある。
ダブルスチール
ダブルプレー
ダブルドリブル
ダブルベッド
ダブルボギー
ダブルブッキング
ダブルパンチ
ダブルチャンス
これはもう、日本語になっていると言ってもいい。「ダブる」と、動詞で使ったりもする。しかし、
Wプレー
Wベッド
Wチャンス
のような表記はいただけない。
Wは「double(ダブル)」ではない、「double U(ダブリュー)」なのだ。Uが2つくっついたから、「ダブリュー」。
夫婦が共働きで、子どもがいない状態を、「ダブル・インカム・ノー・キッズ」という。略して、DINKS(ディンクス)。この場合の「D」は非常に正しい。
正しいからといって、今までWで表していたものを、Dにしても通用しないだろう。「Dベッド」や「Dプレー」では、雰囲気が出ない。それどころか、
「そういうのは、『Wプレー』って書くんだよ。ハハハ」
と言われそうだ。こういうのは、ダブル・ミステイクと呼ぶのだろうか。
【メモ】
◆野球で「6−4−3のダブルプレー」といったら、打球を取ったのは、ショート。最後にボールを取ったのは、ファースト。
◆一つの航空路線に二つの航空会社の定期便が乗り入れることがある。ダブル・トラッキングという。
◆野球の試合が、1日のうちに同一カードで2試合行われたら、ダブル・ヘッダー。ダブルヘッダーの第2試合のことを、夜寝る前に飲むお酒にたとえて、「ナイトキャップ」という。
◆夜寝るときに使うのは、ベッド。
ダブルベッドのJIS規格。幅は、130cm、150cmの2種類。長さは、195cm、200cm、205cmの3種類。
◆テニス、卓球、バドミントンなどには、ダブルスがある。必ず交互にボールを打つと決められているのは、卓球。
◆テニスの4大大会で優勝した日本人は5人いるが、いずれもダブルスでの優勝だ。
1934年 ウィンブルドン 混合ダブルス 三木竜喜、ドロシー・ラウンド(英)
1955年 全米オープン 男子ダブルス 宮城淳、加茂公成
1975年 ウィンブルドン 女子ダブルス 沢松和子、アン・キヨムラ(米)
1997年 全仏オープン 混合ダブルス 平木理化、マヘシュ・ブパシ(印)
1999年 全米オープン 混合ダブルス 杉山愛、マヘシュ・ブパシ(印)
2000年 全米オープン 女子ダブルス 杉山愛、ジュリー・アラール・デュキジス(仏)
2003年 全仏オープン 女子ダブルス 杉山愛、キム・クライシュテルス(ベ)
2003年 ウィンブルドン 女子ダブルス 杉山愛、キム・クライシュテルス(ベ)※ごめんなさい。他にも優勝者が出ているかもしれません。
ご存じでしたら、メールで教えてください。更新します。
◆ロンドンの名物にもなっている2階建てバスをは、現地では「ダブルデッカー double decker」と呼んでいる。「デッカー」とは、「〜層の」「〜階の」の意味。だから、2層構造の船もダブルデッカーだ。
◆「ダブル・ブッキング」とは、2重に予約を受け付けてしまうこと。つまり、bookには「予約する、記入する」という意味もあるのだ。これを初めて知ったときは驚いた。名詞のbookには「帳簿、会計簿」という意味があるから、そこから派生してできた動詞だ。
bookの話で思い出したが、中学の頃、
Do you have a book?
という英文を「どういう幅の本ですか?」と訳した友人がいた。名訳だと思った。
◆市川右近は、慶応大学法学部卒。スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』では、猿之助とダブルキャストでヤマトタケルを演じている。
◆ジョン・レノンの遺作となったアルバムのタイトルは、『ダブル・ファンタジー』。
◆4番目のアルファベットはD。終わりから4番目のアルファベットはW。だから、どうした?
◆これだけインターネットが普及すると、敷居が低くなって、却って知らない人が増えてきたような気がする。
「WWW」をご存じだろうか?
これは、インターネットのサービスの一つ。World Wide Webの略。webとは、クモの巣、網の意。
WWWとは、Webページと呼ばれる文字や画像などで構成された情報を、アドレスを指定したり、Webページ中のリンクをたどりながら見ることができる仕組みのこと。世界中には数え切れないほどのWebページがあり、ニュースや趣味の話題などの情報を手に入れたり、インターネット上で買い物やゲームをすることもできる。
――って、説明しても、そんなことを知らなくても使ってるよって感じですね。
◆W字形で有名なカシオペア座。カシオペアは、エチオピアの王妃。英語の綴りはCassiopeia。発音は「キャスィオピィァ」って感じだ。
◆W(ワット)は、仕事率、電力を表す国際単位だ。1769年に本格的な蒸気機関を発明したイギリスの機械技術者ジェームズ・ワット(1736〜1819)に由来する。
長さなどの単位と違って、仕事率や電力を感覚でとらえるのは非常にむずかしい。が、ある程度わかっていてもおもしろい。
たとえば、あなたの10sの荷物を1m、2秒間で持ち上げたとすると、むずかしい計算は抜きにして、この場合の仕事率は49Wになる。
また、500Wの湯沸かしポットで、1kg(1リットル)の水なら、すべてのエネルギーが水を温めるのに使われたとして、10分で71.6℃だけ温度が上がることになる。
◆元素記号Wは、タングステン。原子番号、74番。金属元素の中で、最も融点が高く、3387℃。沸点もいちばん高くて、5927℃。身近なところでは、電球のフィラメントに使われいる。「タングステン」というのは、スウェーデン語で「重い石」という意味。
では、どうしてWなのか?
タングステンがスズ鉱の中に混じっていると、スズを取り出そうと思っていも多量のスズをタングステンが奪い取ってしまうのだ。そこから「むさぼり食うオオカミ」という意味で、Wolfrahm(ドイツ語)と呼ばれ嫌われていたのだ。
◆カップ麺には、EかW、あるいはTかOといったアルファベットが表示されていることがある。今度食べたら、見てほしい。関東向けと関西向けの区別だ。それぞれが何の頭文字かは、わかるかな?
E……east(東) W……west(西)
T……Tokyo(東京) O……Osaka(大阪)
[感想が届いています] 1