★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第四十一段 ●  名水百選リスト

 第八段の【メモ】で、北海道の羊蹄山について、ほんのすこしだけ述べた。
 繰り返すが、羊蹄山は、札幌市の南西にある標高1893mの火山だ。その美しい山容から「蝦夷富士」とも呼ばれている。この山の麓にある「ふきだし公園」では、1日8万トンのナチュラルウォーターが湧き出ていて、環境庁は、「羊蹄のふきだし湧水」を名水百選の一つに指定している。
 数年前に、この公園を訪れて、その名水を飲んだ。たしかに、うまかった。しかし、その水を飲んでも、まだ、以前からの疑問は解けないままだった。
 どうして羊蹄山は、「羊の蹄」なのだろう?
 もちろん、すこしは調べた。書物からは、かつてはこの山が「後方羊蹄(しりべし)山」と呼ばれていたことがわかったくらいだった。
 調べている途中で「羊蹄」という植物があることを知った。この植物が羊蹄山と関係があるのかもしれないと、方向を修正した。
「羊蹄」とは「ギシギシ」のことだ。それなら知っているという人も多かろう。よく川べりに生えているタデ科の多年草。茎をすりあわすとギシギシという音がすることからのネーミングらしい。根は便秘や皮膚病に効果があり、染料にもなる。
 ギシギシが使われる行事もある。北上川の中・下流域で旧暦の6月1日に行われる「ノミオクリ」という行事だ。
 まず、ギシギシで座敷を掃く。そして、ギシギシを川に流す。こうするとギシギシに乗って、ノミが家からいなくなるのだ。
――ここまでだった。結局、ギシギシと羊蹄山との関係は発見できなかった。残念だ。思い通りにいかないこともある。ただ、羊蹄山の麓に湧いている「ふきだし湧水」の仲間はたくさん見つかった。環境庁から「名水百選」のリストが届いたのだ。以下に紹介しておく。
 あなたは何ヶ所で名水を飲まれましたか?

[北海道]羊蹄のふきだし湧水(虻田郡京極町)/甘露泉水(利尻郡利尻富士町)/ナイベツ川湧水(千歳市)
[青森]富田の清水(弘前市)/渾神の清水(津軽郡平賀町)
[岩手]龍泉洞地底湖の水(下閉伊郡岩泉町)/金沢清水(岩手郡松尾村)
[宮城]桂葉清水(栗原郡高清水町)/広瀬川(仙台市)
[秋田]六郷湧水群(仙北郡六郷町)/力水(湯沢市)
[山形]月山山麓湧水群(西村山郡西川町)/小見川(東根市)
[福島]磐梯西山麓湧水群(耶麻郡磐梯町)/小野川湧水(耶麻郡北塩原村)
[茨城]八溝川湧水群(久慈郡大子町)
[栃木]出流原弁天池湧水(佐野市)/尚仁沢湧水(塩谷郡塩谷町)
[群馬]雄川堰(甘楽郡甘楽町)/箱島湧水(吾妻郡東村)
[埼玉]風布川・日本水(大里郡寄居町)
[千葉]熊野の清水(長生郡長南町)
[東京]お鷹の道・真姿の池湧水群(国分寺市)/御岳渓流(青梅市)
[神奈川]秦野盆地湧水群(秦野市)/洒水の滝・滝沢川(足柄上郡山北町)
[新潟]龍ヶ窪の水(中魚沼郡津南町)/杜々森湧水(栃尾市)
[富山]黒部川扇状地湧水群(黒部市、下新川郡入善町)/穴の谷の霊水(中新川郡上市町)/立山玉殿湧水(中新川郡立山町)/瓜裂の清水(礪波郡庄川町)
[石川]弘法池の水(石川郡鳥越村)/古和秀水(鳳至郡門前町)/御手洗池(鹿島郡田鶴浜町)
[福井]瓜割ノ滝(遠敷郡上中町)/お清水(大野市)/鵜の瀬(小浜市)
[山梨]忍野八海(南都留郡忍野村)/八ヶ岳南麓高原湧水群(北巨摩郡長坂町、小渕沢町)/白州・尾白川(北巨摩郡白州町)
[長野]猿庫の泉(飯田市)/安曇野わさび田湧水群(南安曇郡豊科町、穂高町)/姫川源流湧水(北安曇郡白馬村)
[岐阜]宗祇水(白雲水)(郡上郡八幡町)/長良川(中流域)(美濃市、関市、岐阜市)/養老の滝・菊水泉(養老郡養老町)
[静岡]柿田川湧水群(駿東郡清水町)
[愛知]木曽川(中流域)(犬山市〜可児川合流点)
[三重]智積養水(四日市市)/恵利原の水穴(天の岩戸)(志摩郡磯部町)
[滋賀]十王村の水(彦根市)/泉神社湧水(坂田郡伊吹町)
[京都]伏見の御香水(京都市)/磯清水(宮津市)
[大阪]離宮の水(三島郡島本町)
[兵庫]宮水(西宮市)/布引渓流(神戸市)/千種川(県西南部)
[奈良]洞川湧水群(吉野郡天川村)
[和歌山]野中の清水(西牟婁郡中辺路町)/紀三井寺の三井水(和歌山市)
[鳥取]天の真名井(西伯郡淀江町)
[島根]天川の水(隠岐郡海士町)/壇鏡の滝湧水(隠岐郡都万村)
[岡山]塩釜の冷泉(真庭郡八束村)/雄町の冷泉(岡山市)/岩井(苫田郡上斎原村)
[広島]太田川(中流域)(広島市の祇園水門〜行森川合流点)/出合清水
(安芸郡府中町)
[山口]別府弁天池湧水(美祢郡秋芳町)/桜井戸(岩国市)/寂地川(玖珂郡錦町)
[徳島]江川の湧水(麻植郡鴨島町)/剣山御神水(三好郡東祖谷山村)
[香川]湯船の水(小豆郡池田町)
[愛媛]うちぬき(西条市)/杖の淵(松山市)/観音水(東宇和郡宇和町)
[高知]四万十川(県西部)/安徳水(高岡郡越知町)
[福岡]清水湧水(浮羽郡浮羽町)/不老水(福岡市)
[佐賀]竜門の清水(西松浦郡西有田町)/清水川(小城郡小城町)
[長崎]島原湧水群(島原市)/轟渓流(北高来郡高来町)
[熊本]轟水源(宇土市)/白川水源(阿蘇郡白水村)/菊池水源(菊池市)/池山水源(阿蘇郡産山村)
[大分]男池湧水群(大分郡庄内町)/竹田湧水群(竹田市)/白山川(大野郡三重町)
[宮崎]出の山湧水(小林市)/綾川湧水群(東諸県郡綾町)
[鹿児島]屋久島宮之浦岳流水(熊毛郡屋久町、上屋久町)/霧島山麓丸池湧水(姶良郡栗野町)/清水の湧水(川辺郡川辺町)
[沖縄]垣花樋川(玉城村)


【メモ】
◆環境庁が「名水百選」の選定したのは、1985年の春。日本全国から地下水、河川などの名水を募集し、応募された784の候補の中から、百名水を選んだものだ。
 最初の選定以来、入れ替えもないし、新しく選定しようという計画もない。いつまでも「名水」ってことはないと思うのだけど……。

◆おいしけりゃいいってものじゃない。環境庁のいう名水とは、「身近な清澄な水であって、古くから地域住民の生活にとけこみ、住民自身の手によって保全活動がなされてきた」水のことだ。だから「名水=おいしい水」というわけではないのだ。
 もちろん、おいしい水もある。しかし、百選の中には、そのまま飲み水として利用するには向かないものもある。

◆では、名水百選の中からいくつかを紹介しよう。
・渾神の清水(青森県)……眼病を患っていた坂上田村麻呂(758〜811)が、この水で目を洗うとたちまち治癒したという伝説がある。
・龍泉洞地底湖の水(岩手県)……山口の秋芳洞、高知の龍河洞とならぶ三大鍾乳洞の一つ。地底に湧き出す水は、透明度世界一といわれている。一口飲むと3年長生きするそうな。
・立山玉殿湧水(富山県)……立山黒部アルペンルートのトンネル工事にともなって湧き出した。湧出地点は標高2500m。日本一高い地点の湧水だろう。
・鵜の瀬……奈良市の東大寺二月堂では、毎年3月に「お水取り」の行事が行われるが、その水は約100km離れた鵜の瀬から送られるものだ。
・養老の滝・菊水泉……養老の滝が百選に選ばれたのではない。選ばれたのは、養老公園の中にある湧水の菊水泉。養老山地を水源とする水は、「養老山麓の自然水」としてボトルで売られている。
・柿田川湧水群(静岡県)……1日に105〜110万tもの清水が国道1号線直下から湧出している。名水ブームの中であまりにも有名になったため、不動産業者の開発や観光による汚染が心配されている。
・磯清水(京都府)……日本三景の一つの天橋立、その砂州の中にある井戸から湧く不思議な名水だ。標高も0mに近いというのに、塩味がしない。
・宮水(兵庫県)……灘の酒造りを支える水。ここから湧く水のほとんどは酒造元の所有なので、自由に飲むことはできない。
・雄町の冷泉(岡山県)……岡山藩主池田氏の御用水であったほどの名水。ここを守る「冷泉保存会」まで発足したが、観光客のマナーの悪化のため、現在は給水停止。
・綾川湧水群(宮崎県)……長さ250m、世界一の歩道吊り橋「綾の照葉大吊橋」がかかる渓流に注ぐ湧水群。
・垣花樋川(沖縄県)……「樋川」とは、湧水のこと。男の泉、女の泉の2つに分けられ、別々に水を汲み、水浴に使われた。

ミネラルウォーターとは、ミネラルを多く含んでいる水、または、人工的に含ませた水のこと。日本ではミネラルウォーターの80%以上が業務用のいわゆる「ウィスキーウォーター」で、一般向けのものは少数派である。

◆1990年3月に、農林水産省が定めたミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインによると、ボトル入りの水は4種類に分類されている。

・ナチュラルウォーター……特定水源より採水された地下水。
・ナチュラルミネラルウォーター……特定水源より採水された地下水のうち、地下で滞留又は移動中に無機塩類が溶解したもの。鉱水、鉱水泉等。
・ミネラルウォーター……ナチュラルミネラルウォーターの原水と同じだが、濾過、沈殿及び加熱殺菌以外に、複数の原水の混合・ミネラル分の調整・曝気(ばっき)・オゾン殺菌・紫外線殺菌等の処理を行ったもの。
・ボトルドウォーター……飲用に適した水。純粋、蒸留水、河川の表流水、水道水等。

 また、ミネラルウォーターに対して、滋養分を含まない水をフレッシュウォーターという。

◆ミネラルウォーター類を日本に最も多く輸出している国は、フランス。

◆一時期、「ボトル族」とか言って、首からミネラルウォーターのびんをぶら下げるのがファッションとなったが、最近はあまり見なくなった。
 が、局所的には、ディズニーランド等で、よく見かける。

◆ヨーロッパに旅行したとき、レストランでミネラルウォーターを注文したら、炭酸入りの水が出てきて閉口したことがある。慣れない者にとっては、飲みづらい水だった。
 特に炭酸入りを指定したわけでもないのに、それが出てきたということは、炭酸入りの水の方がポピュラーだということか。

◆何度か失敗して、その後は必ず「ノンガス」を頼むようになった。イタリアで最初に暗記した言葉は、
「アクアミネラーレ・ノンガス・ウノ(ガスの入っていないミネラルウォーターを1本)」
だった。正しいイタリア語なのかどうかは知らない。

おいしい水の条件。
(1) ミネラル分が適当に含まれている
 ミネラルの中でも主要なものは、カルシウムとマグネシウム。特にカルシウムが味の鍵に握っていて、マグネシウムの値よりも多いと味がよくなる。逆にすくないと、マグネシウムの苦みを味として感じてしまう。
(2) 二酸化炭素が適度に溶け込んでいる
 このように書くと、炭酸飲料を想像されてしまいそうだが、実際には二酸化炭素はほとんどの水に溶け込んでいる。ただ、発砲するほどの量ではないだけのことだ。炭酸が適度に含まれている水は、すっきり、さっぱりとしていてフレッシュな味わいを持っている。
(3) 水温が適度に程度に冷えている
 水道水でも、ほどよく冷えたものであるなら、確実においしく感じられる。一般に人間にとっておいしいと感じる水の温度は、体温よりも20℃くらい低い温度で、夏なら10から14℃、冬なら8〜10℃ぐらいである。ただし、この温度よりも低すぎると感覚が鈍り、味が分からなくなってしまう。

◆水道水は、時間によってかなり味が異なる。朝いちばんの水は、おすすめできない。一晩水道管の中で停滞していた水には、鉄や鉛などが少々ではあるが溶け込んでいるからだ。
 飲むなら、夜の水。夜の水を汲みおきしておけば、朝には塩素の臭いも抜けているので、一石二鳥。

◆水を日光浴させるという手もある。晴れた日に透明な容器に水を入れ、30分から1時間日に当てると、紫外線が塩素を分解してくれる。

◆水を一度沸騰させるのもよい。半端な沸騰ではだめだ。やかんのふたをとったまま火にかけ、沸騰した後も2〜3分その状態を続ける。これで、塩素やトリハロメタン(最近発ガン性が問題視されている物質)までも除去できる。
 ただし、この時間以上に沸かし続けると、水のフレッシュさのもととなる炭酸ガスまで抜けてしまうので注意。

※「名水百選」の所在地については、データが古いかもしれません。市町村名変更など、所在地の間違いがありましたら、ぜひ、お知らせください。(星田)


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