★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第百三十三段 ●  ギザギザ・コースト

 三陸海岸に行ってみたい。リアス式海岸とやらを見てみたい。若狭湾のリアス式海岸も有名なのだが、奈良県に住むものとしては、旅行も兼ねて三陸に行きたい。
 地図を見ただけでもかなりギザギザしているから、実際に見るともっとギザギザしているのだろうなと思う。

 そんな話を友人の稲田君にしたところ、
「リアス式海岸は僕も興味があるけれど、海岸といえばもっと気になっていることがあるんだ」
「何?」
「地図に引いてある
海岸線って、どうやって決めているのか……」
「……、どういうこと?」
「あのね、海岸線というのは、海と陸との境目だろ。もっと極端に言ったら、波と陸との境目じゃないか」
「それで?」
「砂浜に行ってごらんよ。一波一波ごとに、波が到達する地点は違っているよ」
「細かいこというね、そんなこと言ってたら地図なんてつくれやしない……」
「そんなことはわかってるんだ。だから、なんとかしてけじめをつけていると思うんだけど……」
「じゃあ、調べてみようか……」
 彼の疑問の内容はわかった。波は到達する地点が異なる。そこまで細かなことを言わなくても、1日のうちで潮の満干あるから海岸線はかなり移動する。また、もっと長期的に考えると、大潮や小潮って状況もある。
 さて、どこに訪ねればわかるのか……。いろいろ考えた結果、地図のことは、国土地理院だと思い、建設省に電話を入れた。
「質問の内容は、わかりました」
「自分でも考えてみたんですよ。とりあえず、干潮のときの海岸線ではないだろうなと思いました。もしそうだと、地図を見ながらその土地を訪れたときに、時間によっては、
『あ、ここは海だ!』
なんてことになりますから」
「そうですね」
「実際はどうなんですか」
「おっしゃるように、満潮時の海岸線は日々変化します。そこで、満潮時の海岸線の位置を1年間で平均したものを地図に使用しています」
「そうだったんですか」
「そうです」
 ウルトラC的な答えを期待していたのだが、平均を採るなんて平均的な答えだった。

【メモ】

三陸海岸の3つの「陸」とは、陸前・陸中・陸奥。

◆宮沢賢治がイギリス海岸と名付けた、彼のふるさと岩手県を流れる川は、北上川。

◆静岡県の堂ヶ島温泉では、干潮のときに沖にある島と海岸がつながる現象が見られる。この現象を「トンボロ現象」という。トンボロとは、島と本土をつなぐ砂州のこと。

◆新田義貞が鎌倉攻めのとき、太刀を海に投じて干潮を龍神に祈って攻め行った歴史で知られる鎌倉の海岸は、稲村ヶ崎。

◆時代劇などのシーンで、あくどい悪徳商人に対して、
「あこぎな野郎だ!」
 なんて言葉が使われるが、これは、三重県津市にある海岸の地名である阿漕(あこぎ)のこと。能や人形浄瑠璃に阿漕が登場するものがあるのだが、そのあたりが由来か。

◆ケニア、タンザニアなどの公用語であるスワヒリ語は、アラビア語で「
海岸」という意味だ。

◆フランスの南部、地中海沿岸のカシスからマントンに至る海岸一帯を総称して「コート・ダジュール(紺碧海岸)」という。19世紀の詩人S.リエジャールが命名したものだ。サン・トロペ、サン・ラファエル、カンヌ、アンティーブ、ニース等の国際的に有名な保養地がズラリと並んでいる。

◆「海賊海岸」ってのもある。
 アラビア近海は、古来海賊がはびこり、ことにペルシア湾の海賊は有名だった。そのため、ホルムズ海峡から湾内に入ったアラブ首長国連邦の海岸地方は、「海賊海岸」と呼ばれてきた。

◆アフリカには「胡椒海岸」と呼ばれていた地方がある。
 現在の現在のリベリア共和国海岸部にあたる地方を、かつてヨーロッパ人が指して呼んだ名前だ。香辛料を求めて東方に探検航海に出たヨーロッパの航海者たちであったが、この地方でコショウに似た種子を入手して喜んで、このように名づけたものだ。

◆アフリカに、コートジボアール共和国があるが、これは「象牙海岸」ということ。かつてこの地方の海岸で、象牙が多く取引されたことに由来するものだ。首都はヤムスクロだが、これは法律上のもので、事実上の首都はアビジャンといってよい。

◆黄金海岸は、現在のガーナを中心とする地方。15世紀以来ヨーロッパ人が用いた名称だ。ポルトガルが1470年代に、この地方から大量の金を入手するのに成功したことに由来する。
 オーストラリアにも黄金海岸(ゴールド・コースト)がある。ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州の州境から北方21マイルにわたって続いている。黄金色の砂と完備された保養施設で有名な美しい海岸だ。

◆17世紀から18世紀にかけて、大量の黒人が奴隷としてアメリカ大陸へ積み出されたことからつけられた名前が「奴隷海岸」。ギニア湾沿岸の,現在のベニン共和国からナイジェリア連邦共和国にかけての地方だ。この海岸から積み出された奴隷は、18世紀だけでも200万人にのぼると推定されている。

◆北はニカラグア、南はパナマと国境を接しているコスタリカ共和国。「コスタリカ」とは、スペイン語で「豊かな海岸」という意味だ。

◆南アメリカのベネズエラ共和国は、海岸の景色がイタリアのヴェネチアに似ているところからその名が付けられた。

◆海岸に打ち上げられた漂着物を採集することを、「ビーチコーミング」という。密かに人気を広げている趣味だ。

◆サザンオールスターズの『チャコの海岸物語』に出てくる女性は、ミコ、ビーナス、チャコの3人。――だと思っていたら、「ビーナス」じゃなくて、「ピーナッツ」だった。
 カラオケに行くと、メドレーソングが入っていることがあるが、人気のサザンオールスターズのヒット・メドレーのタイトルは、『いとしの海岸物語』。

◆「リアス式海岸」の「リアス」は、スペイン語で「入り江」の意味。もっと限定すれば、スペイン北西部ガリシア地方の入江(リア ria)、あるいはリアの多い地方の名称(Costa de Rias Altas)ということになる。

◆「リアス式海岸」という言葉を作ったのは、ドイツの地理学者、リヒトホーヘン。この人の名前は、どこか別のところでも聞いたことがあると思ったら、シルク・ロードを「シルク・ロード」と呼んだのも彼が最初だった。

◆日本の海岸線の長さは、世界中の陸地をとりまく海岸線の長さの約7%を占めるという。
 しかし、わからん。どうやって、長さを測ったのか?
 リアス式海岸のような場合、そのギザギザをどこまで詳しく測っているのか、地図上にはどこまで詳しく表現しているのか? 誰か教えてくれないかな〜。


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