● 第百四十六段 ● M78星雲はどこですか?
ウルトラマンにすこし詳しい人なら知っているだろう。ウルトラマンはどこからやってきたのか?
ウルトラマンの故郷は、M78星雲にある「光の国」。しかし、今回の話は、ウルトラマンに関してではない。M78星雲の「M」に関してだ。M78星雲が星雲であるということはわかるが、この「M」ってなんだ?
しかし、その前にみなさん、本当に「星雲」ってわかってます? 星の雲?
正直に言いましょう。ごめんなさい。知りませんでした。
星雲は、最初は「雲のように見える天体」ということだった。今もそれで大筋間違いはない。ただ、今では距離の測定が進み、詳しく分類されるようになった。我々の銀河系内の星間物質が光り輝いてる場合を「銀河系内星雲」、銀河系の外側にあり数十億個から数兆個の恒星の集団であるものを「銀河系外星雲」と区別している。
で、「星雲」と言えば、ふつうは前者、銀河系内星雲をさすようだ。では、銀河系外星雲は何と呼ばれるのかというと、「銀河」。つまり、望遠鏡がまだ発達していなかったころは、銀河も星雲も同じように「星雲」に見えたということなのだ。距離がわかってからは、
「こんなに遠いのに同じように見えるということは、こりゃむちゃくちゃたくさんの恒星が固まって雲のように見えているに違いない」
ということで、星雲と銀河を同じレベルで考えることができなくなったわけだ。星雲については【メモ】でもうすこし詳しく扱うとして、先へ行こう。
むかし、むかし、今から200年以上もむかし、フランスにメシエという天文学者がいました。
■ メシエ ■
Charles Messier、1730〜1817、フランスの天文観測家。1751年、パリで天文学者ドリール(1688〜1768)の手伝いとして雇われ、やがて航海天文台の事務員となる。1758〜59年にはハレー彗星の再来をフランスで初めて観測した。その後彗星発見に没頭し、ルイ15世から「彗星発見の名手」と呼ばれ、15〜16個の新彗星を独立発見している。
そういうことだ。
え、まだわからない? メシエさんは、彗星をたくさん見つけたかったのです。でも、夜空には彗星と間違ってしまうような「星の雲」のような天体がたくさんあったのです。同じ過ちを繰り返さないように、メシエさんはどうしたか? そう、紛らわしい「星雲」の位置を記録していったのです。さらに、それらに番号を付、1771年に45個、1781年には改訂して103個の表「メシエ星表」を発表したわけです。
はい、もうわかりましたね。「M」は、メシエさんの「M」だったのです。
さて、M78星雲は……、だから実在するのです。M78星雲は、1600光年の彼方、オリオン座の中に存在します。「僕らのために」「正義のために」ということではあるけれど、ずいぶんと遠いところから来ているのですね、ウルトラマンって……。
【メモ】
◆メシエを有名にしているは、彗星の発見よりも、やはり「メシエ星表」の編纂だろう。彗星を探す際に紛らわしいものを整理したということなので、この当時の天文学では、このような天体は無視されていたということだ。
◆M103までのメシエ天体のうち、20個以上は、ライバルであったピエール・メシャンの発見したものとされている。
◆20世紀になり、科学史家たちがメシエの書簡や観測ノートを調査した結果、さらに7個を追加することを提案し、一般にはこれらもメシエ天体として認識されている。
◆つまり、M11Oまでが存在することになるが、このうちM40、M91、M102、M108は現在確認されていない。
◆そんなこんなでいろいろあったのだが、現在では、通常104番までが天体の固有名として使用されている状況にある。
◆メシエがカタログを作った当時、「雲のように見える天体」ということでリストアップしたものだから、実際にはメシエカタログの中身は「星雲」ばかりではない。ガス状星雲、星団、銀河のおよそ3種類に分類することができる。
◆特に有名なメシエ天体には、名前が付いているものがある。
M1 かに星雲
M8 干潟星雲
M17 オメガ星雲
M20 三裂星雲
M27 亜鈴星雲
M31 アンドロメダ銀河
M42 オリオン星雲
M44 プレセペ星団
M45 プレアデス星団
M57 環状星雲
M97 ふくろう星雲
M103 ソンブレロ銀河
◆う〜ん、じゃあ、プレセペ星団やプレアデス星団の「星団」って何なんだ?
■ 星団 ■
銀河の中で,ほぼ同時に生まれたたくさんの恒星が、相互の重力によってひきあってつくっている恒星の集団をいう。星団は距離が遠くなると、小さい望遠鏡で眺めただけでは星雲や銀河との区別が困難になるばかりか彗星と見まちがえられることさえある。(平凡社 世界大百科事典)
これは、素人には、区別がむずかしそうだ……。
◆モーツァルトの作品を年代順に整理し番号を付たのが、オーストリアのモーツァルト研究家ケッヘルだ。モーツァルトの最初の作品がK1で、最後の作品『レクイエム』がK626だ。
◆『トルコ行進曲』……K331
『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』……K525
◆K350の『モーツァルトの子守歌』の作曲者は、モーツァルトではない。ベルンハルト・フリースという作曲家だ。
◆モーツァルトのケッヘル番号と同じように、バッハの作品を整理するための番号もある。シュミーダーが1950年に『バッハ作品目録(BMV)』を刊行して、この中のBMV番号が一般化している。ただし、この番号は年代順ではなく、ジャンルの分類に基づくものだ。
◆同じく、シューベルトの作品は、「ドイッチュ」番号が振られて整理されている。ドイッチュは、『シューベルト作品目録』を作り、シューベルト協会の名誉会長でもある。
◆さて、ウルトラマンの故郷はM78星雲なのだが、ウルトラマンレオが住んでいたのは、しし座L77星という設定になっている。この「L」って何なんだ?
◆星雲を英語でnebula。
「ネビュラ71(なないち)変身願います!」
と願いを乞わないと、スペクトルマンには変身できない。しかし、願えば誰でも変身できるというわけでもない。
え、スペクトルマンを知らないって? じゃあ、絶対に変身できない。