★雑木話★
ぞうきばなし

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 ● 第百六十六段 ●  「ケタチ」って?

「だめだ〜!! まただ〜!!」
「どうしたんですか?」
「あー、杉野君か。さっきから、計算が合わないんだ」
「ああ、それで電卓持っているんですね。でも、いつもみたいに表計算ソフトを使えばいいのに……」
「ちょっとした計算だと思ってね。でも、9000円も合わなくて……、何度やっても合わなくて……、どこで間違えているのかも分からなくて……」

「ちょうど9000円ですか? だったら、それはきっと『
ケタチ』ですよ」
「『ケタチ』? 何それ?」
「『桁違い計算ミス』のことを略してそう言うんですよ。きっと、計算の途中で桁がずれて計算してしまってるんですよ」
「じゃあ、何かい、杉野君、この私が、桁違いのようなポカミスをやっているというんだね?」
「断定はできませんが、でも、何らかのミスをしているんでしょ? 不足金額が9で割り切れるときには、『ケタチ』の可能性が大きいんです」
「ふ〜ん、そんなものかね……」
「あ、疑ってますね? じゃあ、試しにその電卓で計算してみてくださいよ。たとえば、30000円送金したことを記録するときに、『0』を1つ書き忘れて『3000円』と記録してしまうことがよくありますよね」
「ま、あるとしておこう」
「パッと見ただけでは、同じような数字の並び具合だから、なかなか発見できないですよね。このようなミスの場合、後でどうなるかというと……」
「30000−3000=27000 最終的に、27000円分の計算が合わなくなるのか。確かに、27000は、9で割り切れるな」
「じゃあ、12300円を123円で計算してしまったとしたら?」
「そんな〜、2桁も間違えることがあるかい? まあいいや、やってみよう!

      12300−123=12177

おお、12177円だ。これも、9で割れるぞ!(12177÷9=1353)」


【メモ】

◆■ 
(けた) ■
 柱の上に渡して垂木(たるき)を受ける材のこと。橋では橋脚の上に、橋の方向に横たえた受材。そろばんの珠を貫く縦棒。後者の意味から転じて、数の位。位どりという意味も。

◆では、そろばんで上下の珠を分けている横棒を何というか? 答えは「
(はり)」。そろばんを習っていたのに、そんなことも調べてみるまで知らなかった。

◆「桁が違う」というのは、そろばんの場合での話だろう。そうすると、2桁も違えて計算することは、やはりなさそうだ。つまり、「桁が違う」というのは「10倍大きい」ということになる。

◆しかし、「10分の1」の場合の「桁違い」もあるはずだ。あまり用例を聞いたことがないが……。

◆2桁以上の大きな差がある場合は、これは「桁はずれ」と呼ばれる。

◆日本たばこの製造するタバコ1本1本に印刷されている番号は4桁。

◆ドイツの万年筆メーカー、モンブランの製品のペン先に必ず刻まれている4桁の数は「4810」。

◆お年玉付き年賀はがき。表面の右下に書かれている番号は6桁。

◆テレビ番組の録画に使われるGコード。最大で8桁。
 でも、どうしてたったの8桁で録画予約ができるのだろう?

◆NTTのフリーダイヤルを使用するとき、ダイヤルしなければならないのは10桁。

◆JIS規格のバーコードの標準は13桁。

◆どうして桁違いの計算をすると正しい計算との差が9で割り切れるのか? これは、中学1年生への問題にぴったりだ。文字式を使うと、かなり易しい。 たとえば、4桁の数を次のように表す。

   1000a+100b+10c+d ……(1)

 これを1桁間違えて、10倍の5桁にするとこうなる。

   10000a+1000b+100c+10d ……(2)

 間違った計算結果(2)から正しい結果(1)を引いてみると

     10000a+1000b+100c+10d
   −  1000a+ 100b+ 10c+ d
   ――――――――――――――――――
      9000a+ 900b+ 90c+ 9d

 ほら、各項に9の倍数ばかりが並んでいる、さらに整理すると以下のようになり、9で割り切れることが説明された。

     9(1000a+100b+10c+d)

 たくさんの足し算をした後、計算が合わないようだったら、まずは9で割ってみることだ。「ケタチ」の可能性がある。
 ただし、9で割り切れるからと言って、必ず「ケタチ」とはかぎらないことを一言申し添えておく。このことは、杉野君からもきつく言われた。

◆もうここらで納得してもよさそうなものなのだが、ついでだから、もっとしつこく杉野君に聞いてみた。
「じゃあ、杉野君、5371円のところを、3571円と記録してしまったら?」
「それはよくやりそうな間違ですね。やってみましょうか?

      5371−3571=1800
      1800÷9=200

ほら、やっぱり、9で割り切れますよ。これも、『ケタチ』の一種でしょうね」

◆「もう一つだけ! 5371円のところを、1573円と記録してしまったら?」
「そんなの数字がバラバラじゃないの! 普通、そんなミスしますか? 自分でやってみてくださいよ」
「そうだね。やってみよう。

      5371−1573=3798
      3798÷9=422

おおっ! こんなバラバラでも、9で割り切れるんだ」

◆千と一との位を取り違えるなんてミスはまず起こらないだろうが、隣同士の数字を入れ替えて記録してしまうということは起きやすそうだ。検証しておこう。
 先と同様に4桁の例で説明する。正しい数を次のように表す。

   1000a+100b+10c+d ……(1)

 たとえば、千の位と百の位を間違えるとこうなる。 

   1000b+100a+10c+d ……(2)

 (1)から(2)を引いてみると、

      1000a+ 100b+10c+d
   −  100a+1000b+10c+d
   ――――――――――――――――――
      900a− 900b
     =9(100a−100b)

   ※計算をやりやすくするため(2)の項の順番を一部入れ替えてある

 やはり、9で割り切れることが証明された。時間があれば、他の例も検証してほしい。こっちはさっきの計算ミスの原因を見つけるとしよう。

◆「千と一との」で、むりやり思い出した。『千と千尋の神隠し』は、まだ見ていない。


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