★雑木話★
ぞうきばなし

トップページへ

前の段へ   ★雑木話★のリストへ   次の段へ


 ● 第百四十一段 ●  君はえ〜ら〜い〜な

 もうすぐ2歳になる息子が歌っている。
「おお、モミの木、おお、モミの木、君はえ〜ら〜い〜な」
 保育園で覚えてきたようだ。楽しそうに同じフレーズばかり20回も30回も歌っている。最初は何を歌っているのかわからなかったのだが、メロディラインに聞き覚えがあった。その曲だと判別できると、歌詞が聞き取れるようになった。自分の知っている歌詞とは少し違っている気がしたが、許した。それよりも、別の疑問があった。
「どうして、モミの木は偉いの?」
 まったく考える様子もなく、即座にしかも元気に答えてくれた。
「わかんない!」
 それでも彼はすこしもめげずに、同じフレーズを歌い続けた。しかし、ついに、それに続く部分が聞こえてきて、なぜ偉いのかがわかった。
「いちゅでも〜いちゅでも〜 緑の葉っぱ」
「うんうん、それは偉いよね〜」

 さて、職場の同僚に小さなモミの木の作り方を教わったので、紹介しよう。

  その1 小さなモミの木の作り方
  (1) 用意するもの……松ぼっくり、緑のスプレー、その他
  (2) 松ぼっくりを緑色にぬる。
  (3) できあがり

  その2 かわいいモミの木の立て方
  (1) 用意するもの……粘土、茶色の画用紙
  (2) モミの木にぴったりとくるくらいの大きさの土台を粘土で作る。
    植木鉢の形にする雰囲気が出る。
  (3) 土台に茶色の画用紙を巻く。もちろん茶色に塗った紙でも同じ効果。
  (4) その1のモミの木を立てる(刺す)。
  (5) 粘土がない場合は幅4pくらいの長方形の紙を輪にしてセロテープでとめる。
    これが「植木鉢」になる。ポンと乗せればできあがり。

  その3 ミニ・クリスマス・ツリーの飾り方
  (1) 用意するもの……ビーズ、綿、小さく切った色紙、モール、接着剤、その他
  (2) その2のモミの木の「葉っぱ」に、ビーズや小さく切った色紙を接着剤でつ
    ける。
  (3) 綿やモール(金糸、銀糸でもよい)を巻く

  その4 キュートなクリスマス・ツリーの飾り方
  (1) いいなと思うところに置く。

 これがなかなか大したもの。すこし離れたところから見ると、松ぼっくりとは思えない。本当のモミの木に見えるから不思議不思議。
 さあ、あなたもクリスマスまでに作ってみよう。


【メモ】

◆クリスマスといえば、サンタクロース。サンタの服は、赤い――と相場が決まっているが、この相場は最近の話。1931年よりも以前のサンタクロースは、青や緑、あるいは白いを来たりしていた。体格も、やせていたり、太っていたり……いろんなサンタがいた(?)のだ。
 では、1931年に一体何があったのか?
 この年、コカコーラのポスターが世界中にばらまかれたのだ。そのポスターには、太っちょで、赤い服を着たサンタが描かれていたのだ。もちろん、コカコーラのイメージカラーである赤と白を定着させるためだ。このサンタがあまりに印象深かったのか、これで「サンタは、太くて赤い服」のイメージができあがってしまった。

◆■ 樅(モミ) ■
マツ科の常緑高木。円錐形の樹形が美しい。秋田県の米代川流域から屋久島までの暖帯と温帯下部に分布し、能登半島から東の日本海側には少ない。大木になるわりには寿命は短く、せいぜい150〜200年。庭園に植えられることもあるが、大気汚染には弱い。クリスマス・ツリーとしての利用がよく知られている。

◆モミの木などの針葉樹に、灯や金銀の飾りをつけてクリスマスを祝う――このようなクリスマス・ツリーの風習は、ドイツが起源だといわれている。現在知られる最も古い例は、16世紀初めのL.クラーナハ(父)の銅版画に描かれたもの。しかし、ツリーを立てる風習が全ドイツに定着したのは、19世紀のこと。何百年も前の話ではない。

◆日本では明治以降、クリスマスの風習とともに急速に一般家庭に広まった。

◆モミの木は、四季を通じて緑の葉をつけていることから、希望と堅実さのシンボルとして、ゲルマン人に古くから崇拝されていた。だから偉いのだ。

◆こんな伝説がある。
 雨の中、キリストが森を歩いていると、モミの木だけがキリストの上に枝を広げて雨を防いだ。このお礼にキリストは、冬にも夏と同じように緑の葉を持つことを許したのだそうだ。

◆元来、クリスマスツリーは、クリスマスの日から1月6日まで飾られていた。クリスマスの行事というよりは、新年を迎えるための行事のようだ。日本でいえば、門松に近いのかな。門松も「松」だし……。このあたりの文化の近似は面白いな。

◆ツリーに飾られる食物や灯にも豊饒の願いや悪魔祓いの意味があるそうな。よく知らないけれど……。このあたりは、お節料理に入っている食べ物の意味と似ていると思う。

◆ロシアの祭りに「ヨールカ」がある。これは、ロシア語で「小さなモミの木」の意味。
切り出したモミの木の若木に、綿雪や豆電球で飾り付けをし、その周囲で年末年始に子どもために祭りを催す。まるでクリスマスツリーだが、それもそのはず、1840年ころに西ヨーロッパからロシアに伝わったクリスマス・ツリーの風習の変形だ。

◆伊達騒動を扱った山本周五郎の作品は、『樅の木は残った』。
■ 伊達騒動 ■
寛文事件とも呼ばれる。伊達藩主綱宗は酒色におぼれ、1660年(万治3)、21歳という若さで幕府から隠居を命じられる。後を2歳の亀千代(綱村)が継ぐが、実権は叔父の伊達兵部宗勝が握ることになった。その後、奉行原田甲斐らと結び藩権力の集権化をはかる兵部と、自主性の強い地方(じかた)知行制を維持しようとする伊達一門衆が対立を深める。1771年(寛文11)、藩の問題を審理するために幕府に召還された甲斐が、伊達一門の伊達安芸を突然斬り殺し、甲斐も斬殺された。兵部派は、幕府から処罰された。

◆大分県の佐賀関半島には、樅木(もみのき)山(484m)がある。やっぱり、モミの木でいっぱいなのかなぁ?

◆イタリア・ミラノにあるゴシック聖堂「ドゥオモ」の前には、12月上旬から大きなクリスマスツリーが飾られる。ドゥオモも見事だし、ツリーもすごいし、どちらを見たらいいのかわからないくらいだ。

◆小さなクリスマス・ツリーも、いいよ。


[このページの先頭に戻る]

前の段へ   ★雑木話★のリストへ   次の段へ